第26話 夏の学祭では『エスニック喫茶』をやることになった。
翌日のホームルームで話し合った結果。
夏の学祭では『エスニック喫茶』をやることになった。
姫川さんは『アイヌの民族衣装・チカラカラペ』で、斎藤さんは『和洋折衷の着物ドレス』で、井上さん『チャイナドレス』の衣装でウエイトレスをやることが決まった。
ちなみに俺は『材料の買い出し班』の『荷物持ち』だ。
もう文化祭まで時間がないため、さっそく放課後から『エスニック喫茶』の準備が始められた。
朝のホームルームで方針は決まっているので、あとは具体的な作業の指示とスケジュール管理は、理沙が行っている。
相変わらず完璧な統率力だな。
メニュー作りは『調理部』に、衣装は『手芸部』に発注してあるので、残りは教室の飾りつけだ。
「エスニック喫茶っていうくらいだから、モロッコやペルシャやトルコで使われた伝統な模様も再現したよな」
知人の木村が意見を述べる。
「そうよねぇ。衣装だけじゃなく、カーテンや絨毯もテーブルクロスにいたるまで、全てエスニックなモノにしたいわよね」
発案者の理沙も同意の声を上げた。
「お父様に相談してみるわ」
「貿易商人だけ、お願いできるかな」」
続いて斎藤さんが声を上げ、それに木村が答える。
もはや高校の文化祭とは思えないほどレベル高い話し合いが繰り広げられていた。
「姫川さん、こっちの提出書類は、これでいいのかしら?」
女子生徒Aが理沙に質問する。
「えっ、ああっ!? ちょっと待ってねぇ……ええと、うん、これで大丈夫よぉ」
今日中に生徒会に提出しなくてはならない書類のようだな。
その他にも教室の掃除など、やらなければいけない仕事は腐るほどある。
スペースを確保するために机や椅子を空き教室へと運び終えると。
「神村君に姫川さん、申し訳ないだけど、あとはよろしくね。お先に失礼します」
「さようなら、井上さん」
「彩ちゃんもバイト頑張ってねぇ」
今、教室に残っているのは、俺と姫川さんの二人だけだ。
今日はあらかじめ延長届を提出してあるため、普段よりも一時間遅くまで校内に残れることになっていた。
他のクラスは通常通りの下校時刻のため、校内に残っている生徒は、おそらく俺たちだけだな。
「隣のクラスは、劇をやるみたいだね」
「へぇ~そうなんだ。演目とか? わかるか」
「確か『シンデレラ』だったかしら」
「ザ・高校の学祭って、感じだな」
「他には、お化け屋敷とか、クイズ大会とか、宝探しゲームなんかもあって、今から当日が楽しみだわ」
「姫川さん、俺たちもそろそろ帰らないか? もうクタクタだよ」
「お疲れ様。龍一は先に帰っていいわよ」
パイプ椅子から立ち上がり、俺の鞄を手渡してきた。
「何でも一人でやろうとするは、姫川さんの悪い癖だぞ」
「でも私が言い出したことだから」
「なら、俺も手伝うよ」
「ありがとう、龍一」
姫川さんはいつものように大胆に脚を組む。
自分の脚線美に自信があるからこその座り方だ。
足元に鞄を置き、俺も席につき。
生徒会へと提出書類を2人でまとめ上げていく。
「学祭もいいけど……やっぱり『球技大会』もやりたかった。
女子バレー見たかったな」
「どうせ、ブルマ姿が見たかったとか。
そんな不純な動機でしょう」
「バレー選手には、ぜひともブルマを履いて欲しいと想っているのは事実だから、否定はできないけど……。
でもブルマが一番似合うスポーツ競技だと思うんだよな。
だから俺は断然『体操服の裾をブルマの中に入れる派』だ。
下半身が隠れてる方がいろいろと想像がかき立てらてるし、そこから覗くブルマがまたいいとか、支持する奴らもいるが邪道もいいところだぜ。
いまやブルマは迫害され、この日本では絶滅危機に瀕しているわけだけどな……もともとは、女性解放論に基づく『革命』だったんだよな。
女性が女性のために考え出した、実に素晴らしいユニフォームなんだよ」
「口を開けば『ブルマ』の話ばかり。
私はブルマ教の信者ではないし、入信するつもりもないわぁ」
波打ちながら腰まで流れる、長い金色の髪。
陶器のように白い肌。
すべてが絶妙なバランスで配置された、綺麗な顔。
椅子に座って腕組みする彼女は、口こそ笑っているものの、目は欠片も笑っていない。
背筋を強烈な悪寒が走り抜ける。
「でも好きだろう、ブルマ」
何の迷いもなく言うと、彼女は頬赤らめ、そっぽを向きながら
「そうねぇ、嫌いじゃないわよぉ。
短パンよりは動きやすいし、フィット感がまったく違うし、空気抵抗を受けないという利点もあるわねぇ」
何だか妙に恥ずかしそうに、ミニスカートから覗く太ももをそれとなく擦り合わせて、吊り上がっていた理沙の目尻がふっと緩んだ。
「一度でも履いたことがあるヒトなら、この気持ちをわかってもらえると思うんだけどねぇ」
「それだけ機能性に優れているのに、どうして普及しないのかな」
理沙は、月みたいに神秘的な
制服の上からでもはっきりとわかる上品な膨らみに手を当てて
「デザインが古臭いのと、龍一みたいな変態がいるからじゃないかしら。
ブルマ姿のまま四つん這いになって体育館を雑巾掛けを強要されたり、ストレッチの時に太ももやお尻なんかを舐め回すように見られたり。
あとは考えられる理由は、AVの影響でブルマは『卑猥な服と』いう固定概念が定着ことなどあげられるわねぇ」
顔からスっと朱が引き、強張った表情で質問に答えてくれた。
「つまり変態体育教師のせいで、ブルマは廃止になったってことか」
「悲しいことだけど、否定はできないわねぇ。
ブルマに性的な魅力を感じないと言ったらウソになるしねぇ。
何度『悩殺』されそうになったことか?
