22話 シショク

 星の変化に備えるといっても、現状何が出来るというわけではない。

 そりゃそうだ。

 雨や、垣間見た植物の急成長なんかを、いったい誰が予測出来ただろうか。

 だからといって、ただ寝て待つ程愚かではない。

 生き抜くためには情報こそ命。

 可能な限りの実験と、探索を続けるしかない。


 探索自体のやることは簡単だ。

 周囲に注意しながら、周囲の状況を把握するだけ。

 これはカメラを積ませたミニN2でも、俺が前回穴を見付けた時同様に調査してもいい。


 問題は実験だ。

 実験とは、一つの疑問に対して仮説を立て、結果を求める行為。

 しかしこの星では、立てた仮説が通用しない。

 故に、力業ではあるが、とにかく色々なことを試す他ない。


 今まさに行おうとしている、木の実の試食もそうだ。

 N2が回収してきてくれた木の実が、食べられるかどうかを試すのも実験の一つ。


 文字通り食を試すのだが、やろうとしていることは、文字から想像するほど簡単じゃない。

 赤ん坊の頃は、無知故に何かを口にしても、本人は不思議とさえ思わない。

 いや、むしろ何かを口にするのが当たり前で、そうやって少しずつ学んできたんだ。


 目の前に並べられた木の実達を、見つめる俺。

 その様子を見つめるN2。


「では、いただきます」


「よろしくお願いします」


 よろしくってなんだよ。


 苺だとか、ブルーベリーとかならここまでの抵抗はなかっただろうが、そう我が儘も言ってられない。

 表面がぶつぶつした木の実って、ちょっと不気味だよな。


 思いきって一粒口に含み、噛み潰してみる。

 瞬間、爽やかな酸味と、ほのかな甘味が口内に広がる。

 正直、思っていたよりも、かなりうまい。

 アセロラとさくらんぼを足して、2で割った感じだ。


「N2、これかなりイケるぞ。味も俺の星のフルーツに近い。食料候補間違いなしだ」


 よくやったな!と誉めると、照れ臭そうに、うへへと笑うN2。

 実際偉いのは木の実なのだが、N2の解析無しには安全に食べられなかっただろう。


「ちなみに、この実は何ていう実だ?」


「これはマルベリーと呼ばれる実によく似ているね。日本の言葉で言うと、クワの実の仲間だと思う。」


 おー、名前は聞いたことあったが、こんなぶつぶつした実だったのか。

 しかしN2、流石だな。


「いつ枯れるかも分からないから、出来るだけ多めに採取しておきたいな。もしかしたら、枯れるのも早い可能性もあるし」


 この星の植物の成長が不規則なせいで、今後安定して収穫出来るとは限らない。

 現にシェルター前の植物の中には、一定の大きさを越すと成長が止まるどころか、枯れてしまう植物もあった。

 それらが実をつけるには、雨とは別の条件があるのかもしれない。

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