第41話 巫女装束っていうのは、『神社』で見るからこそ、価値があるんだよな。
今、俺は……立派な純白の入道雲と、照りつける太陽の下。
青ジャージ姿で『邪念を捨てる』ために、神社の境内を掃除している。
なぜ? 神社かというと『妹』がいるからだ。
妹が前では『立派な兄』を演じていることを知っている理沙の策略だ。
妹の名前は『神村
現在、中学1年生。
前髪を揃えた姫カットで、くせ毛のない整った清純派の黒髪に、お気に入りなのか? いつも華やかなカチューシャをつけている。
切れ長い睫毛は、優美さを強く表し。
目は優し気な垂れ目で、鼻や口は小さく、和服の王道とも言える赤と白を基調とした着物と袴を組み合わせた『巫女装束』と、腰まで伸ばした巫女を思わせる髪型が特徴的な内弁慶で、色白な女性だ。
また『暗算の達人』で、5桁の掛け算をすぐに答えられるし。
教えたことは忘れることがなく、応用も出来る自慢の妹だ。
趣味は『ギター』。
よく神社の裏にある『ご神体』と呼ばれる大きなしめ縄がまかれた大樹に登ってギターを弾いている。
その姿はとても神秘的だった。
やっぱり巫女装束っていうのは、『神社』で見るからこそ、価値があるんだよな。
でも神職である巫女が纏う服にしては、少し肌の露出が多く、淫靡な感じの装いだ。
黒いスッパツに包まれた色気も十分な太もも。
特に運動系の部には入っていないはずだが、健康的に引き締まった白く眩しい太ももが、半分以上そこから見えてしまっている。
清楚な服装よりも、こういう動きやすそうな服の方が似合うよな。
年頃の男の視線に対して無頓着なところも可愛いな。
ただ、妹と理沙は『犬猿の仲』だった。
「ヒメちゃんは相変わらず『胸』ばっかり大きくなって、背がちっちゃいわねぇ。
ちゃんと牛乳を飲んでる?
もしかして……栄養が全部おっぱいに行っちゃってるんじゃないの」
のびやかでいて透明感がある、まるで小鳥のさえずりのような美声が発せられる。
ヒメちゃんとは、もちろん『理沙』のことだ。
女の子同士だからだろうか、彼女たちは、幼い頃と同じ調子で言葉を交わしている。
左右に灯ろうが並ぶ参道を、竹ぼうきで掃除する理沙はキレイだな。
ちなみに真ん中は『正中』といって神様が通る場所だ。
首の全てを覆うなめし革の首輪。
今日の服装は、豊満な胸元を編み上げた黒のミニドレスだ。
大胆にカットされた黒い布地は、必要最低限しか覆い隠していないうえに、なんと隙間からは、たわわなおっぱいの谷間が、見えてしまっているではないか。
それを誇るようにして胸を張っているから、なおさらにその凶器は突き出して見えた。
肉体を締め付けるような『コルセットドレス』は、身体のラインがはっきりわかり、肘まで覆う手袋と黒のロングブーツに、編みタイツ組み合わせは最高だよな。
そして身にまとう悩ましさもは圧倒的で、大人びた魅力があり、すべてが『ソフトエナメル』で統一され、どこか現実離れしているな。
まさに、SMクラブの女王様を
マジーヤベー。
ふ、踏まれていた。
思わず興奮して下半身に力が入ってしまうほど妖艶で、手に握るはムチではなく『扇』だ。
広げられた扇には『金髪ロリ巨乳美少女激ラブ』と書かれていた。
妖しく彩る黒いブーツのヒールが地面を叩いて硬い音を響かせ。
体のラインにピッタリとフィットしたエッチな服で、妹に詰め寄り。
「そういう二三ちゃんだって『低身長』でしょう。
確か? 137cmだったかしら。
それに貧相な胸ねぇ」
理沙は勝気な瞳で、二三を睨みつける。
「ワタシはヒメちゃんと違って」
日本人形を彷彿とさせる長い黒髪を逆立って。
幼くも端正な顔立ちが、怒りの形相に変わり。
でもその黒い瞳は『眠たげ』だった。
「まだ『若い』から背だって、まだまだ伸びるもん。
胸だって大きくなるもん。
お兄ちゃんから何か? 言ってやってよ」
妹の剣幕にたじろぎながらも
「女の子はちっちゃい方が可愛くて、俺は好きなだけどな。
無理に大きくなる必要はない。
二三はそのままでいいだ」
「そうよね。
ちっちゃいって、お得よね」
そのぱっちりとした目は長いまつ毛に飾られており、月みたいに金色の瞳が俺ではなく。
妹のことをじっと見詰め。
「カワイイ、カワイイって、大人に甘やかされるし。
映画やレジャー施設なんかも、子供料金で楽しめるんでしょ」
せっかく、少し和らいだ空気を理沙がぶち壊した。
「それがどれだけ屈辱的なことか? ヒメちゃんならわかるよね。
ただ背が小さいというだけで、馬鹿にされる?!
