第24話「それがテメェの十字架だッ!」



 ――さぁって、お楽しみの時間はここからだ!


「や、やめ……」

 ブルブルと震えだす神官長。


 だが、


「やめるわけねぇだろう!」

「ひぃ! やめろ、わ、私が悪かった!」


 聞く耳────持たぁぁん!


 おらぁぁぁぁぁぁぁ!


 MP40を棍棒のように構えると、腰をいれて猛然とフルスイングッッ!

 ゴキィィィィィィィン!!! と顔面に、さらに一発追撃を追加。


「ゲブッッッ! ブブブブブ…………だ、だの゛む゛、や゛め゛でぇぇ!」



 聞きませ~ん。



 あ、そ~~れ! ──もぉぉう、一発ッ!


 ガッキィィン! 金属の銃身でブッ叩くように神官長の顔面にさらに一発。

 ポコ~ン! と弾け飛んだのは神官長の歯らしい。


「エビュぅ……ゆ、ゆるして……。ッッ! そ、そうだ! い、異端者の扱いを取り消すから! な!」


 …………。


「ど、どうだ、良い話だろう!? アナタの名誉は回復するし、……そうだ! 勇者の不貞も私が証言しよう! な、どうですか!?」


 …………。


「はっはっは。神官長~」


 ポンポンポンと、肩を叩いてやる。かる~く、優し気に。


「う、うん。いい話でしょう? だから──」

「──今さら聞くわけねぇぇぇぇぇぇえだろうが!!」


 ボォキィィィィィィィィイイイン──!!! 


 大上段に構えたMP40をぶっ壊れても構わないとばかりに、思いっきり振りあげて──────振り抜くッッ!! 


「はぶぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!」


 前歯を全てへし折られ、鼻が陥没した神官長。

 ドクドクと色んな穴から血を吹き出している。


 うわ……まぁぁぁた、漏らしてるし。


「ぅぅぅぎゃああああああ!! あぶぶぶ……て、てめぇぇぇぇええ! 覚えてろぉぉぉぉ!」

 

 ゲホゲホと血を吐く神官長に、


 あ゛!?


 覚えてろだ…………?


 ……ハッ!!!!


 誰が……、

「だ・れ・が・忘れるかッぁぁああ!!」


「ひぃぃぃぃぃぃぃ!!??」


 ナセルの憤怒の表情に怯えて、ジョバァァァァと失禁。

 きったねー。


 だけど、まだまだ……。

 まだまだ、まだまだ────まだまだぁぁぁぁぁ!!!


 ユラ~~~リと、肩を回したナセルは、

「……で、よ~。な~にが異端者の取り扱いを消すだ。……──あのよぉ?」


 ガシリと神官長の頭を掴んで起こすと、


「──今のお前にぃぃ、何の権力があると思ってんだぁぁぁぁ!!」


 頭を掴んだまま、自分も倒れ込むように、「ヒッ!! や、やめ!!」────思いっきり! 地面に叩きつけたッ!!!


 おおよそ人の出す音ではない打撃の音……。


 ズガァァァァァァンッッッッ!!!! と地響きが起こった気さえした。



「うぐぐぐぐぐぐ……」



 口から血の泡を吐く神官長。


 それを見るともなしに見て──、

「さぁって、仕上げと行こうか」


 ニィィィと、凶悪に笑うナセル。

 それを近くで見ていた拷問官は、ブクブクとマスクの隙間から泡を吹いている。

 だが、容赦のない瞳は拷問官を居抜く。


「ぅひぃぃぃいいい……!?」

「よぉ。……そいつを押さえろ」

 有無を言わさぬナセルの言葉。


 コクコクコクコクコクコク!!


