五
なごやかそうな雰囲気だが、高校生が遊んでいるというよりも、まるで仕事がひと段落して休んでいる労働者のようだ。心なしか、三人並んでベンチに座っている彼女たちの表情は疲れたものに見え、その物腰も、十代の少女にしてはやけに億劫そうだ。
「彼女たちは特殊奉仕者です」
「え?」
聞き慣れない言葉に美波も夕子も目を丸くする。
「ボランティアしているってことですか?」
「まぁ……そうですが、規則違反をかさねた者や、……ある者は事情によって特殊奉仕と呼ばれる作業をすることになっており、彼女たちはその仕事をしているのです」
「なに、それ?」
夕子が唇を突き出すように訊く。
「別館で、特別な奉仕作業に加わってもらいます」
「それは……罰ってことですか?」
聞いていて美波は妙な胸騒ぎを覚えた。
どうもこの学院は奇妙だ。
予想していたミッション系の私立校のイメージからかなり外れている。いや、なによりも、あの三人の少女たちの様子にどうにも違和感を覚えるのだ。
「でも、規則を守っていたら、大丈夫ですよね」
答えてくれない裕佳子におもねるように美波はそんなことを口にしたが、かえってきた言葉は衝撃だった。
「それは、あなた方のここへ来るまでの生活によります」
二人とも一瞬呆然としていた。
「あなた方がこの学院へ来るまでに積み重ねた悪事によっては、別館に移転してもらうことになるかもしれません」
「悪事? はあー? あんた何言ってんの?」
呆れたように言う夕子に、振りかえった裕佳子の目は信じらないくらい冷ややかだった。
「悔い改めるのです」
二人ともまた言葉を失ってしまっていた。
渡り廊下に斜めに射しこむ柔らかい陽光が、三人の顔をなぶる。
音楽室かどこかで誰かがピアノを弾いているのか、ショパンのノクターンがひびいてくる。中庭の隅では学院の名前とおなじ遅咲きの白い薔薇が、純白の花弁を誇らしげに青空のもと開いている。
とても穏やかで美しい
それだけに裕佳子の発言と目つきは異様に思えた。
「これまでの汚れた人生を振り捨て、やりなおすのです。この学院で生まれ変わるのです」
先ほど学院長が述べたのとおなじようなことを裕佳子は言う。
「はあああ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます