70話 Shining ray
「どうしてさっきから何も話そうとしないんだ?」
まずはN2が落ち込んでいる理由の解明からだ。
いつあの小さな黒い機械が攻撃してくるか分からないこの状況で、追及する事ではないことは分かっている。
無理矢理頼めば、N2はきっと俺のために動いてくれる。
ただそんな付け焼き刃の対応じゃ、あの黒いのには勝てない気が何となくしている。
これまでの戦い方じゃダメなんだ。
N2自身が、自分のために何かを決意する時なんだ。
「……私にも……よく分からないんだ。胸の部分の隅っこの方が、なんだかもやもやしていて、とても心地が悪い……」
「それはいつからだ? お前の体が傷付けられた時か?」
「あの時は別のところがもやもやした。そのあとの……レイが部屋に来て、ジャングルへ行くって言った時から……かな」
「えと……俺が何かまずいことしたのか?」
「レイが……というよりは……。多分あの時、私はレイの表情を見て赤いロボットを心配しているように見えたんだ。直前まで私達を壊そうとしていたあのロボットを。私の……レイがせっかく直してくれた体をこんなにした、あの赤いロボットを」
N2はそう言いながら、悲しげな表情で自身の傷を眺める。
「ジャングルに着いて、やっぱりレイは赤いロボットを心配していた。そしてわき目も振らずに炎上地点へ走った。レイはおかしくないさ、私もあの光景を見て、もしかしたら赤いロボットが危険な目に合ってるんじゃないかと不安になったのだから。それから、何事もなかったかのように助けに来たと言い、しまいには私抜きで話を進めて、共闘する事に納得してしまったではないか! 私のこのもやもやした気持ちは、どうしたらいいんだ……! どんな顔してあの赤いロボットと手を取り合って、戦えt」
「もういいよ、N2、わかった。……よくわかった。ごめん……ごめんな、俺が悪かった」
悲しんだような、時々怒っているような顔を交互に繰り返すN2をそっと抱きしめる。
「なぜレイが謝るんだ……レイは、何も悪くないのに。悪いのは……グス……弱くて、レイに……迷惑をかけたこの私なのに」
「迷惑だなんて思っちゃいないさ。悪いのはお前の気持ちに気付かずに一人で走ってた俺の方だ。ごめんな」
再び泣きじゃくりそうになるN2をなだめる。
焼きもちとは少し違う、N2のもやもやが何なのかは俺にはうまく説明が出来なかったが、N2が自分を責めることは間違いだ、ということは理解してくれた。
「N2、お前やりたいことはあるか?」
「やりたいこと……?」
「そう。やりたいこと」
「私は……レイと一緒にいられればそれでいい」
「そうか……へへ、それはありがとな」
「うん」
「俺はな、N2、惑星運送業って仕事をして生活してるんだ」
「……突然何を……」
「この仕事はな、色んな星を巡って、その星に無い物や、何かを必要としている人達に荷物を届ける重要な役割があるんだよ」
「……うん」
「この仕事を通じて、色んな出会いがあった。人だけじゃない。動物や景色、たくさんの素晴らしい出会いが」
「……うん」
「その素晴らしい出会いをさ、お前にも見てほしいんだよ、N2。本やネットで知られてる知識が全てじゃないってことは、この星で痛い程学んだ。まだまだ人が行っていない星はたくさんある! お前となら、どんな星でも楽しめるような、そんな気がするんだ! 俺と一緒にいるってことは、一緒にこの星を出るってことは、そういうことなんだが、どうだN2、お前が思っているよりも相当面白そうじゃないか?」
「それは……とても素晴らしいな!」
「へへ、そうだろ」
「あぁ……! よし! ならもうやることは決まってしまったな! レイ、この傷を覆っているテープを貼り直してくれ!」
あ、そこ重要なんすね。
「こ、これでいいか、N2……」
「あぁ助かる! これでだいぶ違うぞ!」
要は気の持ちようってことね……。
「ではレイ、共に戦おう! 武器を渡すぞ!」
「おう!! え、武器? え?」
N2の右腕が白く光り輝き、無重力空間に漂う水のように液状化していった。
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