第28話 三人の登場人物、最初で最後の一人
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三人の登場人物、最初で最後の一人は「
もう今更断ることも無いと思いますが僕の二つ下でまだ中学校に通う年齢だというのに、例に漏れず彼も作家で――C.H.K.患者でした。
一応彼の書いてるジャンルは児童書で名義は「ひとりあまた」だそうです。
僕なんかは児童書とライトノベルの違いも、なぜ作者名を平仮名にしがちなのかすら分からないくらいですから、そのことについて特に語ることも無いんですが――代表作すら知りませんし――まあ案外違いはそこなのかも知れませんね。
漢字と横文字が多いのがラノベで平仮名が多いのが児童書、と――分類学とかの権威とかの前でそう言ったらぶん殴られそうですね。
ま、
語呂はいいんですけどね。
例によって今の会話で大体
チラリ、と触れましたがさっきのって男子トイレの個室の越しの会話なんですよね。
今思えば僕も隣の個室に入る必要ありませんでしたね、あ、いや、ふと今思っただけですけど。
「独り」
まあ「
その程度は面と向かって会話が成立出来ないほど、他人の存在を視認してしまうと体の震えが止まらないだとかで彼は
だから僕との会話もトイレの壁越しで行われたというわけです。
その人見知りの程度で言えば間違いなく日常生活で支障があるレベル――既知の
本当に誰とも人と目を合わせられないどころか歩みを合わせられない奴なんかができる仕事は、作家くらいしかないんでしょうから、彼に物書きの才能があって良かったと思います――すごい上から目線で言いますけど。
それほどまで重度の人間不信の
人間嫌いというより人間関係が嫌いなタイプ、だそうです。
目を合わせれば辿々しく、何を言ってるのかさえ覚束ない会話も、壁を一枚挟めば彼は誰よりも雄弁に語ってくれた、っていうのは先述の通りです。
いやはや、逆に僕を犯人扱いするだなんて大胆不敵というかなんというか。
その辺差し引いても、同年代ということもあり、また先の二人が話が出来ない大人と、話したくない大人だったので、一番意思の疎通が出来たんじゃないのかなあ、とは思います。
土台「人を殺してもいいよ」なんてメールに乗るやつと話が合うはずもないんですけどね。
それなりに、強いていうならば、という意味です。
C.H.K.患者である
だって
彼らだって心の底から本心で人を殺したいわけでは無かったはずです。
しかし、自分には秘された殺人衝動があるらしい。
それは頑として排さなけれならない。
しかし、その為には人を殺さなくてはならない。
けれど、人を殺したいわけではない、殺したくない。
だがしかし人を殺さない為には人を殺すしかない。
それでも……
と、そんな無益で無意味な堂々巡り。
こう言っちゃなんですが彼らの気持ちは分かりませんが彼らの苦悩は僕には案外分かるんですよね。
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