107.5話 アリス・イン・ワンダーワールド ~初めての潜入~
アリス達が出掛ける支度をしようと自室のドアを開けると、外には屋敷の使用人が立っていた。
使用人は深々とお辞儀をしながら、旦那様から預かっているものがありますと告げ、アリスとロムをそのまま地下室へと導く。
アリス達が地下室で目にしたもの。
それは、アリスと等身の人型のロボットだった。
中身が空洞になっていて、アリスが丁度すっぽりと身を収める事のできる大きさだ。
アリスの父は、アリスが外へ出掛ける時のために民間企業にボディースーツを作らせていた。
このスーツを着ることでアリス自身が機械になりすまして存在を隠す事が出来るし、多少の危険を防ぐことが可能だ。
装飾品の特にないボディースーツのマネキンのような姿に、かわいくない、と身を収める事にアリスは抵抗があったが、生身での外出はいくらロムがついていると言えど危険は避けられないと感じ、スーツの着用に渋々了承する事にした。
操作については直感的に動かせるように配慮されているが、念の為用意されていたマニュアルをセシリアに読み込ませ、二人は屋敷を出発した。
スーツの脚の裏に配備されたローラーで時速80キロまで出す事ができる。
ひと気のない田舎道だったが、アリスにとって外の景色は何もかもが新鮮で、知っているものも知らないものもセシリアに聞きながら向かったので、目的地に着く頃には予定していた3倍の時間が経ってしまっていた。
日が暮れた頃、二人は今回のアーティファクト開発用に用意された臨時施設の前にいた。
「アリス、君が元気なのは十分理解出来たからさ、もう帰ろう、ね!」
「セシリアによると、このへんにダクトがあるはずなんだけど……あ、あった!」
「ねぇアリス? ドクターに耳の調子が悪いみたいだって言っちゃうよ? ドクターの実験は怖いんだぞーっ」
「ロム、ここから無駄なお喋りは無しよ。もし中にいる警備ロボットに見つかったら、あなたのハッキングが頼りだからね」
「うぅ……こんな悪い事に使うためにあるわけじゃないのに……」
ダクトの中を二人が慎重に進んでいく。
音をたてないように通路に降り立つと、そこまでだ! と、聞き覚えのある声が二人を引き止めた。
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