 壊れた人形の様に頭を振ると、

 拷問官はゴキブリのようにシャカシャカと動いて、その勤勉さと手慣れた様を見せつけるように、


「あ、アナタ!? ────いづっづづぅ!!」


 ガシリと間接を決めるように、神官長を拘束して見せた。


「よしよし……動くなよ? こいつぁぁぁ、とっておきだぜ?」


 ジャラン♪ と飾りを鳴らしながら、

 神官長の使っていた錫杖を取り出す。


 チリチリチリ……。


 今の今まで、連続射撃で熱された20mm機関砲の銃口に突っ込んでいたので、熱が錫杖に移り──真っ赤に焼けていた。


「あちち……こりゃ火傷するぞー♪」


 ナセルの手に伝わる熱からも、相当な温度になっていると分かる。


「な、なにを! その杖は神聖な物で──────」


 じゅうううう……!


「ぎゃあああああああああああ!!!」


 神聖なそれをナセルは躊躇いなく神官長の胸に押し付ける。

 それはボロボロになった服を焼き焦がし隠れていた皮膚をジュウジュウと焼いていく。



「あああああああああああ!!!!」

「うわ、くっせ~」


 じゅううううううう────!!!


 ジタバタジタバタ!!!


 だが、ちょっと押し付けただけで済ますはずがない。


「前に使ってくれたような、専用の機材じゃないからな──ちょ~~っと時間がかかるぜ」


 そうだ。

 この痛み、

 この熱さ、

 この屈辱────!!



「ああああああづい! あづい!! やめろぉぉぉぉ!!」

「い、や、だ」


 ニッコリと微笑むナセル。

 それにブンブンと首を振ってイヤイヤをする神官長。


 だが、拷問官に拘束されて動けずに……──────。



 じゅううううううううう!!!!!



「──────ッッ……ァァァァァァァァァア!」



 え~っと、まずは円を描いて──!

「ま~~~る書いて♪ チョンとね♬ ッと──……」


 焼けた錫杖をグリグリと押し付けながら、神官長の胸に円を描く。

 それは実に書きにくい。


 ジタバタ暴れるし、錫杖にへばりついた皮膚が邪魔だ。


 だけど、止めません。



「────ぎゃああああああ!!」

「はい、『丸』完成~! ──次は『十字』を切るっと」


たって1♪ たって2♪ よッこ1♪ よっこ2♪ ──、」


 じゅううううう!!!


「あああああああああああああああ!!!」



 あららら…………?

 あ~~……さすがに、冷えてきたな。


 これじゃただの丸だ。


 う~む…………。


「ひ、ひぃぃぃ、ひぃぃぃ!」


 ボロボロと涙を零しているが、まだ意識を保っているとは──なかなか根性がある。


「あ、こういう時は────出でよッ『工兵分隊』!!」





 シュパァァァァアアア!!




 

 召喚魔法陣が現れ、例の荷物満載の兵士が現れる。

 ギルドマスターを仕留めるときにも手を貸してくれたドイツ軍の技術屋集団だ。


集合終わりアンゲ トレーテン!』


 一個分隊の工兵。


「ひぃぃぃぃ! ま、また増えた!!」


 その威圧感は半端ではない。


 それ以上に、ナセルの召喚術としてもかなり限界値に近いのだろうか。魔力の減少を感じて少しふらつきを覚える。


 以前の『ドラゴン召喚士』のLv並みのステータスを引き継いでいるなら、魔力はLv5~6相当はあるはず。


 だが、この一日で随分と召喚術を行使し、今はLv2とはいえ、『Ⅱ号戦車』と『歩兵小隊』、そして『工兵分隊』3つもの召喚獣を同時顕現させている。


 そりゃあ疲れるはずだ。


 だが、ここが正念場。




 なんといっても、お楽しみタイムだ!




