第20章 

東南アジアで発生した熱帯低気圧は急速に巨大化し、中心気圧 895hPa 、


最大瞬間風速毎秒85メートルの記録的な台風へと成長していた。


その台風18号は北上していたが、北東に進路を変えて


東海地方と関東を直撃する可能性を気象庁は発表した。


その台風18号が迫る中、嵐に立ち向かうように、


江野の駆るYZF-R1は南下し、一路名古屋に向かっていた。


巨大台風接近のニュースのためか、国道279号線は空いている。


猛烈な向かい風の中を、マシンを疾風のごとく駆る江野。


ガブリエルのペンタグラムを封印する刻印はあと1箇所。


しくじれば、ハルマゲドンのはじまりだ。




目的地は伊良湖岬。灯台がある場所だ。

そこの闇の力を刻めば、逆ペンタグラムは完成する。


これ以上、無意味に天使に光を奪わせるわけにはいかない。




YZF-R1は250キロを超えた。


そのままのスピードでヘアピンカーブをクリアする。


闇の者であるからこそ、人の限界を超えることを可能にした。


前方を走る20トントラックを追い越した時、


反対車線から乗用車が向かってくる。江野はマシンをジャンプさせた。


20トントラックの荷台に後輪を当て、


乗用車の頭上を越える。乗用車に乗っている、カップルとおぼしき若い男女が


まるで幻を見ているかのように、ポカンと口を開け、YZF-R1を見送った。




伊良湖岬が見えてきた。あとはほぼ一直線だ。


伊良湖灯台へと続く海岸を猛スピードで突っ走る。




江野はマシンにカウンターを当て、


YZF-R1を横滑りさせながら、急停車した。江野の右目が見開いた。




そこには天宮務がいたのだ―――!




「無駄なことを・・・」


天宮はそう言うと、嘲笑の笑みで口元を歪めた。




江野は天宮をにらみつけた。赤い左目が妖しく光る。




天宮はけだるそうに口を開いた。


「すでに私は刻印を完成させた。お前が今さら何をやっても無駄だと


 言ってるんだ」




江野の表情に初めて感情らしい色が浮かんだ。


「天宮、お前まさか・・・」




天宮は天を仰ぐ。嵐の迫った暗雲のたれこめた空を。


すると、彼の姿に異変が起きた。


白いYシャツとグレーのチノパンに白衣を羽織った


その姿が、まぶしく光る。


そして、天宮の肌が青紫に変化していく。


茶髪だった頭髪は、銀色に染まっていった。




上半身をあらわにし、下半身には純白の衣を


まとった姿になる。


その青紫色の肌には―――顔、体にいたるまで


白く切り抜かれたように、紋章シジルが浮かび上がった。




江野は天宮をにらみつけた。赤い左目が妖しく光る。




天宮はけだるそうに口を開いた。


「すでに私は刻印を完成させた。


 お前が今さら何をやっても無駄だと言ってるんだ」




江野の表情に初めて感情らしい色が浮かんだ。


「天宮、お前まさか・・・」




天宮は天を仰ぐ。嵐の迫った暗雲のたれこめた空を。


すると、彼の姿に異変が起きた。


白いYシャツとグレーのチノパンに白衣を羽織った


その姿が、まぶしく光る。


そして、天宮の肌が青紫に変化していく。


茶髪だった頭髪は、銀色に染まっていった。




上半身をあらわにし、下半身には純白の衣をまとった姿になる。


その青紫色の肌には―――顔、体にいたるまで


白く切り抜かれたように、紋章が浮かび上がった。


そして、その背中には巨大な翼が広がっていた。




「もう、お前の出る幕はない。消えろ」


天宮・・・ガブリエルは左手を広げ、江野に向けた。


次の瞬間、YZF-R1が赤い閃光を発し、


爆発した。真っ赤な炎と黒煙に江野は飲み込まれる。




「地獄に帰れ」


ガブリエルは、燃えさかるマシンの残骸に侮蔑の視線を向ける。


立ち込める黒煙の中に、人影が浮かんだ。

その人影には、6枚の翼のシルエットもある。そして、赤く光る左目がきらめく。




「さすがは、この程度じゃ効かないようだ。だが、もう1度教えてやるよ。


 私に挑むには、今のキミは力不足だ。元天使さん・・・・・・」




「お前は、やってはいけないことをした。審判を下すために、聖女の光さえも


 奪うとは」


江野の口調は静かだが、そこに底知れぬ怒りを感じさせた――。

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