第39話 不死鳥のジジイ

 やあ、おいらです。


 おいらはだだの精神病患者であって、スピリチュアルな能力なんて持ってないはずなのですけど、なんでか全くわからないんですが、他人に対して怒りの感情を持ったときに限り……うーん、誤解を皆さまに与えかねないかなあ。まあいいや。とにかく、他人に怒りの感情を抱いた時、「呪いをかけてやる!」って言うと、かなりの確実で、数日のうちに、その人に災いが起きるんです。ああ、逃げないで、お客さん。これは、たぶんですねえ、心理学的思考でいけば、おいらに呪いをかけられたっていうことによって、対象者の脳裏に、なんとなく気味が悪いなという感情が焼き付いてしまい、たまたま起きてしまった災いを、「わあ、本当に呪いにかけられていたんだあ、ぺこりって怖いわ」と思い込んじゃうんだと思うんです。ただ、それがさあ、トレッサのバカ書店にいた時に、複数回起きちゃったものだから、しかもそのうちの一つが超大クレームで「社長呼べ、コノヤロー」的なものに発展しちゃって、社長はさすがに来なかったけれど、店売本部統括本部長とか統括店長とかが集合して、何時間もグダグダ文句言われるような事態になり、主任だった女性社員(おいらが呪いもどきかけた人。大クレームの当事者)が「お願いしますから、もう呪いはかけないでください」って泣きながら懇願しちゃって、おいらの呪いが店員中の共通認識になってしまったのです。これ、自慢話じゃないですからね。

 歴代の店長にも呪いがかかったみたいで、初代店長は基本的に元社員だったおいらを立ててくれたり、コキ使ってくれたりしたんだけど、一回だけ、その人に怒られて、ムカついたおいらが呪いを発動したら、おいらがその日帰った後、電話で大クレームがあったらしく。「もう、呪うのやめて」って言われました。その次の店長は、残虐な殺人事件を扱ったノンフィクションを喜んで読む、鬼畜で、なんだか、おいらをやめさせようと画策していたのです。しかし、突然、てめえの方が左遷されました。三代目の店長の時、おいらはキチガイになってクビになったのですが、いま、彼女は精神科に通院しているそうです。もういいね、これはおいらの「呪い自慢」です。あっ、精神科に行く時間だ。また後で。


 はい、帰ってきました。まずは桜のこと。十日市場の駅前も電車から見る鶴見川沿いの桜も全然咲いていない。東京は満開なのにねえ。ここんとこ寒いけどさあ、開花日が一日遅いだけでこんなに違うものかなあ? みんなカミキリムシにやられたのか? 桜より、コブシとかハクモクレン、ユキヤナギの方が美しい。そして名も知らぬ、薄い紫のBB弾のようなものをつけた花の群生がとてもキレイ。でも、名前わかんねえ。

 鶴見川沿いのソメイヨシノは枝ぶりが悪い。そして、人工物にこうした期待をしてもしょうがないけど、野趣がないねえ。えっ? そんなら吉野山に行けって。ああ、山はムリだわ。登山中に必ず死ぬ。昔、まだ若干お金が残っていた頃、五月に元妻と山形に行ったの。おいらは蕎麦どころである山形で、寒ざらし蕎麦っていうのが食べたかっただけなの。感想は……ああ、普通の蕎麦も山形はとても美味しいねってとこ。あと霞城公園で最上義光の像をみて、もう満腹だったのに、元妻が「山寺に登ろう」って言い出して、絶対にムリだとわかっていたけど、権力者には逆らえず、登ったのさ。そしたら、緊急事態発生! 詳細は言えませんが、おいらは聖域を汚しました。山の木や草たちは突然の栄養補給ができて嬉しかっただろうな。幸い、天罰はないようです。すでに強烈な天罰をいただいているからね。


 さて、現在に戻ります。少し長くなると思います。閲覧継続をしてくださる方はどうぞ、休憩を。


 先月に続きまた一本早い地下鉄に乗ってしまいました。仕方ないので、西方寺さんで亡母に向かってブツブツと話しかけました。時間が遅いから他に人がいなくていいんですが、見る人が見たら、完全にキチガイですよ。

 日が長くなって、ゆく道坂道がバッチリ見えるせいか「ええっ、病院ってこんなに遠かったっけ?」ああ、無気力月間絶賛継続中。花粉症と違ってさ、無気力はピークとか終わりが見えないから辛いね。さらに疲労感もバリバリ。薬局寄ったらダイエー行かずにまっすぐ帰ろと思いました。十八時三分病院にイン。十八時十五分に病院をアウト。早すぎる。早すぎるから、時間がずれて、薬局、超満員。こんなの初めて〜。で、ハルヒを持参していたので読んだのだが、どうも、お布団の中でないと集中できない。お布団の中でもそんなに集中してないんだけど。で、ボーッと生きてたら名前を呼ばれました。いつもの薬をいつもの量なんで、薬剤師さんの話なんて聞いてるふり。で、説明が終わった時に、気がついた。「ゴールデンウィークは営業するんですか?」って聞くことをね。だって古賀先生、三十日やるっておっしゃるんですもの。平成最後の日なのに。でもさ、いくら病院がやってても薬局が閉まっていたら意味がない。処方箋ってさ三日間しか有効じゃないんだもの。そうしたら薬剤師さんが「通常通りです」と言ったので、おいらは暦通りなんだと思い「ああ、休みですかあ」ってヘタれたの。そうしたら薬剤師さんが「営業します!」って元気よく言ったので、思わず顔を見上げると、なんてことでしょう! マスクで顔の上半分しか見えないけれど、若くて絶対に美しい女性が目をまっすぐ見開いて、おいらを見ている。おいらも至近距離で彼女のちょっと茶色がかった黒目の奥の奥まで見入ってしまいました。その間、わずか数秒。そうしたらね、信じられないことに、今まで心身を支配していた無気力感と疲労感が消えているんですよ。不思議でしょ? 信じられないでしょ? でも本当のことなんです。だから、おいら十日市場のダイエーに行けたよ。若くて美しい娘の澄んだ瞳はユンケルの一番高いやつより効果があるんですね。だから、おいらに必要なのは若くて美しい娘と見つめ合うことなの。元妻や近所のおばちゃんではダメなのだあ!


 しかし、どう考えても、若くて美しい娘に出会うことなんかさあ、砂浜で……興奮しちゃってよくわからん! 以上です。

 では。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る