第74話「そのツラをぉぉおお!!」
───表、出ろやぁああああ!!!
パパパパパパパッパパパパパパパッパパパパパパパパッパパパパパパッパ!!
「ひぃぃぃぃいい!?」
そのまま、腕を広げるようにして乱射すると、まるでミシンで縫うように壁にボコボコと穴が開いていく。
きっちり後ろまで腕を振り抜き、360度全方位に射撃し、部屋全体を銃撃で輪切りにしたナセル。
「な、なんななんな、なに?! な、なによぉ!?」
ミシ……ギシ、ギシシ……。
それは既に死に体だった家に対するトドメの一撃となり、ついに崩壊し始める。
このままではナセルも燃える家屋と共に……。
「え? ええええええ? ちょ、ちょっとぉぉお!? な、なにか燃えてない!? あ、アンタなにしたのよ!」
なにをした、だぁ?
………………はッ!!!
「───これからするんだよぉぉぉおお!」
ドカッ!
「えぶッ──!!」
アリシアを壁に向かって思いっきり蹴り飛ばし、そこに目がけてMP40を構えると、
「前々から言いたかったんだがな──……」
ジャキリ──!!
「家でゴロゴロしてないで、たまには外に出ろやクソアマぁぁぁああ!」
アリシア目掛けて───!
パパッパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパッパパパパ!!
「ひゃああああああ!!」
殺さねぇ、そう簡単に殺すかよぉぉぉ!!
ナセルが狙ったのは、壁にぶち当たる寸前のアリシア。
その身体が当たるであろうギリギリの所を狙って──────!
壁に目掛けて、乱射ッ!
既にボロボロになっていたそれはナセルの連射によって、ちょうどよく人型に穴が開く。
そして、その穴によって脆くなった壁にアリシアは叩きつけられると、
「あべしッ!」
バガァァァン! と、人型に穴のあいた壁の向こうにすっ飛んでいった。
(ふん……)
ガシャン……弾切れのMP40を捨て、剣と
直後────ドォォォオオオン……!
と、燃えるナセル達の家が崩れ落ちた。
あとはただ、バチバチと燻る日が燃え続けるのみ。
そして、目の前には失禁したアリシアがガクガク震えながらナセルを見ている。
いや、そればかりではない。
アリシアは、現在の状況が全く掴めていないのだろう。
家は倒壊し、キョロキョロ見回す彼女の目に映る王都の姿は一変している。
いつも視界に映るはずの、王城と教会はどこにも見えない。
代わりにそれらがあった場所から濛々と黒煙が噴き出しているのだ。
「な……ななな、何が起こっているの?」
「王国終了のお知らせ中だ」
興味なさげに、ナセルはぶっきら棒に答えると、
「さぁ、続きをしようかアリシア────」
「ふ、」
ふ?
「───ふっざけんなぁぁぁあ!!」
バシャと握り込んでいた土を顔に投げられる。
────く。
「相手にしてられるか、このイカレ異端者が!!」
そういうが早いか、どこにそんな力を残していたのか昆虫の様な動きで立ち上がると猛然とダッシュ。
速い──────!
「ばーーーーーーーーか、間抜けな元夫さん! 王都にアンタの味方なんて一人もいな、───はぶぁぁあ」
ガンッ!
アリシアが走り抜けようとしたその先に、多数の人影が────。
黒衣の軍勢。
「だ、誰よ……あんたら! あ、ちょっと、ねぇ!」
わけも分からずドイツ軍に縋りつこうとするアリシアだが、……ドイツ軍が話を聞くはずもなく。
「ちょ、ちょっと何よアンタら! あそこに、あそこに異端者が!! ねぇってば!」
筋骨隆々のドイツ軍下士官に縋りつき、ガックンガックンと揺らして懇願するも、彼らが耳を貸すものか。
「誰が、『元』夫だ? あ゛?」
いつ、
どこで、
誰と誰が、
……さっきも言ったけどなぁ、
「────お前と離縁した覚えはない」
「うるさい!! お前なんか、私の人生の汚点だ──あべしッ」
聞くに堪えない罵声を止めたのはドイツ軍。
縋りついていたアリシアをゴミの様に放り出すと、ナセルの足元に突き出す。
触れられるのも御免だとばかりに、パンパンと埃を落とす彼らを見て、済まなさそうに頭を掻くナセル。
「アリシア……」
そっと、優し気に手を取り体を起こしてやる。
身体に纏う薄着は既にボロボロで転がった拍子にあちこちぶつけたのか血がにじんでいる。
それでも、この妻は美しかった……。
なるほど、ナセルやコージが愛した理由もわかるというもの。
だが、中身はドブのヘドロより汚い。
「いづづづづ……、さ、触るなぁぁあ!」
ナセルの手を払いのけると、気丈にも距離を取ってファイティングポーズ。
まだまだやる気らしい。
「アリシア……。話がある───」
「──うるっせぇ!! 私にはない!! 私に触るな! 寄るな! お前と話なんかない! 消えろ、消えてなくなれ、異端者ぁぁあ!」
このクソアマ……。
外に出れば誰かが助けてくれると信じて疑っていないらしい。
───まぁいい。
「お前はまだ現実が見えていないらしい。そして、俺もまだまだ甘いらしい」
「そうだよ! テメぇは甘ちゃんさ! チョロいったらない。……コージみたく逞しくもなければ、」
くけけけけ、と醜く笑うアリシア。
これがあの清楚だったころのアリシアだったとは、想像もつかない。
「
ゲラゲラと歯が折れ、そして鼻血を垂らしながら笑うその姿。
醜悪極まりないのに、ある意味で最も美しく輝くアリシアその人……。
あぁ、甘っちょろくも、こんな女を今でも愛しているのだ……。
───俺は大馬鹿だ。
「お粗末で悪かったな。コージのはそんなによかったか?」
「そうよ~! 凄いんだからッ! アンタと比べたら、レイピアとクレイモアくらいに違うわよぉ!」
あーーーーーはっはっはっはっはっは!
こんな状況でも大笑い。
信じられんクソアマだ。
「はははははは……レイピアときたもんだ。あはははははははは!」
『『『HAHAHAHAHAHAHAHAHAHA』』』
おう、ドイツ軍諸君よ、そういうときは笑っちゃうのね。いいけど……。
「そうかそうかそうか……アリシアは、デっカいのが好きか」
「もちろんよ~! うふふふふふふふふふ! コージぃぃい早く来なさいよぉぉぉお! コーーーージぃぃぃい!」
まだ、コージが来ると思っていやがる。
現実を見せてやろうじゃないか────。
「いでよ────ドイツ軍……」
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