第47話 風の精霊

「なに!?」

「こんなひ弱な風しか起こせなくて、よく風の剣騎士になれたものだ。それとも剣騎士は過酷な職業なのでなりてのいない人手不足ですか? ケッケッケ。」

 風の剣騎士ハヤテの攻撃は、熱風を司る悪魔剣騎士パズズには、まったく効かなかった。

「俺が本当の風ってやつを教えてやろう。ただし、俺の風は喉が干上がる熱風だがな! くらえ! ホット・ウインド!」

「うわあああー!?」

 ハヤテを激しい熱風が襲う。

「どうだ? 苦しいだろう? 俺の熱風は、そんじょそこらの熱風とは違うぜ。砂漠の風と同じで、どんどんおまえの体から水分を蒸発させ、おまえをミイラにしてしまうのだ! ケッケッケ。」

「ダメだ!? このままでは!? なんとかして、この熱風地獄の中から脱出しなければ!?」

 ハヤテは悪魔パズズの攻撃で絶体絶命のピンチに陥ってしまう。

「ハヤテ。」

「この声は!? エルフ師匠!?」

「ハヤテ、おまえに風の神アネモイの四風から、新しい風の剣騎士のソード・ナイト・アーマーをプレゼントしてくれるそうだ。」

「いまさら言っても遅いよ!? 何でもっと早くに言ってくれなかったんですか!?」

「私は何回も言おうとしたぞ!? 話を聞かなかったのは、おまえだ。ハヤテ。」

「はいはい。どうもすいませんでした。ところで、新しい風の剣騎士の鎧は、どこにあるんですか?」

「目の前にあるぞ。」

「目の前? まさか!?」

 ハヤテの目の前には、エルフ師匠の友達のジンがいた。

「やっと自己紹介ができます。私、風の神アネモイの東風エウロス様から言われて、あなたの新しい風の剣騎士の鎧を授けるためにやってきました、風の精霊ジンと申します。」

「何!? ただのお団子大好き風の精霊ではなかったのか!?」

「失礼な! これでも私は風の精霊の王であるぞ! 頭が高い! 控え折ろう!」

「は、はあ~。」

 ジンが風の精霊王と聞いて、思わず頭を下げるハヤテ。

「ハヤテ、人の話を聞かない者は早死にするぞ。」

「申し訳ありません。以後、気をつけます。」

「よろしい。では、我が風の精霊の剣騎士の鎧を授けよう。えい。」

 風の精霊ジンは、風の精霊の剣騎士の鎧をハヤテに授ける。そして、風の精霊の剣騎士の鎧はハヤテに装着していく。

「うおおおおー!? 力が湧いてくる!? これが風の精霊の剣騎士のソード・ナイト・アーマー!? これならパズズを倒せる! 吹け! 風よ! 悪魔の熱風を吹き飛ばすんだ! どりゃあああああー!」

 ハヤテは風の剣気を高め、悪魔パズズの熱風をかき消す。

「なに!? 俺の熱風が!? いったい風の剣騎士に何があったというんだ!? それは!? 新しい剣騎士の鎧!?」

「そうだ。これが新しい私の鎧。風の精霊の剣騎士の鎧だ!」

「それがどうした!? 悪魔は、悪魔は負ける訳がないのだ! 俺の最大の技で地獄に葬ってやる! デビル・ホット・ウインド・ソード・スラッシュ!」

「風の精霊の剣よ! 私に力を与え給え! そして風を起こせ! 必殺! スピリッツ・オブ・ザ・ウインド・ソード・スラッシュ!」

 ハヤテの風がバズズの風を切り裂いていく。

「バカな!? 俺の風が負けるなんて!? ギャアアア!」

 ハヤテは悪魔パズズを倒した。

「これが風の精霊の剣騎士の鎧の力か。やりましたよ、師匠。」

「いや~、お茶が美味しいですな。」

「まったく、砂漠にオアシスとは、まさに、このことです。」

「オッホッホ。」

 戦いが終わったばかりなのに、エルフ師匠と風の精霊のジンはお茶を飲んで休憩していた。

「おい!? いきなり、お茶かよ!?」

「ハヤテ、おまえも飲むか?」

「要りません!?」

「なら団子を食べるか?」

「もう嫌だ! 姫の元に帰る!」

 こうしてハヤテは新しい風の剣騎士の鎧を手に入れて、姫の元に去って行った。

「若いというのは良いですな。」

「まったくだ。うらやましい。」

「オッホッホ。」

 どうも風の属性の者は、きまぐれであった。

 つづく。

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