52話 誘掖

 三日目の朝、聞き慣れない音で目が覚めた。

 カチカチという不思議な音は船内のどこかから聞こえている。

 音のする方へ向かうと、N2達を休ませている金属製の机付近から聞こえているのが分かった。

 休ませているといっても二人には意識が恐らくないので、これ以上状態が悪くならないように留めている状況だ。

 N2は船にあったブリキの缶詰に入れておき、ピノは土の入った鉢植えに入れておいた。

 金属の机にはその二つが置いてあるのだが、音はピノの鉢植えからしていた。


 よく見るとピノに先日目撃した蟻のような虫が数匹群がっていた。

 慌ててピノを鉢植えから取り出し、蟻のような虫を払い落とす。

 突然振り落とされた虫達はパニックを起こしそれぞれが拡散しながら走り回っている。


 いったいどこから入ってきたんだ?

 シェルターの入り口は開きっぱなしだから分かるが、ここは船内だぞ?


 殺すのは気が引けたので全員律義に捕まえてシェルターの外に追いやった。

 追い出した後音はしなくなったので、原因はどうやらあいつらだったらしい。


 ピノに何しようとしてたんだ?


 外傷は既にボロボロだが、新しい傷は特に見当たらなかったので安心した。


 ピノを入れておいた鉢植えの場所を移動させようとした時、鉢植えの中に何か入っていることに気が付いた。

 枯れ葉や灰のような白い粉等が土の中に紛れ込んでいる。

 勿論俺が入れた覚えはない。

 多分さっき追い払った虫たちが持ち込んだのだろう。


 以前目撃したあの虫は、ブルーベリーの実を育てて他の個体よりも大きく実らせていた。

 その大きくなった実を俺達は回収したのだが、見たところ今回はそれを取り返しに来たわけではないらしい。


 肥料を持ち込んできたところを見ると、ピノを直すために船に侵入してきたのか?

 直したとしてあいつらに何か利点があるのか?

 もしピノを直そうとしていたのなら、かなり余計なことをしてしまったのかもしれない……。

 仮にあいつらに任せたとして直る保証はないけれど。


 蟻のような虫と言っているが、正確に蟻と言えない理由は蟻本来の体の構成をしていないことにあった。

 蟻は一見すると団子が3つ連なり、真ん中の団子から全ての足が伸びている構成をしているが、この蟻のような虫は団子が5つ連なり、間の3つの団子のそれぞれから2本ずつ足が伸びている構成をしている。

 N2によると図鑑にも載っていないようなので、蟻と断定出来なかったのだ。


 その特徴から俺はあの虫を『サイバイアリモドキ』と名付けることにした。

 彼らがピノを植物と認識しているように、ピノ復活の予想は案外当たっているのかもしれない。

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