131・キモブスを世界から掃除したんだわ

「あなたはホント可愛いわー」

「そうだぞー。おまえは世界一可愛い娘だー」

 お母さんとお父さんがわたしを可愛がっている。

 当然よね。

 わたしは世界で一番、可愛いんだから。

 学校でも町でもいつでもどこでも私は人気者。

 でも聞いてよー。

 学習発表会の劇でこのわたしが主役になれなかったんだよ。

 お姫さまはわたしがやるのが一番でしょ。

 それなのに、他のブスがお姫さまになったんだよ。

「まあ! なんてひどい!」

「学校に抗議しなくてはいかんな!」

「そうよ! うちの娘がお姫さまに一番合うのに!」

「そうだとも! 主役は私の娘以外ありえない!」

 お父さんとお母さんが、学校に抗議して私がお姫さまになった。

 ま、当然よね。

 お姫さまが似合うのは私が一番なんだから。



 脇役になったブスがクラスで一人で泣いてる。

 なに泣いてるのよ。

 そんなに構って欲しいの?

 お姫さまになってちやほやされたかったから、主役を決める時に手を上げたんだわ。

 だったら、みんなが見てくれるようにしてあげる。

「なにするの!? やめて!」

 大人しくしなさいよ。

 みんなが見てくれるようにブスに似合う化粧をしてあげるんだから。

 はーい、完成ー。

 マジックで落書きしてやった。

 わー、良く似合うわー。

 素顔の時より美人に見えるわよー。

 ブサイクの化粧にはマジックで充分だってことよねー。

「ひどいよぉ……」



 ブスが先生に言いつけた。

 なに告げ口してるのよ。

 わたしはブサイクな顔をキレイにして上げたのよ。

 それを逆恨みして。

 お父さんとお母さんに言ってもらわなきゃ。



 聞いてよー。

 あの目立ちやがり屋のブスが、わたしがイジメたって先生にウソついたの。

 構って欲しくて自分で顔にマジックで落書きしたのに、それをわたしのせいにしたんだよ。

「けしからん! なんて子供だ!」

「学校に抗議しなくちゃ! PTAにも連絡しましょう!」

「そうだ! そんなとんでもない子供がいては私の娘に悪い影響を与える!」

「徹底的に問題を追及しましょう!」



「……ご……めん……なさい……」

 ブスが先生に言われて泣きながら私に謝っている。

 やっと反省したのね。

 わたしを差し置いて主役になったりするからよ。

「……なんで……私、悪いことしてないのに……私の方が……イジメられたのに……」

 小声でぶつぶつわけのわからないこと言ってる。

 まだ、反省してないんだ。

 こういうのをヒガイモウソウっていうんだよね。

 だったら、分かるまでやってやらなくちゃ。



 教科書とかノートは破ってトイレに捨てましょ。

 机にマジックで自分がやった悪いことを書いておいて、毎日読ませましょ。

 わたしはかまってほしくてウソをつきました、と。

 体にも教えてやらないとね。

 エンピツチクチク。

 ほーら、チクチクチクチク。

 イタイ?

 ねえ、イタイ?

 ほら、なんか言ってみなさいよ。

 アハハハ。



 あのブス、学校に来なくなった。

 ヒキコモリになったんだって。

 やっぱり頭がおかしかったんだ。

 だからわたしがミノホドってのを教えてあげたのを、イジメだって思いこんだのよ。

 一生ヒキコモってたほうが迷惑にならないからいいわね。

 あー、わたしってばなんていいことしたんだろ。



 あのキモブスの親が学校に訴えた?

 わたしのせいだって言うの!?

 わたしはミノホドを教えてあげたのよ!

 それを逆恨みして!

 お父さんとお母さんに言ってもらわなくっちゃ!



「私の娘に限ってそんなことするはずがない!」

「そうよ! 言いがかりよ!」

 お父さんとお母さんが先生に怒ってる。

 これで先生はわたしになにも言えなくなった。

 ついでに、あのブスの親も、裁判でメイヨキソンにしてやったって。

 これであのブスの親もなにも言えなくなるんだって。

 ま、当たり前よね。

 でも、これで終わらせないわよ。

 わたしがミノホドを教えてあげようとしたのに、それを逆恨みしたんだから、おしおきしなくちゃ。



 窓ガラスに石を、えーい。

 ガッシャーン。

 命中ー。

 アハハハ。



 ねえ、みんな聞いてよ。

 あのブス、自分でガラスを割って大騒ぎしてるんだって。

 やっぱり目立ちたがり屋のカマッテちゃんだったのよ。

 あんなのがクラスにいたら大変なことになってたわ。

 いいえ、町にいるだけで不安だと思わない。

 みんなで町から追い出しましょうよ。



 さあ、みんな声を合わせてー。

 でーていけ!

 町からでーていけ!

「出ていけー!」

「出ていけー!」

「町から出ていけー!」



 あのブスが自殺した?

 死んだ?

 死んだ。

 死んでくれた。

 やっと死んだんだー。

 わたし、ガイアクなキモブスを世界から掃除したんだわ。

 あー、わたしってばなんて良いことしたんだろ。

 アハハハ。

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