139話 偽リノ世界
「私達は君達の住む世界を、アーティファクト達から守っていたんだ」
「お前達が俺達を守ってた? その口振りからすると、まるでN2達は悪者だったような言い方だな」
「……かつての人間達が残した資料によると、そうらしいのだ。詳細には記されていないが、私達が生まれる少し前、人類の人口が最盛期の10分の1にまでなった時期があった。そして戦闘用のアーティファクト達が大量に生産された時期もそれと重なっている。となると、過去に何があったか、言うまでもあるまい」
「……戦争……」
「そう、それも宇宙規模の、な。そこで眠っているアーティファクト達と比べ、生産されたアーティファクトのサイズは、大型のものが主流だったようだが」
「……そんな……そんな事がありえるのか!? だって俺は、今まで一度もそんな事……」
「人類の活動圏内の痕跡は、うまく誤魔化したのだろうな。現に君が知らないことが何よりの証拠だ。君が認知していないだけで、彼らの遺物はそこら中に転がっているよ」
「もしかして、不時着した地点の近くにあった、あのデカい腕が……戦争に使われた兵器なのか……?」
「察しがいいな、少年。あれは私達が命を受ける前より、この星に存在していたものだ。そんなアーティファクト達が活躍した時代の中心的存在が、そこにいる小さなアーティファクト達だったと、残された資料からはそう読み取れたよ」
「N2達が……戦争兵器……」
「資料には丁寧に、彼らが起こした事件や大戦まで載っていたよ。ラズが先導したヴェルヘド血戦、ボトビア迎撃戦はどちらも千機以上の機体が破壊され、戦場になった星が受けたダメージは相当なものだ。ピノが影響を及ぼした星も少なくない。惑星ソナタに至っては、植物が生態系を支配してしまって、人が立ち入れなくなったらしい」
「もういいって……」
「N2が主体となった東スコルディア海戦も凄まじく、被害機体数は歴代3位の1万5千_」
「もうわかったってッ! ……もう分かったから……それ以上言うな……スヴァローグ……」
こいつの言うことだ……。
きちんと裏が取れてて、疑いようがなくて、今言ってた戦いも過去に本当に起きたことなんだろう。
それにこの星の状況や、N2達の異常なまでの戦闘力を考えると、それらに皆が絡んでたってのも納得がいく……。
「君に付き従うアーティファクト達は、それ程強大な力を持っていたんだよ、少年。過去の人間達が、歴史から消し去りたかった程の遺物だったんだ。分かるか少年。君がしようとしている事は、最早ただの脱出劇じゃあないのさ。少し間違えば、世界を再び恐怖に陥れるかもしれない。その引き金を引く覚悟が、君にはあるかい?」
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