月が追いかけてくるように

作者 いっさん小牧

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★★★ Excellent!!!

 主人公の少年はごく『普通』の男子高校生。そんな彼から『特別』な何かを探すならば、彼はほんの少しの優しさとほんの少しの人付き合いの上手さをもっているということぐらいか。

 ある日、主人公は黎という名の少女と出会う。ごく『普通』に見える少女は『特別』な特徴をもっていて、主人公は彼女のことを少しずつ理解しながら、やがて『特別』な存在に想うようになっていくのだ。

 黎という少女は本当に可愛らしい。その証拠になることを一つ挙げてみよう。いつも主人公は黎から少し離れて座るのだが、彼女はずりずりとお尻だけで移動して近寄ってくるのだ。年下の可愛らしい女の子にこんなことされたら、世の男子は皆イチコロである。(もちろんボクもイチコロ)

 しかし、そんな可愛らしい黎の行動は、彼女の『特別』な特徴からくる行動パターンの一つだったことに気付かされる。ここでボクは衝撃を受けたのだ。ボクが単純に可愛いと思っていた彼女の行動も、別の受ける側からすれば、負の感情を抱くこともあるのだということに。

 その他にも黎には数々の『特別』があり、それが周囲の人々を戸惑わせ、結果として彼女は孤立し、心の殻に閉じこもっていたのである。主人公との出会いが彼女を変え、周囲をも変えていく。その過程で主人公はあることに気付く。これこそが、この紹介文のタイトルにある『心の処方箋』なのだが、それについてはここでは触れない。ぜひ物語を読んで見つけて欲しい。

★★★ Excellent!!!

人付き合いが苦手な女子中学生・黎。「強いこだわり」が非常に多い故に生き辛さまでをも抱えている。当然の事ながら学校には……。

そんな彼女が俳句と出会う。この俳句との出会いが彼女に何をもたらすのか?

その俳句と出会うきっかけが、失礼な男子高校生・鳴兎との出会い。彼もまた、不思議ちゃんの彼女と出会い、影響を受け始める。悪気なく失礼な言動を繰り返していた彼もまた「相手がどう受け取るか」を意識し始めていきます。彼女によって何かを……。

二人ともが俳句の世界に触れる事により中年、御年配と呼ばれる方々とも知り合う事となり、そして深く関わり合うように。

異世代交流によりもたされる『和の精神』を存分にお楽しみいただきたい。
きっとあなたも「あっ、浮かんだ! ここで一句」といきたくなりますよ。

★★★ Excellent!!!

まるで運命に約束されていたかのように出会う鳴兎(なると)と黎(れい)。
言動に少し特徴のある黎を『なぜか』守ろうと必死になってしまう鳴兎。
そこに面倒見のいい鳴兎の姉と、頭脳明晰な黎の友人、団地の句会の大人たちが入り乱れて、黎だけではなく関わったみんなが少しずつ成長していく。

人は一人では生きられない。
かと言って、頼るばかりでも生きられない。
自分の足で立ちながら、誰かと助け合い、己の居場所を作りながら、また誰かを受け入れて行く。
その過程が、俳句を軸に甘酸っぱい恋愛模様を交えながら爽やかに紡ぎ出されている。

合間合間に挟まれる作者の自作の句も見どころ。
そのキャラに合わせて選ぶ言葉が違うだけでなく、目の付け所や発想も完璧に別人のそれになる。その句を読むことで、そのキャラの性格がわかるように書かれているのだ。このあたり、お見事というほかない。

物語が楽しめて、俳句の勉強もできる、一粒で二度おいしい!
さぁ、あなたも俳句の世界へ!

★★★ Excellent!!!

青春、という言葉に今でも憧れます。
青春小説に憧れ続ける願いをこの小説は満たしてくれました。

わたしのように俳句の作法や嗜み方を知らない方でも、ロックの歌詞や短い言葉を日々の座右の銘として無意識に胸に抱いて生活している方であれば、俳句の潔いリズムに惹かれるのではないかと思います。

なによりも清涼で暖かな主人公たちにときめいてください。

★★★ Excellent!!!

