十一
「まあな。……この学院のことを聞いたとき、それでも、ちょっとは安心したんだ。彩花と同じような境遇の生徒もいて、世間の目にさらされることのないように子どもを産めて、勉強も続けることができる。事情に応じては生まれた子どもの養子先もさがしてくれる。そういう事情で悩んでいる生徒や親にとっては、たしかにこの学院はありがたい場所なんだろう。日本じゃ、妊娠した女性の受け皿になってくれる施設なんてあまりないからね」
「たしかにね……」
美波はやるせなく笑ってみせた。
「……だが、彩花は帰ってこなかった。彩花もお腹の子どもも亡くなったとだけ聞かされた」
薄闇に、司城の横顔が一瞬、凍ったように固く見えた。
「……」
「……真実を知りたいんだ。仮に本当に自殺したにしても」
美波は迷った。晃子から聞いた話を伝えるべきだろうか。
嘘か本当か学院によって消された、つまり殺された生徒もいたという話。
(いくらなんでも、そんなこと、あり得ないよね……?)
美波は下唇を噛んでいた。
「何か知っているのか?」
「え……? あの、ちょっと聞いた話なんだけれど……」
迷いつつも美波は晃子から聞いた話を司城につたえた。以前に、いろいろ学院のことを詮索した少女が不慮の死を遂げた事件を、友人の晃子に言わせれば、学院側に殺されたのだと。
話を聞くうちに、司城の表情は
「やっぱり、そうだ。この学院にはさらにまだ秘密があるはずだ。俺はそれを知りたい。そのために雑誌社を辞めてフリーになったんだ。協力してくれないか?」
腕をつかまれてせがまれ、美波は頷いていた。
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