31話 しょくぶつ からの めっせーじ

 期待とかの、プラス面の予感は、昔からことごとく外れてきた。

 だから、過度に期待しないような、ちょっと変わった性格になってしまったことも自負している。

 その代償とは思いたくないが、マイナス面の予感はほとんど当たる。

 遠くの空の色を目にしたとき、何となく嫌な気がした。

 今回の予感が当たらないことを祈ろう。


 暗い空から逃げるようにして、宇宙船へと向かう途中、肩の上のピノがそわそわし始めた。


「レイ様、一度下ろして頂けますか」


「いいけど、どうかしたか?」


「んー、なんといいますか……。植物達が少し、慌てているように見えまして」


 俺から見た植物は、先程と何ら変わりはない。

 ピノ独自の目線だと、何か感じ取れるものがあるんだろう。


 ピノを肩から下ろすと、一番近い植物のもとへ向かい、葉に触れた。

 触れてすぐに、隣の植物の葉へ触れる。

 そしてまた隣の植物へ。


「ピノ……?」


 いつもは報告をすぐにくれるピノ。

 けど報告がないまま、次々と植物に触れていく。


「すみません、何故か植物達が混乱していて、うまく読み取れなくて……。でも、みんな大変だ、大変だって言っています!」


 なんだ……?

 どういうことだ?

 何が起きてる?


 不安と相まって、鼓動が速くなる。


「皆どうしちゃったんでしょうか……。この子なんて、逃げて、と言ってますよ?」


 逃げて……だと……?

 植物達の、大変だ、は独り言のようなものなのに対し、逃げて、はおそらく俺達に向けたメッセージだ。


「ピノ! ここからすぐ離れよう!」


 そう言い放った直後、後方から激しい光と共に、生暖かい風が吹いた。

 思わず振り返ると、歩いてきた道付近に生えていた植物達が、炎上していた。

 先程抱いていた不安が、確信へと変わっていく。


「レイ様! 植物達が!」


 ピノが悲痛の叫びをあげる。

 いくら未知の星の植物とは言え、自ら炎上したりはしないだろう。

 植物でも、俺達でもない者の仕業。

 心当たりがありすぎる存在がひとつ。


 振り返った方向から、先程よりも更に温度の高い熱風が吹く。

 距離にして、およそ20メートル。

 深みのある黒の金属を纏った生命体。

 俺達が逃げるよりも先に、両腕から出す炎で、周りの植物達を燃やしながらそいつは現れた。

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