82話 うへぇ

 オリオンカボチャ。

 交配種数17、実の大きさ20センチ、実の側面にオリオン座のように並んだ斑点が特徴。

 色は俺の知っているカボチャと同様だが、斑点が結構強烈で旨そうには見えない。


 七光りナス。

 交配種数21、実の大きさ23センチ、光の当たり方で紫をベースとした七色の光を反射する。

 皮が硬く食べにくそうだが、中身は見た目に反して水分も多く味もさっぱりしているらしい。


 3つ首ダイコン。

 交配種数6、実の大きさ54センチ、文字通り葉の生えた上部分が3つ首に分かれている。

 通常種と比較すると葉が少ないため、上の部分は甘みが強く栄養が豊富なんだとか。


 絶叫ニンジン。

 交配種数38、実の大きさ16センチ、土から引っこ抜くと驚いて悲鳴を上げるらしい。

 もしそれが本当だとしても怖いので今は触れないでおく。


 千石豆。

 交配種数不明、実の大きさ色々、根や茎、葉に至るまでの様々な箇所に様々な豆を実らせる植物。

 芋のような形や、フルーツのような形のものまで実の形状は様々。

 一番まともそう。


 早口のピノの説明をざっとまとめるとそんな感じだ。


「やはり絶叫ニンジンが一番大変でした! 対になる植物同士を掛け合わせて実を付けるまで育てるのですが、交配種数が多くなるにつれ、この子達考えが複雑になってくるんですよ!」


 ピノは植物と会話することが出来る。

 その特性を駆使して絶妙な水やりタイミング、土の成分バランス、受粉のタイミングに至るまで完璧な世話をした賜物だろう。

 人間が新たに植物の遺伝子を変えようとしたら、1種だけで何年もかかる……。


「めちゃくちゃ面白そうなことしてんな! 野菜の交配なんて考えたこともなかったよ!」


「お、面白い……ですか? レイ様は不思議な方なのですね。でも、喜んでくださるのなら、頑張った甲斐がありましたっ」


 こんな技術、公開したら欲しがる奴が相当いるだろうな……。

 ピノはもしかしたら昔、農家のお手伝いとかだったのかな。

 それを妬んだ同業者が、ピノをこの星に閉じ込めた……いや、ねぇな。


 だんだんと楽しそうに話をするピノを眺めていると、穴の入り口からミニN2が入ってきた。

 そのまま俺達の間を通り抜け、一番奥の壁まで行き、突然壁を崩し始めた。


「うへぇ……。成長した植物で部屋がいっぱいになると、ああやって部屋を拡張しにやってくるんですよ……」


 うへぇって言った。

 ピノがうへぇって……。


 慣れない作業だしロボットでも流石に相当疲れるんだろうな……。

 というかそもそも、なんで野菜なんか作ってんだ?


 N2に少し物申すべく、ピノの植物部屋を後にし、再び良き香りのする方へと向かっていく。

 せわしなく働くミニN2達を踏みつぶさないように慎重に進んでいくと、香りのする部屋の前まで来た。

 部屋の入り口には俺の寝ていた部屋同様にのれんが掛けてあり、下手くそな文字で『お食事処えぬ』と書いてあった。

 匂いの出どころはここで間違いないだろう……。

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