第十話 奴隷商人、ドラフ。【008】
008.
「侯爵家がそんなことありますかね?」
僕は、流石にそれは無いと思い、秋月さんを見る。
「僕も国のトップが奴隷商人とつながっているなんて考えたくはないけれど、その可能性が一番高い、というかそれ以外は考えられないんだ。」
「そうだとすると国自体の雲行きが怪しくなってきますがね。まあ、とにかく、この場合ルドルフさんに連絡を取って行ってもらうのが早いでしょうね。」
「そうだね。でも、正直ルドルフ君だけだと心配なんだ。」
「それはどういうことですか?」
「いや、今回の事。どうやら事態が複雑に絡み合みすぎている。少々あの脳筋だけだと不安なんだ。」
「でもルドルフさんは武力がありますし。」
「何か裏にトリックがある可能性があるんだ。そもそも、今回の事、これだけ大きな奴隷シンジケート。様々なことを考えると、ドラフはただの奴隷商ではないのは間違いないんだ。」
「ただの奴隷商ではない?」
「うん。まあ、これはモブの勘だけれどね。何かまずい気がする。この場合、魔導工学に審らかな君にルドルフ君の助けに入ってほしい。」
「僕は弱いですし、ヘタレですし。流石に戦うのは……」
秋月さんは僕の目をしっかりと見て言う。
「いや。僕はこの一か月の君を見てそうではないと思い始めている。君が自分を弱いと思っているだけだ。君自身、多分自分を強く持てば強いはずなんだ。」
「でも僕はルドルフさんみたいではないですし。」
「なに、スピカ君はルドルフ君みたいに腕っぷしが強くなりたいわけじゃないんだろう?君には武力よりも知力が似合う。」
そう言って秋月さんは自分の頭をコンコンと叩く。
「このまま見殺しにしたら、どちらにせよ僕たちも含め皆殺しだ。それは今でなくても、後ろに貴族が居るのであったらさらに。」
「なるほど。では僕は今からルドルフさんの元に向かえば良いですか?」
「いや。そうすると多分ルドルフ君は君のことを庇うことに必死になって、恐らく彼も彼本来の力を発揮できなくなってしまうと思うんだ。だから、君は君だけで向かって、彼にはその後から武力行使の手段として、そして退路を築くという作業をしてもらおう。」
「それはどういうことで?」
「ネビル君たちのいる位置はわかるだろう?」
「はい。最後に魔法が使用された場所ならマナから特定できます。」
「そしたら、そこまでテレポートできるか?」
「はい。まあ向こうはマナが歪んでいるので片道切符にはなりますが。」
「よかった。それで、掘削はできる機械は?」
「それは事前に全員に対して配っています。スピカ号ですよ。まあ、そのせいで僕と秋月さんの分はありませんが。」
「いや、なら大丈夫だ。」
そう言って、秋月さんはルドルフさんの声を伝えるための装置を置きなおす。
「そうしたらまず、ルドルフ君に退却命令をする。もちろん本当はそうではないが。そして、彼にはそのスピカ号を使って、現在の道から掘削をしてもらってネビル君たちのところまで行ってもらう。これで退路は完璧だ。そして、スピカ君はテレポートを使って、ドラフを斃す。最悪の場合それが無理だった場合は全員を連れて退路から避難する。」
「僕なんかで大丈夫ですかね?」
「大丈夫だよ。君なら。それだけ頭が冴えていれば何とかなるさ。」
そう言って秋月さんは「じゃあ繋ぐよ。」と言い、僕たちはルドルフさんに作戦の内容を伝え始めた。
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