特に『赤ブルマ』には、キングオブブルマの称号をあげたいぐらい大好きよぉ」
耳にかかった毛先までつややかでさらさらと美しい髪を、優雅に掻き上げながら尋ねられたので、俺はコクッとうなずき。
「なんて恐ろしい服なんだ。まさに『魔性』の服ということか」
「危険な服なのは、間違いないわねぇ。
試合相手がブルマを履いてきたら、私は興奮して集中できないまま、あっさりと負けるわねぇ」
思わせぶりに目を細めて、ふふふと笑う理沙の姿を見た俺は、学生鞄から赤ブルマを取り出し。
「ブルマ姿での『回転レシーブ』が特に好きだな。
落下スレスレのボールに向かって飛び込み、右手で拾い上げた直後に一瞬見せる……回転しながらの大開脚。
後ろから見れば、激しい動きにずり上がったブルマがお尻の溝にギュッとTバックのごとく食い込み。
下着のフリルや、プリプリとした柔らかいヒップの一部が飛び出し。
着地後に立ち上がって、ブルマを直すしぐさが好きなんだよな」
「へぇ~~~」
「そこでお願いがあるんだが、これを穿いてくれないかな」
理沙に見せつけるように、机の上にブルマを置く。
「い、嫌よぉおお」
「頼む。このとおりだ!?
俺は……どうしても理沙のブルマ姿が見たいんだよ」
片手腕立て伏せを始める。
理沙は俺の汗の匂いが、好きみたいだからな。
きっと、いい交渉材料になるはずだ。
汗が染み込んだこのワイシャツを上手く使えば……きっと理沙のブルマ姿も見られる。
なぜなら、理沙の顔がそれを如実に物語っているからだ。
++++++++++++++++++++++++
交渉の結果。
理沙はブルマを穿いてくれた。
腰から下は、股のラインをピッタリと覆うブルマは、張りのあるお尻を窮屈そうにかろうじて収めている。
「は、恥ずかしいから、そんな……マジマジと見ないで」
肉付いた下半身に軽く食い込み、どれだけ尻と腰が柔らかいのかが一目でわかった。
脂の乗ったお尻というよりは、健康的な桃尻といった感じだな。
若さ全開の弾けるような弾力感が、年頃の色香と肉づき具合をばっちり表しているな。
首元まで真っ赤に染めて、プルブルご震えているのだ。
まさに見る者の目を釘付けにせずにはいられない『完璧』な悩ましさだ。
「真っ白なポロシャツと赤ブルマの組み合わせは、最高に萌えるな」
チラリっと上目遣いで覗き込んでくる理沙の顔は、怯えた子猫のようでとても愛くるしく。もっともっとイジメたくなってしまった。
俺は……ポケットからスマホを取り出し、写真を撮る。
最高の一枚が撮れたな。
やっぱり姫川さんは、とびぬけて美少女だと思うな。
「許可なく写真を撮るな。
この変態野郎がぁああっ」
理沙の声が教室中に響き渡り、肉付きのいい健康的な太ももが飛び込んできた。
俺の目に映ったモノは『学校指定の上履き』だった。
高々と振り上げられた彼女の踵が眼前にあり、頭蓋骨を砕かんと言わんばかりの勢いとスピードで、俺との身長差を補うためか、渾身の垂直ジャンプ付きだ。
いわば『ジャンピング踵落とし』というヤツだ。
「何、避けてるのよぉ!? ば、バカぁああ」
続いて、必殺の回し蹴りが飛んできた。
「ぐはぁっ!?」
わき腹に凄まじい痛みが走る。
「ごめんねぇ、龍一。
つい脚が出ちゃった。
あまりにもキモチワルイ顔をするから」
「無断で写真を撮ったのは悪かったけど……なにも蹴ることないだろう」
「だからごめんって、謝ったじゃない。
龍一じゃなかったら、捻り殺していたわよ。
こんな恥ずかしい姿……」
姫川さんは悲し気にうつむき、頬を伝う涙を見た瞬間、俺は……。
「わ、わかった……もういい!?
この話はもう終わりだ」
「じゃあ、もう着替えてもいいわよね」
部屋を追い出されてしまう。
++++++++++++++++++++++++
雑務を終え、校舎の外に出ると、あたりはすっかり暮れていた。
暗い夜道を姫川さんと肩を並べてゆっくりと歩いていく。
通学路には、ほとんど人影もない。
並んで歩いていると、時おり2人の腕が触れ合う。
こういうロマンチックな夜は、久々だった。
最近は文化祭の準備やバイトが忙しくて、なかなか一緒に帰れてなかったからだ。
ひとときの幸せを噛み締め、姫川さんを家まで送り届けると、俺は帰路に着いた。
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