141話 無機物生命体『モノリス』

「それは数日前のオフィサー会議でのこと。エージェント2体を立て続けに撃破され、生物達の前例のない成長速度を目の当たりにした我々は、少年の始末とアーティファクトの再収用を決めたのだ。しかし今度はエージェントを派遣するのではなく、オフィサーのメンバーが直々に出向いて事を終わらせようとしていてな。君を誰が殺すかで少し揉めたのさ。君も先程思い知っただろうが、当時のN2とピノではどのオフィサーメンバーが相手でも敵わない。だから何としてでも私が向かう必要があった。君を生かすために」


「……うん」


「君が不時着させられたエリア12は私の管理区域でな。そんな背景もあって、オフィサー達をなんとか説得し、私が権利を勝ち取ったんだ。君を彼らから守る権利をね。あの日の夜、エネルギーを補給しようとした際に、装置に違和感がある事に気が付いた。そこで私は、『モノリス』という無機物生命体に私の身体的な特徴を模倣させ、代わりにエネルギー供給をさせてみたんだが、狂ったように命令を聞かなくなり、研究所から飛び出して行ってしまったんだ」


「……ほう……」


「メンバーの誰かが私の思惑に気が付いたのだろうね。誰が装置に細工をしたのか、もしあのまま私がエネルギーを補給していたらどうなってしまっていたのか、今となっては分からないが……。身の危険を感じた私は、オフィサー達との今後の接触を断つ準備のため、いくつかの研究所を回り、その後君の下へ向かった。……が、そこで私が目にしたのは、ボロボロになった二人を抱えて膝をつく、君の姿だった」


「……つまりあの夜、俺達を襲ったのはスヴァローグ、お前じゃないってことか」


「そういうことだ。無理に信じろとは言わないさ。君にとって、こちらの事情など知ったことではないだろうしな。ただどうか、心のどこかにでも留めておいてくれ」


「……あの時俺は、既にお前に助けられてたんだな……。それでお前も他の黒い機械達から狙われるようになったのか。なんか色々と繋がってきたよ。……すまん、世話かけたな……」


「君が気に病むことじゃあないさ、少年。私が好きで、いや少年の事が好きでしただけのことだよ」


「言い直す意味あったのかそれ」


「まぁ元々彼らとは馬が合わないと思っていたのさ。音楽性の違いってやつだな」


「……。ん、待てよ……お前、生物担当とか言ってたっけ?」


「あぁそうだが、それがどうかしたか?」


「俺が不時着した場所はお前の管轄してるエリア……あの時N2の素材に使った生物達はもしかして……」


「……さぁ、どうだろうな。仮にそうだったとしても、生物達の特徴に気付き、行動に移したのは君自身だ。N2が復活したのは、紛れもなく君のおかげだよ、少年」


「……そうだな、そういう事にしておくか。……なぁ、スヴァローグ」


「ん?」


「お前にもし行くあてがないのなら、俺達と一緒に行動するってのはどうだ?」

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