グッドモーニング、ハヘ子さん

作者 いっさん小牧

嘘つきは幼年期の終わり

  • ★★★ Excellent!!!

 社会がある以上、どこの集団にも「変わり者」というのは必ずいるものです。
 笑いを取るためにわざとおどけてみせたり、反抗的な態度をとってみたり、あるいはそもそも集団に属さなかったり……。
 本作品は、一般社会であれば奇異の目で見られてしまうであろう、そんな変わり者たち――「問題児」をストーリーの中心に据えた青春学園ドラマです。

 さて、「変わり者」ぞろいの学園ストーリーと言うと、かの名作『涼宮ハルヒの憂鬱』(角川書店刊)を思い出す方も少なくないかと思いますが、本作品も多分にもれず、あのテイストを濃厚に味合わせてくれます。なので、まず第一にキャラクターが濃い! 活き活きとしており、破天荒で楽しい! ここが大きな魅力です。

 全編を貫くストーリーは極めて王道かつ予定調和的です。
 なので、非常に安心感があって読みやすいといえます。むしろ比重は個々のエピソードの掘り下げにこそ振られており、それはかなり複雑な人間模様へとつながる技巧の塊として表現されています。
 音楽で例えるなら、誰もが親しみを覚えるであろうリズムとベースラインを用意したうえで、おおっと目を惹くテクニカルなギターが旋律を奏でる――という感じでしょうか。なので、口当たりの良いライトな作風にもかかわらず、読み進めるたびに心に重くのしかかるものがある……。
 いっけん矛盾しているようにも取れるこのテイストは、本編を極めて文学的な高みへといざなっており、それはそのまま読者への問いかけとして立ち現れているようにも感じました。

 そして、主題となっているのが「嘘」です。
 と言っても本編で描かれるそれは、誰かを騙すための「嘘」とはちょっと違っていて、とても心理学的な試みが取り入れられた。ひとつの思考実験です。
 適切に言い換えるならば、パーソナリティ(personality)という言葉になるでしょうか。ご存知の方も多いと思いますが、「人格」を意味する言葉です。

 これはもともとギリシャ語の「ペルソナ(仮面)」を語源とした単語ですが、現実に生きる私たちも、そのものずばり「人格」という名の仮面をかぶっていることに異を唱える方はいないでしょう。互いを尊重すればこそ、あるいは自己保身を考えるからこそ、本心を押し隠して「人格」という名の「嘘」をついているのです。それは「人間らしさ」の表れでもあるのですが……。

 本作品の最終的なストーリーは、そんな「嘘の在り方」に悩み苦しみ、そして翻弄される若者たちの生きざまに肉薄してゆきます。
 かれらがどう「嘘」に立ち向かい、最終的に何を選び取るのか? それは読んでのお楽しみ。是非、かれらの成長を見届けてほしいと強く思います。


 余談ですが、本作品には全編を通じて非常に大きな「叙述トリック」とでも言うべき仕掛けが施されています。これから読もうという方、どの時点で気づくかな? 私は最後まで気づけませんでした……(笑。

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