第251話 メガネ

 結構な範囲を回れたかな。

 ただそれらしき影は見当たらなかったが。


「レシアさん」


「……」


「レシアさん」


「……」


「だめたな、気絶してる」


 風も衝撃も防いでるはずなんだが。

 何が問題なんだろうな?

 後は視界か?

 そこまで防ぐなら気絶してるのとかわらないし、まあいいか。


「ん」


 お、起きるか。


「レシアさん」


「ん、んぁあ。あああああああ」


 気絶したり、奇声あげたり、なかなか忙しい人だな。


「レシアさん、大丈夫ですか」


「あ、ああ。すまないね、もう大丈夫だよ」


「それは良かった。早速なのですが、結構な範囲を飛び回ってみましたが、それらしいものは見当たりませんでした」


「……そうかい」


「108号の方から連絡は?」


「キョウジュがくれたこいつかい?」


 レシアさん、なかなかメガネが似合うね。


「どうしたんだい、ヒダリのダンナ」


「いえ、そのメガネがなかなかお似合いだなと」


「な、ば、ど」


「レシアさん、落ち着いてください」


「ひ、ヒダリのダンナが、変なこと言うからだよ!」


「変なこと? 私が何か?」


「そ、その、メガネが似合うとか……」


 レシアさん、ギャップがありすぎるな。

 姉さんタイプと見せかけて、なんか色々慣れてない感が半端ない。


 これ以上は不味いな。

 うん、なんか不味い。

 流石に俺でもわかる、これは下手すると説教コースだ。


 取りあえず、話を戻すか。


「それで、108号の方からは何か連絡がありましたか?」


「へ、ああ。特になにもないね」


 結構な広範囲に探索魔法を撒いたんだがな。

 かなり遠くまで移動しているか、全く別方向か。

 もしくは予想外の場所にいるとかか?


 駄目だ。

 手がかりが少な過ぎる。

 一度戻って、教授と作戦の練り直しだな。


「わかりました。引き続き探すにしても、手がかりが少なすぎます。とりあえず一度戻りましょう」


「わかったよ、ってまたあれなのかい?」


 あれ?

 ああ、そういうことか。


「いえ、帰り道は転移魔法ですから。という事で着きましたよ」


「……」


 気絶はしてないよな。

 今度はなんだ?


「レシアさん?」


「ん、ああ、なんでもないよ。こんなにあっさり帰って来られて、少し驚いただけさ」


 なんでもないというわりには、なんというかこう。


「楽しい時間が、急に終わってしまったので、少しがっかりされてるだけですよね」


「な!? 誰だい、あんたは!」


「ケイト、こっちに来ていたのか」


「はい、先生。分析関係なら私かなと思いまして」


 たしかに。

 ケイトなら、何か取っ掛かりを見つけてくれるかも知れない。


「助かる」


「いえ。夫が困っているときに力添えをするのは、妻として当然です」


 お、おう。

 そ、そんなもんか。

 なんか若干トゲを感じるが。


「妻!?」


「レシアさん、こちら私の村の」


「ヒダリ村長の妻、ケイト・ヒダリです。どうぞよろしくお願いいたします」


「あ、ああ。シアグラデ・レシアだ。よろしくたのむよ」


 レシアさん、なんかテンションさがったか?


「なるほど」


「ケイト?」


「いえ。それよりも108号の分析結果を確認しましたが、ちょっと不思議なところがありますね」


「不思議なところ?」


「はい。キョウジュ、地図と画像が出せますか?」


「今出しますね。これでどうですかケイトさん」


「ありがとうございます。先生、ここなのですが」


 これは……。

 空間が僅かに歪んでる?

 いや、修復が完了する寸前って感じだな。


 なるほどね。

 そりゃ中々見つからないわけだ。

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