三人は仕方なく廊下をすすみ、おもに美波が説明した。

「この渡り廊下の向こうは寮で、一階の向こうの端が食堂で、反対側の端が浴場で……」

「浴場って?」

「シャワールームがあるのよ」

 美波の言葉にまた雪葉が眉をつりあげる。

「シャワーって……、個室にはないの?」

「ないよ」

 あっさりと言う夕子に、雪葉の顔色が変わった。

「信じられない! え、じゃ、まさかトイレは?」

 あっちよ、とトイレのある場所を指さす美波に雪葉が首をふる。

「そうじゃなくて、個室にはついていないの?」

「ないって」

 またもあっさり言う夕子の顔は、どこか雪葉の狼狽ぶりを楽しんでいるようだ。その図太さがいっそ美波には羨ましい。

「じゃ、トイレのときどうするのよ? あの、つまり」

 意味するところはなんとなくわかる。たしかに集団生活では悩みの種だ。

「慣れるしかないんじゃない?」

 夕子の言葉はそっけない。

「まあ!」 雪葉ま真っ青になってから、怒りにか頬を赤くする。

「……神経の太い人はいいでしょうけれど」

「言っとくけど、あんたも明日の朝はトイレの掃除だからね」

 雪葉は言葉を失くしてしまっていた。

「どこの学校だって掃除はあるでしょう?」

 美波はとりなすように言ってから、ふと気になって訊いてみた。

「雪葉……さんは、出身はどこ?」

「雪葉でけっこう。北海道よ」

「へー、また遠い所から来たんだ」

 夕子が意外そうにつぶやくが、言われてみれば、雪葉という名前とその透きとおるような白い肌に、なるほどと頷ける。

「そういうあなたはどちらの出身?」

 夕子は横浜だと答え、美波も東京出身だと告げる。

「二人とも関東ね。やっぱりここは関東の人がほとんどなのね」

「そうでもないよ。岡山から来ている子もいるって」

「福岡の人もいるわよ」

 夕子が言うのは裕佳子のことで、美波の言うのは晃子のことである。ふうん……、と雪葉が長い眉をまるめた。

「でも、なんであんたみたいなお嬢がこんな辺鄙なところに来たわけ?」

 夕子の問いに、まるくなっていた雪葉の眉がまたもつりあがる。言われてみれば、美波も気になる。

「そういうあなたはどうして?」

「……親に行けって言われたの」

 ぶっきらぼうに夕子はうそぶく。

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