第9話 でも今日の姫川さんはどこかおかしい、いつもと違う。
でも今日の姫川さんはどこかおかしい、いつもと違う。
何か得体の知れないモノに怯えているようにも見えた。
「登校してすぐに、女子更衣室に向かったみたいだけど。
姫川さんって、何の部活にも所属してなかったわよね」
「それで私たち、ちょっと気になって。
女子更衣室の中を調べてみたんだよね」
「そしたら、こんなもの見つけたんだよね」
「コレって『スパイ映画』なんかによく登場する『高性能な小型カメラ』だよねぇ。
まさか? 私たちの着替えを盗撮するつもりだったの?」
どこにでもいそうなギャル系女子たちの声が響く。
毛量のありすぎる人工的なまつげに、濃すぎるメイク。
明るい巻き髪と派手なネイル。
少しセクシーにアレンジされた制服を身に着けていた。
ブレザーの前を開け、ブラウスのボタンも二つ外し。
ミニスカートは、限界に挑戦するかのように丈が短くて、たいぶ着崩した格好だな。
あと金色のブレスレットが特徴的で、今時の女子高生を絵に描いたような、一番苦手なタイプだけど……どうしても黙っていることができず。
「オマエらが日頃から姫川さんのことをよく思ってないのは、知ってるんだぞ。
なんせ、俺の趣味は『人間観察』だからな。
オマエらが考えそうなことなんて、全てお見通しだ。
男に色目を使うしか能がないビッチどもめっ」
「び、ビッチですって!?
これほどの侮辱を受けたのは、始めてです」
「私たちをあんな下品な連中と同類……ふざけたことを言わないでください」
「男をたぶらかし、夜な夜なみだらな行為に及んでいるのは、姫川さんの方でしょう。みんな、あの女に騙されているのよ」
怒り狂っている彼女たちの背後に回り込み、素早く背中に触れ、淫気を吸いこみ。
忘れずにカメラも回収してから、姫川さんの右手を引っ張り、教室から連れ出す。
しばらくすれば事態も沈静化するだろう。
空き教室。
「また助けてもらっちゃったねぇ。
やっぱり神村君は優しいヒトだね」
「ヒトとして当然のことをしただけだ。
別にお礼を言われるようなことはしていない」
「そういうぶっきらぼうなところ私、嫌いじゃないよ」
「姫川さんは誰に対しても優しいよな。
こんな俺にも優しく接してくれるもんな。
姫川さんが誰かとケンカしているところなんて一度も見たことないもんな」
「べつに私はそこまで、できた人間じゃないわよ。
神村君の方が私よりもずっと『優しい人間だと思うわ』
しばらく姫川さんと話しをした後。
教室に戻ると、女子からも男子からも白い目で見られ。
さらに淫気を大量に吸った副作用で、間違えて女子更衣室に入ってしまうラッキースケベまで発生した。
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築24年。
風呂とトイレと洗面所付きで、家賃がなんと『2万5000』のわけあり、アパートの一室を借りて、俺は暮らしている。
1階は共用スペースになっていて、洗濯や料理なども日常生活に必要なことは、行うことが出来るが……利用したことがない。
またマッサージチェアなどの『リラクセーション設備』も整っているとか。
そして2階が住居になっている。
1部屋の広さは6畳ぐらいで、一人暮らし用の小さな冷蔵庫と勉強机と、簡素なベッドがあるだけで他には何もない。
衣服はベッドの下に収納し。
洗濯は近くのコインランドリーで済ませ。
食事はだいたい近くスーパーで『お惣菜』を買っている。
主な収入源は、月8万の親からの仕送りだ。
そんな貧乏人の楽しみは、ワゴンセール買った『漫画』や『小説』を読むことと『妄想日記』を書くことだけだった。
鞄を床に置き。
購入した某ライトノベルを読み始める。
切りのいいところまで読むと、今度は鞄からノートを取り出そうとしたら……。
アレ? アレアレ『ない』ぞ。
鞄をひっくりかえして、探してみたが……見つからなかった。
まさか? 落したのか?
ヤバイ、ヤバイぞ。
一体どこで、落としだんだ。
よし。
落ち着いて、思い出すんだ。
すぅ~はぁ~すぅ~はぁ。
え~と考えられるのは、やっぱり学校か? それ以外考えられないな。
誰かに見つかる前に、回収しないとまずいな。
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