88話 訓練、そして訓練

 パスン、ポスンと腹や背中にエネルギー弾を撃たれながら、訓練開始線をまたいだ回数は10回を超えた。

 ちなみにこれまでの最高歩数は15歩。

 とても的を撃つなんてレベルじゃない。

 どんな的なのかまだ見てもいないし、ハンドガンも構える暇もなくやられる。

 もちろんナメてなどいなかったが、この訓練……相当に難しい……。


 俺を射止めたミニN2が、他のミニN2達とハイタッチを交わしている。

 こいつらからしたら、俺を撃つゲームとでも思っているんだろうか。


「レイ、そろそろ訓練のローテーションだ」


「もうローテーション? 全然上達した気がしないんだけど」


「最初はきっとそんなものだよ。他の事をしてる時に突破のヒントが思い付く可能性もあるしさ、気楽にいこう。さ、次は武器生成訓練だよっ」


 1つの訓練につき、およそ15分程度を目安に訓練を回していくらしい。

 果たしてそれが効率の良いものなのかは定かじゃないが、N2に従おうと思う。



 射撃訓練は一度中断し、今度はさっき生成したハンドガンとは別に、白くふわふわした液体をN2に渡される。


「武器生成訓練は突然の戦闘や、武器を奪われた場合に備えて、武器をいかに早く生成出来るかを目的とした訓練だよ」


 今の武器生成時間は、ハンドガンでさえ12秒程かかっている。

 戦闘中に12秒も攻撃手段が無くなるとすると、あまりにもリスキーだ。

 訓練で時間を縮められるものなのか分からないが、やっておくべきだろう。


 生成訓練はN2の訓練でもあるらしく、武器によってどのくらい液状金属を渡せば良いかを把握する必要があるとの事。

 極端な話、1キロのハンドガンと10キロのハンドガンでは使い勝手が違うのは当たり前だ。

 生成しやすさ、扱いやすさを総合的に見て、最適な譲渡量をグラム単位で把握したいらしい。


 俺も生成訓練の度にイメージの仕方に違いをつけて見ようと思う。

 どういったイメージをすれば早く生成出来るか、イメージの違いで威力に差が生まれるのか、とかも気になるところだ。

 意外と奥が深い訓練になりそうだ。



「3つめは、武器の扱いの訓練だよ。この時間は主に武器に慣れる事に使う」


 非日常的なものを扱う動作は、頭でものを考えがちだ。

 ハンドガンで例えるならば、武器を構え、狙いを定め、引き金を引くという攻撃までの一連の流れがある。

 この頭で考えている一連の動作を、限りなく自然に行えるようにする訓練らしい。

 走るときにわざわざ右足を前に、次は左足を前に、なんて考えないのと同じだ。

 これも生き抜く上で重要な訓練だと思う。



 以上の訓練を何度かループさせた。

 休憩に関しては、俺が疲れる前にN2が気をきかせて促してくれている。

 少しずつだが着実に成果が出てきていて、案外楽しくも思える。


 ピノが時々軽食用の野菜を持ってきてくれるので、それをかじりながら休憩していると、N2がそろそろ新しい訓練を追加しよう、と言った。


「次はハンドガン以外の武器をイメージする訓練をしよう」

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