第7話 バカップル 牧剛志、朱里鮎美

勇者 牧剛志(まきたけし)、朱里鮎美(あかりあゆみ)


ステイタス

 鬱 10

 妄想 20

 散漫 5

 記憶 0

 狂 0

戦績 勇者ひとり、ダンジョン攻略


―おふたりはパーティを組んでいたのですね?

 そうそう。元の世界で付き合ってて、一緒にこっちに転生したもんだから。

―その、心中というやつで?

 そんな暗い話じゃねえんだ。事故だな。交通事故。まだ付き合いはじめたところだった。調子に乗ってスピード出し過ぎちまってさ。乗用車でトラックに突っ込んで、ふたりともお陀仏。

 そんなに明るく話すことじゃないでしょ。

 そうだな。そうだな。こっちじゃ、車なんてないしな。言ってもわかんねえか。

―あとこの、戦績の勇者ひとりっていうのは。

 えっと、なんだっけ?鮎美が書いたんだろ?

 服部健吾。わたしの元カレ。ほら、転生してすぐのころ。いたじゃない、いかにも死んだばっかりみたいな景気の悪い顔した。

 ああ、鮎美に捨てられて自殺したやつな。って、俺も同罪か。転生したばっかりで町をふらふらしていたときに見かけたんだ。俺たちまで死んでるって思わねえから気づかれなかったんだ。居酒屋に誘って。やきとりにビールで。なんでそんなことしたんだっけ。

 前世で捨てられたショックはもう受けたんだから、本当は試されただけだよってことにしたほうがショックだろって。わたしが考えたんだけどね。フッたっていうのは演技だったんだって思い込ませて、死ぬことなかったね、生きていれば元どおり幸せだったのにね、早まっちゃったねって吹き込んだの。

―それは。たしかにキツいかもしれません。

 うん。成功した。廃棄になったんだ。そのためにわたしたちが転生したって、一緒にいるって知られちゃいけなかったわけ。で、偽名で近づいた。

 三年だったか?付き合ってたんだろ。ひでえことすんよな。女は怖い。

 だって、いなくなってくれた方が憂いがなくていいじゃない。

 まあな。

―つぎのダンジョン攻略というのは?

 転生したはじめはのんびりしてたんだ。まだ付き合いはじめだったからな。ふたりでエンジョイしたかった。

 モンスターなんか出ない安全な町を探してね。景色のいいところまわったり、おいしいもの食べたり、お祭りとかパーティーにお呼ばれしたり。勇者は大切にしてくれるからね、いっぱい楽しめた。

 最後はなにかデッカイことしてえなって言ってるところにダンジョンがあるって話を聞いたもんだから。それだってなってダンジョンに出かけることにしたんだ。

 魔王を倒した人いたでしょう。あのあとから、モンスター弱くなったし、数は減ったし、だったらダンジョン攻略できるかもねって。

 やっぱ、ふたりでパーティー組んでたってのが大きいんじゃねえかな。精神的に安定すんだろ。

 わたしも、ひとりじゃモンスターと戦いたくなんかなかった。剛志をひとりで行かせるのが心配だったからだよ。

 だよな。俺ひとりだったらムチャしすぎっかんな。鮎美がブレーキ掛けてくんねえと。トラックに突っ込んでドッカーンだ。

 そういうこと、冗談のネタにしないの。

―ステイタスが安定していることからも、いいコンビだったってわかります。

 だろ。バイト先で知り合ったんだ。すぐに、俺のために生まれてきたような女だって思ったね。自信過剰気味の俺より、俺のこと高く評価してくれんだ。鮎美と一緒にいると、俺ってなんでもできる奴だって思える。どんなときでも相性抜群だし。

 わたしの作った料理メチャクチャうまいって言って食べてくれるしね。

 相性なんだよ。鮎美にしてやりてえなってことは、よろこんでくれるし。俺が望むことは、なにも言わなくても鮎美がやってくれる。な?

 なに恥ずかしいこと言ってんの。もう。やめてよ。バカップルじゃん。

―お疲れさまでした。

 おう。事故で死んだあとまで鮎美と一緒に過ごせて幸せだった。異世界に感謝。

 だからぁ。

 ふたりでミンチになって、本当にひとつになれるんだぜ?

 そういうのじゃないでしょ。バカ。

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廃棄転生者人別帳 九乃カナ @kyuno-kana

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