第116話 総隊長補佐

 翌朝。

 朝の訓練を終えて朝食を摂っていると、王国の使者が朱王城を訪れた。


「はじめまして。国王様からの使いで、アマテラスの皆様と朱王様に王宮に来て頂きたいとお願いに参りました」


「「アマテラス?」」


 千尋とミリーが首を傾げる。


「自分で決めといて忘れるな。オレ達のパーティー名だろ」


 蒼真がツッこみ、リゼとアイリは苦笑い。


「私達も王宮に向かう予定だったし、国王が時間を空けてくれるのなら助かるよ」


「ありがとうございます。では明日の十時に王宮へお越しくださいますようお願い致します」


 朱王との約束が取れたので王宮の使者は帰って行った。


 今日ではなかったがまぁいいだろう。

 残りのモニター設置に行くとしよう。


 この日は朱王もいるので貴族街広場への設置に向かう事にした。

 東西南北の四ヶ所の設置だが、市民街よりも一回り小さいモニターの為それほど時間は掛からないだろう。

 それでも人手は欲しいので各訓練場の部隊長にリルフォンで連絡をとり、手伝いに十名ずつ出してもらう事にした。


「あ、そうそう。今日からハクアは暗部から移籍する。移籍先はこれまで無かったサフラの補佐、副隊長に任命するからよろしくね!」


「ふぇ!?」


 ハクアは自分が暗部から外される事は知っていたが、まさか副隊長になるとは思っていなかった。


「朱王様。ハクアを何故暗部から外すのですか?」


 サフラからは当然の疑問だ。


「ハクアを見たらわかるだろう? 目立つし武器は長物だ。暗部には置いておけない。それにサフラの負担も少し減らしたいから丁度いいかなってね」


「しかしクリムゾンの副隊長…… 突然移籍してきて新しく出来た副隊長の座に着くとなれば、皆がハクアを良くは思わないでしょう。私としては皆が納得したうえでハクアを副隊長としたいのですが」


 サフラはハクアの立場を心配しての事だろう。

 あえて皆が納得したうえでと条件を出した。

 ゼス王国クリムゾン本部には総隊長のサフラ、その下に区隊長のアルド達四人がおり、総隊長の補佐として副隊長を設けるのであれば、クリムゾンとしてはナンバー3の座となる。


「それなら今日ハクアの魔法威力を確認するんだけど、クリムゾンの隊員も集めて一緒に見てもらえばいいよー」


 千尋は今朝ハクアにイメージの魔石を渡した。

 そのイメージを元にハクアがどんな魔法として発動するのか気になるところではある。


 そういえば朱王もサフラにはハクアが上級精霊と契約している事も言ってなかった。

 光魔法なんて見たら驚くだろうと思い黙っておく事にした。






 貴族街には四組に別れて作業に向かう。

 千尋とリゼはダンテと一緒に北へ、蒼真はサフラとハクアを連れて西へ。

 アイリはガネットとデイジーとで南へ、朱王とミリーはイアンとともに東を担当する。

 各広場にすでに隊員達も集まっている頃だろうと、空を飛んで向かった。


 この日の設置も問題なく終了したので特に語ることはない。






 午後からは先にハクアの魔法の確認をする事にした。

 幹部達は仕事があるので戻ってもらったが。

 クリムゾン東区訓練場で隊員達を集めて、ハクアの副隊長任命と魔法のお披露目だ。


「皆んな、訓練ご苦労様。今日は一つ発表があってここに来たんだけど、皆んなハクアの事は知ってるね? 今日からハクアをサフラの副官として任命する事にしたからよろしく頼む。まぁ他所から来て急に副隊長なんて言われても君達も納得いかないだろうから、ハクアの魔法を見て判断してくれ」


 朱王の発表とともに騒めきが起こる。

 やはりサフラが懸念していたように不満の声が多いようだ。

 しかし中にはハクアを見て可愛いという声も混ざっているようだが。




 ハクアのレーザー威力を確かめるべく、昨日と同じように四角いミスリルの板を高い位置に設置する。


 およそ二十メートルほど離れて魔槍を引いて構えるハクア。

 魔力を練り気持ちを落ち着かせてイメージを固めていく。

 スウッと目を開き、ミスリル板目掛けて槍を突き出す。


 閃光。


 七色の光の帯がミスリルを貫き、遠くの空へと突き抜けていた。

 キラキラとした光の粒子が霧散し、自ら放ったレーザーに驚きの表情で佇むハクア。

 貫かれたミスリル板は、左下側をわずかに残して蒸発していた。

 昨日は目で見る事は出来なかったが、今日はレーザーを見る事が出来たのは何故だろう。


「やっぱレーザーとかビームって言ったらガ◯◯ムだよねー。威力はオレの魔力増幅イメージを摩り込ませて、見た目はアニメ映像を見せたんだー」


 視覚化したのは魔法にイメージを織り交ぜたのが理由らしい。

 千尋のレーザーポインター魔法を見ているので、ヴァルキリーもそのイメージを強化したのだろう。




 さすがに視覚化した特大のレーザー光を見た騎士達も言葉が出ない。

 迫力だけではない、実際にミスリルを貫く程の威力があるのだ。


「ついでだからハクア、少し空を飛んで見せてよ」


「はっ、はい!!」


 ハクアは七色の天使の翼を広げる。

 空へと舞い上がり、光の粒子を撒き散らしながら飛翔するハクアはまさに天使といった様相だ。


「天使だ…… うぉぉぉぉお、天使様だーーー!!」


 と誰かが叫ぶと同時に歓声が巻き起こる。

 副隊長としても充分に認められるようなパフォーマンスになっただろう。

 そんな歓声が聞こえる中、気持ち良さそうに空を舞うハクア。

 まだ飛び慣れないながらも、扱いやすいC級素材では空中遊泳も簡単だ。


「ねぇ朱王さん! 私の飛行装備もあれにして!」


 リゼはハクアの天使の翼を気に入ったようだ。


「アイリもあれ似合うんじゃないか? 朱王さん、アイリの分も頼む」


「ええ!? 蒼真さんが決めるんですか!?」


「ああ、似合うと思うからな」


 蒼真が勝手にアイリの分も決めてしまった。


「それなら千尋のもお願い! 千尋も絶対に似合うわ!」


「オレのはリゼが決めるの!?」


「ええ、似合うと思うもの」


 リゼとアイリ、千尋の飛行装備を帰ったら加工することにし、しばらくハクアの飛行を見た騎士達に朱王が告げる。


「じゃあ今後は副隊長ハクアをよろしくね! それと今後は映画の日を設けるから警備の方もよろしく頼むよ。君達は訓練場にくれば映画を観れるんだから、警備の方はしっかりお願いね!」


〈〈〈〈〈はい! 朱王様!!〉〉〉〉〉


 朱王とミリー、サフラとハクアはクリムゾン各区訓練場へ、千尋達は聖騎士訓練場でいつもの訓練へと飛び立った。

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