第261話 悪巧み成功す

「またえらく急なお話で」


 あんだけ色々ごねてたのに、変わり身早すぎるだろ。


「狂戦士と凶壁が仕切っていて、竜も神もいる村に請われてるんだ、断る理由がないだろ?」


「あの二人をえらく評価していただけているのですね」


「一度でも戦場を共にしたものなら、皆あの二人を評価するよ。敵でも見方でもね」


 うーむ、自分でも優秀な二人だと思っていたが。

 うん、他人からこう褒められるとうれしいもんだな。


「何をニヤニヤしてしている我が夫よ」


「私の顔に何か?」


「他人から自分の妻を褒められるってのは、結構うれしいと思ってな」


「な」


「!?」


 ん?


「あはははは。あの狂戦士と凶壁が、こんな年端もないような娘のような顔になるとはな。長生きってのはしてみるっもんだ」


「う、うさいぞデアトリクス」


「一言も二言も余計なのは相変わらずですね」


「無理したところで、ごまかしきれてないよ。全くこの二人がここまで女になるなんてね」


「? 二人とも元々素敵な女性たちでしたよ」


「ぶ!」


「あ、あなた!?」


「あっははははは。やめとくれよ、おかしすぎてあの世に逝っちまいそうだ」


 さすがに悪乗りしすぎたか?

 嘘はついていないし、問題ないだろ。


「戦場で蹴散らされた奴らが、今のこの二人を見たらなんていうんだろねえ」


 さあ?

 美人に蹴散らされてうれしいな、くらいか?


「さてサシチ・ヒダリ様」


「なんでしょうか? デアトリクスさん」


「あらためてあなたからの提案を受け入れさせていただきます。こんごともよろしくお願いいたします」


「わかりました、よろしくお願いいたします。今後のことはナディやレイラさんたちと調整してください」


「わかりました」


「ふん、また貴様と共に歩むことになるとはな」


「数十年ぶりですが、また一緒に頑張りましょうか」


 心なしかナディとレイラさんがうれしそうだね。

 もしかしたら戦友ってやつだったのかもな。


「ヒダリのダンナー」


「シア、いいところに来たね。あんたヒダリ様のところに嫁に行きな」


 その話、生きてたか。


「よよよっよ嫁!? デアばあ、なな、何言ってるんだよ」


「なんだい、嫌なのかい?」


「べべつに嫌って訳じゃないけど……」


「何をぶつぶつ言ってるんだい! あんたが嫌ならロナにするか」


「嫌だとは言ってないだろ! わかったよ、アタイがいくよ」


 え?


「ふん、ならごちゃごちゃ余計なことを言ってるんじゃないよ。ヒダリのダンナ、こんな娘だけどよろしく頼むよ」


 は?


「ひ、ヒダリのダンナ。い、嫌なのか? 嫌ならはっきり言ってくれ!」


「まさかうちのシアにここまで言わせて、知りませんとは言わないだろうね?」


 な!?

 は、嵌められた。


「こういうところは相変わらずですね、先生は」


『あーあ。まあ、みんなの予想通りよね』


「兄貴、あいつも強いのか?」


 ……。


「それじゃ、シアともどもよろしく頼むよ。ヒダリ様」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る