動き始めた歯車

13話 ヘンカ

 N2が天井に開けた穴は都合よく脱出路になっていた。

 地上まではそれなりの距離があるのだが、崩れた瓦礫が地上への道となっている。

 念のため自爆した黒い生命体の様子を見に行くと、やはりというか、やつがここで爆散したであろう焦げ跡を残して、姿はなくなっていた。


 ちなみにN2の右腕はバレルから腕、腕からバレルへと変化が可能らしい。

 腕に戻した状態でもやはり美しく、その他の体のパーツとの差が目立つ。

 バレル状態の技は、

 1.空砲での高速移動

 2.凄まじい破壊力のエネルギー弾


 他にも色々出来るらしいが、今は内緒だよーと、はぐらかされてしまった。

 どうせ危険な代物だろうし、今後使うべき場面が来ないことを祈る。



 N2が何かを発見し、突然それを、このっこのっ、と踏みつけ始めた。

 黒く染まった金属片、黒い生命体のパーツだ。

 敵ながら、さすがというべきか。

 あの爆発に耐えうる材質となるとやはりただの機械ではないのだろう。


「よしなさいN2。そいつはもう死んでいるし、それに、宇宙船の機械を直す材料にするんだろ?」


 おっと、そうだった、とN2が最後に力いっぱい踏みしめた後、それを拾い上げた。


 少しばかりパーツを回収できたが、宇宙船を直すに足りる量には到底及ばないらしい。

 精々新しいN2グッズが出来上がる程度だろう。


 ゲートの先の小部屋にはもう何も残っていなかった。

 中心部のガラスケースが意味深だったが、あれはいったい何だったのだろうか。

 なくなったものは、どうあがいてもしょうがない。

 いったん忘れることにしよう。



 次に何をすべきかと考えたときに、真っ先に思い浮かんだのが「空腹を満たすこと」だった。

 もう空腹の限界だ。

 全力疾走をしたことで喉もカラカラ。


「船に帰ろう」


「うん」


 N2が開けた地上への道を上っていき、俺達は再び星の下を歩くことが出来た。

 再びと言ったが、この星での夜空は初めてだ。

 穴に入る前は辺り一面赤い夕景を描いていたのだが、地下にいる間にずいぶん日が傾いたらしい。

 同じ未知の星でも、密閉された地下と、星空の下ではえらい違いだ。


「レイの遭難開始から、6時間と14分32秒でこの星での一番暗い時間を観測したよ。

 もしかすると、もう少し前だったかもしれないけれど」


「おう、ご苦労」


 飲まず食わず、突っ込みを入れつつで6時間とちょっと。

 そりゃ疲労も困憊だ。


 船への足取りは重い。

 がしかし、不思議な高揚感と、突然右腕を変形させポーズを決めるN2が微笑ましくて、胸の内は温かかった。



 12通り目あたりかのポーズを決め終えたN2が、ふと、


「レイー、なんだこれは?」


 と尋ねてきた。


 N2が凝視する方へ目を向けると、なんと地面にコケが生えていた!

 群生範囲は狭いが、青々としたコケが生えている。

 しかも、ほんの少しではあるが光を放っている気がする。

 穴へ向かう途中には全く生えていなかったはずだ。

 N2も知らないモノとなると、俺が遭難する前、更には穴に入る前には存在していなかったということになる。


 穴に入ったから?

 それとも、ゲートを開いたから?

 はたまた、黒い生命体を倒したから?


 もしかしてと思い、すぐさま宇宙船に戻る。

 土に植えていた芋が、芽をぴょこんと生やしていた。


 原因は分からないが、この星に変化が訪れている……。


 一方N2は、芽が出た芋をみて、おほぉ! と不思議な奇声を上げていた。

 

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