68話 ギルティ・ブラックは眠らない

「N2急ぐぞ! あの赤いロボットが心配だ!」


 ここから一番近くの燃えている場所目掛けて、一目散で走る。

 ジャングルの中へ入っても炎上箇所は明るさで大体分かる。

 途中ぬかるんだ地面に足を取られながらも、何とか辿り着いた。


「これは……血か?」


 周囲の植物には火が放たれ、樹木も何本か意図的に折られたような跡がある。

 戦闘後の痕跡のようなものに加えて、落ち葉に微かだが血痕らしきものがある。

 機械達は血を流さない。

 ……となると、森の動物達が戦いに巻き込まれているのか?


 更に奥の炎上箇所へ向かう。

 2カ所目まではずいぶんと距離があったが、その方向へ続く道標のように、樹木が無理矢理倒されている。

 なんなんだ一体……何が起きてるんだ。

 道標に従うように走っていると、再び地響きのような音が聞こえてきた。

 やはり、この先で何かが戦っている。


 2カ所目の炎上地点に辿り着くと、以前襲ってきた猿達が数匹倒れていた。

 1匹は足から血を流している。

 さっきのはこの猿の血か?

 全員息があるようだが、今は構ってられない。


 更に奥へと進んでいく。

 木が倒れる音や何かの衝撃音の間に、微かだが耳に覚えのある声が聞こえる。


「……めろ! ……くれ!」


 赤いロボットの声だ。

 何かに対して必死に叫んでいる。

 場所は近い、もうすぐだ……!


 音のする方へ近づくにつれ、燃えている樹木の量が増えている。

 燃えているだけでなく、無理矢理木が折られていたり、近くに動物が倒れていたりと、もうめちゃくちゃだ。


 その時、視界の右側で樹木が燃えながら倒れてきた。

 その奥には横たわる猿達と、それに何かから立ちはだかるようにして立つ赤いロボットの姿があった。


「やめろ! やるならアタシを撃て! なんで関係ない動物をねr…」


 言葉を言い終わるよりも前に、鈍い音と共に赤いロボットは後方の炎の中に消えていった。

 何かに攻撃されているのか?

 しかし敵の姿はまだ見えていない。

 そして赤いロボットはすぐさま倒れている動物達の下に舞い戻ってきた。

 あいつ、よく見たら体中傷だらけだ。

 あんなに強いロボットを、どうやったらあんな姿に出来るんだ。


 再び立ちはだかろうとする赤いロボットがこちらに気付いたのか、はっとした仕草をした。


「んなッ、くそ人間め……こんな時に仕返しに来たってのか!?」


「違う! 話を聞け! 助けに来た! 状況を説明しろ!」


 そう言い終えた直後、赤いロボットが再び何者かに攻撃され宙を舞う。


「助ケニ来タ? ……オオ、コレハコレハ。出向ク手間ガ省ケマシタネ」


 揺らめく炎の中から、左手にバレルを携えた小さな黒い人型のロボットが現れた。

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