デカイことがそんなにも『偉い』の!?」
妹の目はつり上がり、全身が怒りに満ちていた。
「ええ、よくわかりますわ。
でも二三ちゃんほど、周りの『目』を気にしたことはないわ。
私は自分のカラダに『自信』を持っていますから。
「そういうところが、心底『嫌い』なのよ。
本当に忌々しい女ね」
「大好きなお兄ちゃんが、私にとられちゃって……」
「ばばば、馬鹿なこと言わないでよ! 別にお兄ちゃんのことなんて……何とも想ってないわよ。
これはその……妹としての『当然』の責務を果たしている……だけんだから、か、勘違いしないでよね」
「ムキになって否定しているところも、可愛らしいわね。
でも相手が悪かったわねぇ」
びっしりと人差し指を妹に突き付けながら
「龍一は私にメロメロだから、アナタが入り込む隙間なんてないわよぉ。うふふ」
そう言って理沙が身を寄せ、豊満なオッパイを左腕に強く押し付けてきた。
全身を引き絞るようなボンテージ風のコスーチュームの隙間からは、たわわなおっぱいの谷間が見えてしまっている。
「お兄ちゃんのバカァアアア!?
なんで、こんな自信過剰な女を好きになっちゃったのよ。
バカ、バカ、バカァアアアっ」
二三の声が境内に響き渡り、セミロングの黒髪はサラサラという音が聞こえてきそうなほどに脂気がなく、二三が顔を動かすたびに柔らに揺れ動く。
「確かに『二三』に比べれば、理沙は『ガサツ』だし、すぐに殴るは蹴るし、ずけずけと人の傷口をえぐるようなことば言ってくるしさあ。
周囲から羨望と賞賛の視線を浴びることをなによりも好むナルシストなところもちょっと苦手だけど……」
「それは……龍一がエッチなことするからでしょ。バカァアアア!?
あとナルシストとか言うな!?
彼氏なら彼女のことを、もっとぉ褒めなさいよ。
私のことを愛してるんでしょ」
ちょっと拗ねたように、可愛らしく怒る理沙。
意地悪をしてるつもりはないんだけど。
この反応が見たいから、ついそんな対応しちゃんだろうなあ。
こんな笑顔を見せらたら、男なら誰でも惚れてしまう。
「お兄ちゃん、女の子っていうのは傷つきやすいんだから、もっと言葉には気をつけないとダメよ」
妹との二三にまで怒られてしまう。
「まあ最後まで聞けよ。
すべてのマイナス要素を帳消しできるぐらい、理沙の容姿は素晴らしいだ。
俺が金髪美少女が好きなのは知ってるだろう」
「ば、バカっじゃないの? 龍一って本当にバカよね」
「そんなに見た目が大切なの? お兄ちゃんのバカっ!?」
身長は低く、小学生と見間違うほど幼い顔を真っ赤に染めて怒っている妹は、目に入れても痛くないほどの可愛らしいな。
小動物みたいな容姿も相まって、女性の参拝客からの人気が高い。
「人は見た目が9割って、言葉があるでしょう。
だから私はフェンシングをやって、カラダを鍛えているのよ」
しなやかに鍛えられた筋肉質な身体。
内股から腰にかけて、伸びる筋肉をしっかり鍛えていないと、腰は引き締まらない。単に運動だけではダメなのだ。
スラリと長い美脚は健康的で、筋肉質というわけではなく、どちらかと言えば、ムダな肉もついていないほど、よく鍛えあげられている綺麗な脚だ。
「金髪美少女とフェンシングは切っても切れない関係性があるからな。
さすがは理沙だ」
「金髪美少女=イギリス人って『考え方』自体が『古い』って、思ったことはないのかしら?」
「全然古くないだろう? 古く……ない……よな……」
「でも龍一って、そういうお約束イベントが大好きだもんね」
そう答えると、まるで氷の仮面を張り付けたような冷たい顔で、俺の心臓を射抜き。ぞっくりと冷え切った、氷の塊のような汗が背筋を震わせた。
勝ち気そうな瞳はキモチ吊り目で、全体的に少し気の強そうな印象を与える容姿だが『根は優しく』気配りのできる女の子なんだよな。
「その言い方だと、俺が古い人間みたいに聞こえるじゃないか?」
「ごめんごめん。そう意味で言ったわけじゃないのよ。
でもよくよく考えてみると、今時『金髪美少女=イギリス人って』発想は、ありきたりよね」
「そうそう、誰でも思い付くことだよね。
お兄ちゃんって『平凡』だもんね。
残念なくらいにさ……」
「そ、そんな……ことは……ない……と……お、思うぞ。
金髪美少女=イギリス人って、発想自体は『古い』かもしれないけど。
平凡的な考え方ではなく。
王道と言ってほしいな」
「呆れてモノが言えなくなるほど、龍一ってバカっだったのね?
