第30話 明かされる真実・黒幕登場!?
「私がミスコンに参加した理由は、皆様に紹介したいヒトがいるからです」
聞くだけで身が引き締まるような涼やかな声と共に、年齢に似つかわしくない威厳と気品を見るモノに感じさせ。
「皆様も既にご存知かと思いますが、その方とお付き合いさせて頂いております。
その男性の名前は『神村 龍一』さんです」
「えっ!?」
辺り一面にどよめきの声が広がり、ショックのあまり真っ白な姿になって、口からエクトプラズマを吐き出している多数いた。
一番驚いたのは、俺だった。
事前に何も聞かされていなかったからだ。
「きゃあ!? モノは投げないでください。落ち着いてください」
悲痛な叫び声を上げ、姫川さんはその場にカクンとしゃがみ込んでしまう。
完全に血の気が引いているようにも見える。
ヒトの悪意とは、これほどまでに恐ろしいモノだった思いしなかった。
進行役の実行委員もフォローできずに固まってしまっている。
――助けなきゃ。
その光景を目にした瞬間。
俺の身体は勝手に動いていた。
おそらく彼女のファンクラブのメンバーであろう人達を、強引に掻き分けて、ステージによじ登る。
「えっ! りゅ、りゅういち……?」
目に見えて動揺している彼女が俺のことに気付くと、そのキレイな金色の瞳を丸くした。
俺は、他の生徒からの視線を少しでも遮るために『壁』になった。
「りゅういち。あ、ありがとぉ~」
ドレスの前を両手で掻きあわせ、とても弱々しい声で……ちょっと涙目になっていた。
「姫のピンチに駆けつけ、結ばれるのは、騎士の本懐ですから。お約束ですから」
彼女のキモチを落ち着けるために冗談めかした口調で叫び。
俺は姫に絶対の忠誠を誓う騎士の心境で、手の甲に誓いの口づけをする。
姫川さんの手はほのかに冷たくて、滑らかで、いい匂いがした。
優しく高貴な印象の香りでありながら、胸を怪しく『ときめかせる』艶やかさも含んだ芳香だった。
とにかくこの場から離れないとまずいな。
しゃがみ込んでしまった彼女の手を取り、立たせようするが。
「あ、あれれ、可笑しいな。力が入らない、や。なんだか……こ、腰が抜けちゃった、みたい、なの?」
「助ける。俺は絶対に『理沙』のこと助けるから――――そんな悲しい顔をしないでくれ」
「い、イヤァッ!? なにこれ……」
苦しそうにカラダ中を掻きむしり。
身に纏っていたドレスは強い光を放ち、真っ白なスクール水着に黒ストッキングに再構成され。
透けるような白な肌は黒い毛で覆われ、鋭く伸びた牙に真っ赤に充血した目は、まるで獣のようだった。
「まさか……こんな結果になるなって!?
……なんて……取り返しのつかないことを……してしまったのかしら」
斎藤さんの叫び声が響き渡り。
そして体育館は、真っ白なスクール水着に黒ストッキングを身に着けた異形化した学生で溢れていた。
男女問わず『真っ白なスクール水着に黒ストッキングを身に着けた『黒い獣』になっていた。
「いったい何が起こっているんだ」
「混乱しているみたいね、神村君。
しっかりしなさい。
アナタは異能バトル学園ラブコメの主人公でしょう」
「一体、何を言ってるんだ。
厨二病はとっくの昔に卒業したんだよ」
「もしかして、本当にわからないの。
神村君って、予想以上にバカで愚かな人間だったのね。
あっ!? でも、異能バトル学園ラブコメモノって。
そういうタイプの主人公が多かったわね。
なら、仕方ないのかもしれないわね。
今、何が起きてるのか? ちゃんと説明してあげるわ」
どこか芝居がかった台詞に、立ち振る舞い。
背筋がゾッとするほどの寒気が走り。
「何度も何度も何度も姫川さんをつけ狙う性犯罪者が現れたでしょう。
彼らを差し向けていたの」
これまで一度も見せたことないような妖艶な笑みを浮かべて。
「実はアタシなんだ、てへぺろ!?」
「どうしてそんなことをしたんだよ」
「そ、それは……アタシが作った服を、姫川さんに着てほしくて……何度も何度も何度も、お願いしたんだけど……きゃあっ」
斎藤さんの悲鳴が聞こえた瞬間。
時が戻る。
イヤ、違うな……これは『事象の反転』だ。
攻撃を受けた後の方が、肌のハリやツヤが格段に良くなっている。
まるで産まれたての赤ちゃんのような肌だ。
「斎藤さん、その力は……」
「自分だけが特別な力を行使できるのだと、そう思っているなら。
それはとても傲慢な考え方よ。
アタシが神さまから与えられた能力は『憑依』。
この世に未練を残したまま死んでいた亡者(ド変態)たちを『衣服』に憑依することができるのよ。
さらに憑依した衣服を着た者を、意のままに操ることだってできるんだから、スゴイでしょう。
そして今、アタシに憑依しているのは『ドM女性』よ。
だから攻撃を受ければ受けるほど、細胞が活性化して、自然治癒力が高まるのも……」
異形化した生徒たちが一斉に襲いかかってきた。
伸びた10本の爪で連続攻撃をしてきた。
「どうやら、悠長に話している場合じゃないみたいだな」
だが所詮はケモノ。
その動きは単調で読みやすい。
俺は素早く背後に回り込み、淫気を吸い取る。
「で、結局のところ。
何が原因でコイツらは、異形化した上に攻撃してくるんだよ」
「それを話すのには、まず姫川さんの能力について説明しなければならないわ。
姫川さんの能力はズバリ『強化』。
身体能力の向上はもちろん、記憶力や五感、ありとあらゆる感情を増幅させることができます。
この『黒いケモノ』は、姫川さんの力によって『負の感情が増幅された』結果だと推測できます」
「つまり、体育館を埋め尽くすほどいる生徒の『悪意』に触れたことがっ!?
この事態を引き起こした、最大の要因ということでいいんだな」
「ええ、その通りよ。
理解が早くて助かるわ。
だからアナタの能力を使って、姫川さんを正気に戻すことさえできれば……。
次から次へと……」
そう――この時もきっと、考えるよりも先に、身体が動いていたんだと思う。
どうやら俺の能力は『喜怒哀楽』と言った、様々な感情を吸い取る能力だったみたいだな。
姫川さんを通して色々な感情が俺の中に流れ込んできた。
怒り、恨み、
それと同時に、どれだけ姫川さんが全校生徒から慕われていたのかも伝わってきた。
周囲のバケモノどもが向けるねちっこい視線から彼女をナイト然として庇いつつ、俺は彼女の背中と膝裏に両手を伸ばして――――
「おりゃぁっ!」
「えっ!」
そのまま自分よりの身長よりも小さく、可愛らしい彼女を軽々と持ち上げる。
まさにそれはお姫様抱っこ。
直後、あまりの展開に唖然としていた観客席から――――おおおぉぉおおぉぉっ!
歓声があがる。
姫川さんが正気を取り戻したことで、事態は収束したみたいだな。
「美男、美女って感じで絵になるわよねえ、あのお二人。本当にお似合いだわ」
「だって、あの理沙様が!? 一目置かれている方ですもの。ただ者ではありませんわ」
「ええ、そうですわね」
事実、周囲からは好奇の眼差しが向けられ。
はしゃぐ声には
からかわれているのだと疑う気持ちを打ち消した。
俺はそのどよめきのなか、軽快なステップでミスコン会場を後にする。
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