120話 試したいこと

 解析内容共有の要請にセシリアが応答した後、多量の情報が脳内になだれ込んできた。


 といっても突然の処理に脳がパニックを起こすということはなく、セシリアは映像と単語の羅列で情報をイメージ化し、何を意図したものなのかが瞬時に判断できるようにしてくれていた。

 戦闘範囲のマッピングをはじめとして、敵2個体の動きのくせや攻撃の予備動作、俺の記憶から抽出したであろうピノとラズの攻撃手段等がまとめられ、頭の中のモニターのようなところに次々と表示されていく。


 しかしこれだけではない。

 セシリアは読み取った情報のピース一つ一つから、有効なプランを成功率毎に確立していった。


 セシリアに告げた『俺の試したいこと』が、丁度成功率の一番高いプランに組み込まれていたので少し気分がいい。

 まぁそれでも、不確定要素が多すぎて47%しかないんだけれど。


 俺が設定した最終目標は『N2を救う事』。

 これには確実に突破しなければならないポイントがいくつか存在する。

 

 ひとつめは敵個体Aの撃破、及び再起不能等の沈黙。


 そしてふたつめ、これももちろんそうなのだが敵個体Bの撃破、及び再起不能等の沈黙。

 敵個体BはAと比べエネルギー保有量が1万以上も多いことに加え、先程からみていても行動パターンはN2の攻撃の回避しかない。

 何か機を伺っているようだが、やつが攻撃に転じた場合状況はまた変わってくる。

 賭けにはなるがこっちから先に仕掛けるのもありかもしれない。


 最後の条件として、N2のエネルギーを空にしないと暴走状態は止められないようだ。

 仮に敵個体両方を先に倒せたとしても、錯乱しているN2が俺達を襲う可能性が十分にあり得る。

 出来る事なら同時に処理するのがベストだが、かなり難しそうだ。


 以上の結論をセシリアは出した。

 どれか一つでも未達成の場合、俺達の全滅が確定する。

 文字通り命がけの綱渡りだが、いつもと違って内心はいたって冷静だ。

 

 やってやる、待ってろN2ッ!



 ふぅ、と一呼吸し、ラズとピノに呼びかける。


「これからN2救出作戦を決行する。二人とも、俺の言う通りに動いてくれ」

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