彼氏がこれほどまでにバカだったとは……」
「妹としても恥ずかしいわ。
お兄ちゃん。
自分が何を言ってるのか? 本当に分かっているの」
「可笑しなことを言ったつもりはないんだけどな。
金髪美少女が嫌いな日本人なんて存在しないだろう。
フェンシングだって大人気のスポーツだし。
一度ぐらいは『イギリス』に行ってみたいと思っている『日本人』は、多いはずだ」
「その自信は一体ドコから湧いてくるのかしら。
普段は頼りないのにね。
好きなことに対してだけは、自分の意見を、決して曲げないのよね」
「でもそこがお兄ちゃんの魅力なのねよね。
呆れるほどに真っ直ぐで、バカなのよ」
「馬鹿は死ぬまで治らないって、よく言うけど……龍一の場合。
馬鹿は死んでも直らないの方が正しい表現よね」
「散々な言われようだが……俺は……俺の生き方を変えるつもりはない。
なぜならば『金髪美少女』を愛でることこそ、生きがいであり、存在理由だからだ」
単にからかわれているだけだとわかっていても、言い返さなければ気が済まなかった。
「やっぱり龍一は、正真正銘の変態だわ。きゃあ!? 近づないでぇ」
気がついた時には、ソフトエナメルストッキングに包まれた太股に吸い寄せられていた。
さらに頬を擦りつけ、猫のように四つん這いになっているではないか。
ーーまあこれは男性に生まれたさがだな。
「何にラブラブオーラ漂わせてるのよ。このバカップル!?」
「何よ」
湯気が出るほど顔を真っ赤し、怒りを露わにする理沙に向かって妹は平然と態度で。
「実はその服。
体温が上がる、と溶けるみたいなんですよ。
だからあまり興奮しないほうがいいですよ、ヒメちゃん」
「ちょっと……そういうことは、もう少し早くいいなさいよ」
鋭くツッコミを入れる。
叫んでいるうちに服は、すでに溶けだしていた。
「きゃあっ! こっちを見ないでぇ……イヤァアア」
耳をまで真っ赤に染め、胸と股間を手で隠し、叫び声を上げ。
理沙は俺のエロい視線からカラダを隠すように、しゃがみこんでしまう。
ーーああ、まるで亀のようだ。
「ううぅ……恥ずかしいよぅ~顔も熱いよぅ」
恥じらうように頬を染め。
より赤く肌を上気させ。
服がますます溶けていき。
普段からは考えられないほどの色気を漂わせながら、ペタペタと自分の頬に手を当てて、必死に火照りを冷ますしぐさが、これまたカワイらしく。
うっすらと涙がにじんだ瞳で、まっすぐに俺を見つめてきて
「うぇぇぇ……グスグス…………」
ーー泣きだしたではないか?
「お兄ちゃんがみさかいのないド変態だということは、よくわかりました」
その場の空気が凍りつき、身体中の筋肉が、こわばっていくのがわかる。
ーーヤバイ、ヤバイ、ヤバイぞ
「最低です。
見損ないました」
俺は……妹の目に宿った侮蔑の光に絶望を禁じ得なかった。
「そんな破廉恥な人間だったなんて。
もういっそのこと死んでください。
お兄ちゃんのバカ――――」
ぐっと拳を握っており、肩に力が入っていて、間近に来たかと思ったら。
妹にスパンキングされた。
「女の子ことは違う『キュッと引き締まった硬いお尻』。イイっ。とてもいいわぁ。お兄ちゃんぁああ」
俺の貧相なお尻を、彼女の愛らしい手のひらで、何度も何度も叩かれ
「なんでスパンキングなんだ」
当然の疑問をぶつけると
「だってお兄ちゃんは『変態さん』だから。
こういうの好きでしょ」
「それは誤情報だ」
「もうお兄ちゃんたら、相変わらずの照れ屋さんなんだから」
「全然照れてなし。
本当に痛いだけだから、お願いこれ以上、俺の貧相なお尻を叩かないで」
「ええっ! 棒鞭を所望ですか?
ずいぶんな変態さんです、お兄ちゃんわ」
「一言もそんなこと言ってないだろう」
しかし取り付く暇もなく、制裁と言う名の拳をうけることなる。
「死ねっ! 変態!? 女の敵めっ」
理沙の鋭い蹴りが跳んできた。
「ぐっ……はぁ……バタン……」
「お、お兄ちゃんぁぁああああっ」
耳をつんざくような悲鳴が貫く。
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