少年と少女が意図せず出会い、互いを知っていく。その結末はその目で見ていただくとして、そこに寄り添うのが俳句。

五七五の中に切り取られた情景の積み重ねが心理描写に彩りを与えていく。じじくさい趣味と言われていますが、少年少女にとってもかけがえのないものになっていきます。

「劇中劇」という手法があります。フィクションの中にフィクションを入れて多重構成にする。劇なら作中に数本ですが、今作で挿入された多数の俳句は織物のようになって、世界はこんなにも色鮮やかなのだと思わせてくれます。その舞台の上で惑いながら進む思春期の少年少女。

今作は小説ですが、俳句という文芸があってよかった。それは少年少女にも。

★★★ Excellent!!!

クライマックスからの怒涛のフィナーレ。
今、レビューが書けそうにありません。

でも、今、書かないといけない。

多少なりともモノを書く身としては、しっかりその良さを伝える事が矜持だとは思います。
だけど、この作品、恐らくしばらくすると語りたい事がゴマンと噴き出して、取り留めもなく書き続けることになります。

だから敢えて今書きます。


ひさびさに味わえました。
『フィナーレが来て欲しくない物語』


これは秀逸な青春ドラマです。
NHKで連続ドラマにしたら大反響間違いなしです。

俳句の事なんてわからない?
ハードル高い?

全く構いません。プロローグの俳句たちの意味も何もわからなくて大丈夫です。
正直言います。これ面白くなるの?
なぜ、これがプロローグ?

大丈夫です。

それは最後までたどり着いた方にはわかるご褒美なんです。俳句がわからなくても鳥肌が立つことになります。


さて、だいぶと落ち着いてきました。

この作品の魅力を伝えねば。

トラブルアクシデントの流れ、展開、緩急も素晴らしいのですが、なんと言っても『キャラとシーンの魅せ方』が素晴らしい。

平易なのに美しい言葉で、どこを切り取っても一枚の写真のように魅せる、シーンの数々。

そして、登場キャラの設定、設計、描写の巧さ。伏線の回収のヤラレタ感。

私は、キャラの魅力を最重要に置くタイプなのですが、その目指すところは、
『登場人物といつまでもその世界の中に居たい』
というものです。

この作品は、ずばり、まさしく、これです。『いつまでもこのキャラたちを見守りたい。一緒に居たい』

そして、先ほどフィナーレを迎えてしまいました。
これがショックなのです。

私は既に味わいました。

次は皆さんの番です。

10万字があっという間の物語。

さぁ、どうぞ。

★★★ Excellent!!!


最近はバラエティー番組でもコーナーがあったりしますが、俳句とは細かいルールを持つ難しい世界の話なのだと思っていました。

けれど、鳴兎くんの視線を通して、色々な俳句の姿を見れます。
こんなに自由な世界なんだなぁと、この作品を通して知りました。
(一句一句考えられた、小牧さん素晴らしいです)



ストーリーは、風景がくっきり読み取れるのもあって、少年漫画のようです。
読みやすくて、さくさく読めました。
鳴兎くん、黎ちゃんから始まり、表情豊かなキャラクターたちがとても愛しい作品です。

あと、個人的に瑠沙ちゃんが好きです。

★★★ Excellent!!!

俳句によって結ばれる人と人とのつながりに、運命と友情が絡み合う、少年少女たちの青春ドラマ。
言葉に色をのせ鮮やかに歌いあげられた物語世界には、人間味にあふれた人々が息づいており、主人公の鳴兎とヒロインの黎がたどる道を暖かく彩ってくれます。
各所に散りばめられた俳句は宝石のような感性を魅せてくれますし、センスが独特なユーモアにはついついニヤリとさせられてしまう。
日常ベースでありながら胸を揺さぶるストーリーと、差し色のように添えられた「ちょっと不思議」な記憶。
堅実であり、個性的であり、美しさを感じさせてくれる作品です。

