107.5話 アリス・イン・ワンダーワールド ~ロムの能力~
「ドクターから大体は聞いていると思うけど、改めて話しておくね。ぼくはメディカル・アーティファクト。人体のあらゆる外傷や内傷、時間はかかるけど先天的な病気もお任せあれ! な、ハイスペックアーティファクトさ!」
自身がどれ程優れているかを語るロム。
それを黙って聞いているアリス。
アリスの眼は病気が治るという期待よりも、ころころと表情を変えながら得意げに話すロムへの慈愛で満ちていた。
ロムがスピーチに満足すると、今度はアリスに指を差し出すように言った。
アリスの指先にロムが触れ、チクリと弱い刺激が走る。
ロムの持つ傷の治癒能力に続く、二つ目の能力は、高度な血液検査。
対象者が疾患中の病気の把握はもちろん、将来的に引き起こす可能性がある病気や、その対処法に至るまでを把握することが可能である。
数秒で検査の結果を得たロムは、表情を曇らせながら言う。
「うわ~……こりゃひどい。いくつもの病気が重なって、もう細胞がズタボロだよ……」
「そんなに酷いの?」
「そりゃもう。よく今まで生きてたで賞をあげたいくらいだよ。常人なら喋るのも辛いハズ……。人間の慣れってこわいなぁ……」
ロムがギルフォードから受け取った一般的な人間の情報と、アリスの検査結果があまりにもかけ離れていたため、受け取ったものは誤情報だと疑いたくなるほどに、アリスの容態は最悪だった。
それとは別に、細胞の壊れ方がロムがラボで見たLE(ロストアース)の細胞の壊れ方とよく似ていて、ロムはギルフォードがアリスを対象者に選んだ理由を何となく悟った。
そしてアリスを治療することで、LEの治療法を見付けることが自分の使命であるとも考えた。
「……うん。やっぱり早々に”処置”が必要だね。ドクターから、アリスとお父さんには許可を取ったって聞いたけど、ほんとにいいんだね?」
「ええ、思いっきりやってちょうだい」
ロムの言う処置とは、ロムが持つ最大の能力を使った治療のこと。
同時に治療を行えるのは一人のみという制限付きではあるが、ロムが持つナノマシンを人体に大量に送り込み、体を細胞ごと活性させる治療、もはやサイボーグ化ともいえる程の肉体改造である。
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