「軍曹。棒が冷えた。熱くできないか?」

ハッヤーお任せをラスエス


 ナセルから錫杖を受け取ると持ち手の部分を防火布で覆い地面に埋める。

 熱する部分には荷物から取り出した爆薬をセットする。


「それは?」


『焼夷材です。瞬間に高温を発しますが、鉄を溶かしかねないので、量を絞りました──あとは火炎放射器で炙ります』


 そういって兵を呼び寄せると、酒樽を担いだようなゴツイ厚手の服を着込んだ容姿の兵が進み出る。


やれマ エス

了解ヤボール!』


 ホースの様なものを錫杖に向けたかと思うと────。




 ブォゴゴォォォォオオオオ!!!!




 強烈な火炎が生まれて錫杖を焼き焦がしていく。

 ムワァ! とした熱気が押し寄せるほどの膨大な熱量。


 さらに先端に持っておいた焼夷剤に引火し、目が潰れそうなくらい明るい炎が生まれる。


「ひぃぃぃぃいいいいい!!!」


 その炎に怯え切った神官長がまた放尿する。

 ホカホカと湯気の立つ様をみてもナセルの中に同情心は浮かばない。


 奴の胸にはまだ半端な異端者の焼き印しかついていないのだ。

 全然たりない。


 ナセルはジクジクと痛みと熱を覚える胸の傷をギュゥウと握りしめる……。


 ほどなくして真っ赤に焼けた錫杖が完成すると、手渡された。


「良い手際だ。……軍曹。歩兵隊の支援を頼む。死体が匂う」

了解ヤボール!』


 キビキビとした動作で工兵たちが散っていく。

 残敵掃討中の歩兵隊と合流すると、すぐさま指揮下に入る。


 あとは、効率的に──。


 火炎放射器で浄化したり、

 焼夷剤をそこらじゅうでボンボン投げて焼き尽くしている。


 それはそれは丁寧で、実に楽しそうだった。



「さって! 仕上げと行くか神官長どの!」


 

 真っ赤に焼けた錫杖を手にナセルが凶悪な笑みを浮かべる。

 それはそれは凶悪で明るくて、陰のある晴れやかな笑顔だった。


「よせ! やめろ! やめてくれ! やめてください!!」


 あ゛?


 やめろ?

 やめてくれ?

 やめてください?


 ハッ!


「………………お前は、やめなかった。ただ、それだけだ──」


 ニッコリ。






 や、


 やめろぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!!!


 ブリブリブリブリブリブリ──…………!!







 …………。



 ジュゥゥゥゥ…………──────。


「二人目────……」


 皮膚の焼ける悪臭のなか、神官長が胸に大きな焼き印を付けられた状態で気絶している。

 尿どころか脱糞に涎と鼻水でもうグチャグチャだ。


 殺してやるのは生ぬるい。

 そうとも……殺して終わりにするかっつーーの。


 ま、生きれるかどうかは知らん。

 運よく助かっても、自らが散々生み出した異端者・・・に、お前さんも成下がってしまったんだ。


 胸に教会十字────異端者マークの神官長どの。



 もう二度と元の生活に戻ることはないだろう。


 石を投げられ、蔑まれ、糞を食わされ、泥を啜って残飯を漁る生活か。

 あるいは山に籠って野盗になるか。

 腕っぷしが強ければ、魔王軍に入れるかもしれないな。


「明日から異端者生活────せいぜい気を失っている間に幸せな夢でもみるんだな……それ以外に楽しみはない」──ペッ。


 これは実体験だ。


 皮膚の焼ける悪臭に包まれる神官長を見下ろし、唾を吐き捨てる。


 こいつは、これはこれでいい。

 存分に味わうがいい。


 さて、


 次の奴も、簡単には殺さない……ナセルの味わった苦しみの何分の一でも味あわせてやらなければ気が済まない。




 全員、俺と同じ目に────いや、もっと、もっと、もっと悲惨な目に合わせてやる!








 次は────国王!!







 首を洗って待っていろ。

 

 


────────────────────

 これにて教会編終了!


 お読み頂き大感謝!

 作者としても感無量です!

 少しでも、面白いと思っていただければ、レビューいただけると幸いです!


 次章、王国反撃編

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