ヒロインの黎は、少し変わったところのある少女。主人公の鳴兎は、どこにでもいそうな陽気でいたずら好きな少年。
二人はなんとなく出逢い、自然と一緒の時を過ごすようになります。
互いの想う心はいつも向かい合わせなのに、ときどきすれ違ってしまったり、時に深く傷つけてしまったり。
わかっているつもりでも、わかっていなかった。
それは誰にだってあることで、避けられないことでもあるのでしょう。

自分を見つめ直し次の一手を探す、鳴兎も黎もそんな誠実さを持っており、そのひたむきな姿勢はやがて、二人の周りに素敵な縁をつないでいきます。
俳句を絡めて丁寧に描かれゆくその過程は、終盤から一気に盛りあがりを見せ、最高の幕引きを味わわせてくれるのです。
どうぞ、読み終えたあとにもう一度、冒頭を読み返してみてください。
きっと、俳句の魅力がいっそう深く胸に響くことでしょう。

十万字ほどの完結作品です。
深く心を満たしていく読書体験、ぜひ味わってみてください。

★★★ Excellent!!!

青年が一人の少女と出会い、俳句を通して青春の一幕を紡いでいく物語。

プロローグでは怒涛の俳句ラッシュが繰り広げられますが、ご安心ください。これは俳句を知らない方でも気軽に読める、青春を主軸とした小説です。
勿論、俳句好きの方はより一層楽しめます。
そして俳句を知らない方でも、この作品を読み終える頃には、一句詠み上げてみたくなっているのではないかと思います。ですから俳句を知らない方にこそ、読んで頂きたい作品とも言えます。


ストーリーは複雑では有りませんが、常に続きが気になる展開であり、読み手を飽きさせません。
また、文章の美しさにも目を引かれます。
主人公の一見粗暴な言葉遣いも、写実的な情景描写と比喩の均整を取っており、文章全体に「馴染み」を生み出しています。
これは、俳句を学んでいるからこその文章表現なのかも知れません。

また、心の優しさ、難しさ、愚かしさから目を逸らさずに描きあげられた人物描写は、けしてご都合ではない、とてもリアルなものです。
困難に立ち向かい、葛藤し、絶望し、希望を生む。
彼らにしか描けない青春が、この作品には宿っています。

何より終盤にかけて押し寄せてくる胸が熱くなる展開には……え?
俳句で胸が熱くなる事なんてあるのか?
――その答えはこの作品の中にあります。どうぞ手に取ってお確かめください。





さて最後に、この作品によって俳句を大好きになった私から、作品と作者への感謝の気持ちを込めて、一句詠ませて頂きたいと思います。



「黎明の 和らぐ月に 兎跳ね」

★★★ Excellent!!!

 高校一年生の元山鳴兔。家族と話す中でふと母親が口にした、黎という学校に通うことが苦手な少女に彼は不思議と興味が湧いた。
 そして、彼女がいつもいるという川沿いの道で二人は出会うのだが……。


 私はこの作品から感じ取れる、登場人物達の『成長』に深く心を打たれました。
 少し人とは違う反町 黎という少女が主人公の鳴兔と出会い、そして俳句と出会う中で沢山の人達と出会う。
 そこで色々なことに触れ、経験し、乗り越えて成長していく姿は涙なしには見れませんでした。

 そんな黎と関わりあう中で、主人公の鳴兔もまた成長していきます。彼女を支えようと必死に行動する姿も本当に心を打ちます。

 だが、この作品の魅力はそれだけではありません。それは『俳句』です。
 『俳句』というマイナーなジャンルを青春と上手く掛け合わせることで、読者の知識欲を満たしてくれたり、知らないことにチャレンジする姿を見せることで青春というものが色濃く表現されているのではないかなと感じました。
 そして、それを可能にしているのは作者様のしっかりとした俳句の知識や言葉選びのセンス、ボキャブラリーの豊富さだと私は思います。

 更に、最後まで読んだ後にプロローグを読み直すと、なんとも暖かい気持ちになれます。こちらもお忘れなく!

 最終章を読んだ際の胸の高鳴りがレビューを書いてる今も忘れられません。
 これぞ青春という、最高の物語を是非あなたにも味わっていただきたい!
 青春ならではの胸の高鳴り……読まないなんてもったいない!