放浪の画家

作者 さい

放浪画家とアヒルの謎解きの旅路。

  • ★★★ Excellent!!!

 主人公はアヒルと共に放浪する錬金画家。錬金画家は絵に描いた物を実体化できる。その中でも至高の作品は、普通の絵とは違い、水にも火にも強い。アヒルも誰かの至高だったらしいのだが――。
 放浪する画家は、各地を巡り、その土地で起こった謎を解いていく。その謎解きは本格的ミステリーだ。物質的なトリックあり、論述トリックあり。主人公の頭脳にかかれば、どんな謎もたちまち解けてしまう。しかし主人公はその謎の答えを、心に秘めたまま旅立つのだった。何故なら彼の行動原理は正義感ではなく、好奇心だからだ。それに、謎の答えが常に人々を幸せにするとも限らないのだから。
 錬金画家は土地によって待遇が二つに分かれる。忌避される所と、利用される所だ。主人公の出身地は、後者のようだ。出身地から旅に出た主人公とアヒルのバディは、悠々自適に見える。しかしそんな「二人」に纏わりつき、不穏を運ぶ影が迫りくる。短編ミステリー集で、一話完結でありながら、常に「二人」に対する謎が追走しているという仕組みの作品。
 困ったことに、特に推薦する短編は見つからなかった。何故なら、どの話も秀逸で見事なトリックがあり、伏線があり、どれも推薦したい一話ばかりだったからだ。そして、短編でありながら絶妙につながっている壮大な物語だからだ。
 
 この作品に出会えて良かったです。作者様に感謝です。

 是非、是非、御一読下さい!

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