第32話「装甲擲弾兵中隊」
ギャララララララララララ!!!
──ゴシュゥゥゥウ……。
ナセルは周囲を固める壮観な光景に胸を躍らせていた。
彼の左右には鉄の馬車こと────ドイツ軍の
その数3両。
中央のナセルが搭乗する一両に対し、僚車が二両──少し下がって後方に付き従う形で追従していた。
それらの車両はナセルの合図に従い停止。
その正面には兵隊さんのバス──ハーフトラック(タイヤと履帯を組み合わせた半装軌式車両)が独特の形状を神業のような運転技術で停車させて、戦車に向かい合う形で集合していた。
ハーフトラックは戦車3両に対して──9両。
いかにも軍用車両といった見た目で、ズラリと鼻先を並べている。
その内訳は1個小隊に3両で、それぞれの車両の前には完全武装のドイツ軍歩兵──装甲擲弾兵がビシィィ! と並ぶ。
小隊一個につき3両、3個小隊で──計9両。
兵員数は約90名弱。
軍隊換算でいえば中隊本部を欠いた一個中隊と言った程度だろうか。
その後方にも、同じようなハーフトラックタイプの車両が並ぶ。
歩兵用のそれと見た目が似ている車両で、異なる点といえば大量の鉄板や用途不明な鉄の筒などを満載していることだろうか。
こいつは工兵さんの戦うバス──工兵戦闘車両型のハーフトラックだ。
それが3両。
3両は別れて配属されており、
それぞれが歩兵一個小隊につく。
工兵戦闘車両型のハーフトラック一両に乗車する工兵は、各車両ごとに一個分隊。
そして、歩兵一個小隊に工兵一個分隊の割合で配属されていることになる。
「『魔力の泉』──こりゃ、すごいな」
バンメルから受け取った『魔力の泉』は、彼の話通りに魔力の最大値を広げて、なおかつ減耗した魔力を次々に回復させてくれる。──ちょっとアレな一品だ。
おかげでLv4相当の召喚獣を呼びだしても、まだまだ余裕があった。
『
そして、大量召喚を終えたナセルの目の前には一つの変化があった。
……今、集合報告をした召喚獣。
彼は『中隊長』という。
ナセルの呼び出していない召喚獣だった。
──当初は偶然。
ただなんとなく、『魔力の泉』の効果を確かめるべく、上昇した召喚獣Lv4に従って魔力の限界まで連続で呼び出したのだ……。
その結果が、一個中隊規模の我がドイツ軍。
愛すべき召喚獣たち──────。
Ⅳ号戦車を3両。
Lv4の歩兵を3個小隊。
Lv4の工兵を3個分隊。
そして、上空で舞い狂うメッサーシュミット1機に対して僚機を3機追加。
とにかく呼びに呼んでみた。
そう、呼んでみた!
「おいおい、『魔力の泉』──マジでやべーな」
ポツリとナセルが零すの無理はない。
Lv4相当の……──現状で最高峰の召喚獣を多数呼んでも魔力が尽きる気配がない。
いや、それどころか限界すらみえない。
さすがに呼び過ぎても制御しきれるかどうか──そう悩んでいたときに彼は現れた。
多数の歩兵を召喚した際に、自然発生した召喚魔法陣があり、そこに彼はいた。
『
ナセルの思考をぶち抜くように力強い号令が響いた。
『中隊長』の声だ。
冒険者稼業前の、かつての軍隊生活でなじんだ号令に、ナセルも自然と体を不動の姿勢に持っていく。
ピシリと背中に線が入ったように姿勢を正す。
『
ガン! ガガガンッ──と足音も頼もしく、キビキビとした動作。
やや崩れた縦列を作っていたドイツ軍が『中隊長』の号令に従い列を整える。
最右翼に第1小隊。
中央に第2、左翼に第3小隊と並ぶ。
整列を終えた部隊から数歩進んだ位置に、一人立つのは『中隊長』。
ナセルの戦車から離れた位置に、キチッと整列して見せる。
その間、一分もかかっていない。
……はやい。
そして、全員が『中隊長』の号令に従う間、銃の先端や中ほどを握り右脇に並行して保持している。
号令の最中、銃床は地面に着けずに浮かせているらしい。
『
号令を端に、ガガガガガガガン!! と一斉に降ろされる銃床の音。
これがナセルの軍隊。
愛しい召喚獣たち──。
チラっと視線を投げると『中隊長』が頷き返す。
『
バババッ!!
バン! と全員が頭をやや上に持ち上げ、ナセルを注視する。
上位の指揮官に対する敬礼としては最適解だ!
ナセルもその敬礼に答えるように、彼等がよくやる右腕を折り曲げ右手を翳す方法で答礼した。
一糸乱れぬその動作。
──何とも言えない、軍隊的な「
その間、ほんの数秒。
彼等の意思の強い視線を一心にうけ──スパッとナセルが手を降ろすと同時に、
『
バババッ!!
ズサンと頭を元の位置に戻すと、『中隊長』も手を下げ、直立不動の姿勢。
『
ザザザザン!
片足を前に出すドイツ式休めだ。
これがナセルの新しい召喚獣──Lv4。
装甲擲弾兵中隊だ!
──グゥゥオオオオオオオオオオオオン!!!
まるで閲兵式。
トリを飾るように、超低空をLv3召喚獣であるメッサーシュミットBF109Gの
ふふふふふふふふふふ……。
ドイツ軍────、
「いいじゃないかッ」
もはや、隠すこともなく──ナセルは上半身を剥き出しにし、淡く輝く呪員を明け透けにしていた。
キラリと輝く『魔力の泉』がそこに彩りを与える。
『ド&%$』
──ド&%$。
あぁ、我が『ドイツ軍』よ!
すぅぅうう……、
「──容赦の時は過ぎた! 彼等に情けは必要か?!」
『『『
「──手加減は必要なりや!?」
『『『
「──ならば、必要なことは!!??」
『『『
「そうだ! 殲滅だ! 丁寧に、優しく、決め細やかに、殲滅しようじゃないか! ──さぁ、行くぞ!」
そうとも、
「──王国終了の時だ!」
ズバァ──! と、空を切るように右手を振るう。
「俺のドラゴンを奪い、家族を殺し、肉親を拐い、愛しき無実の
──報復だ!!!!!!!
『『『
フラァァァァァァァアアアアアアアア!!!
ドイツ軍とナセルの熱狂がシンクロする。
敵を滅せよと……、
王国を、
勇者を討てと──────!!
すぅぅうう……、
「
『『『
『
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