第250話 絶叫系お姫様抱っこ(未遂?)

「ふーむ、なかなか厳しいですね」


「さすがに情報が少なすぎるか」


「そうですね、何せクジラの情報自体がほとんどありませんし。襲われた場所と逃げた方向だけでは」


「となると」


「人海戦術というか村長戦術でしょうね」


 戦術は俺か。

 どこかの有名サッカー選手かよ。


「そうなるか」


「何せ目印がわかるのがお一方しかいませんし。人を増やしたところで……申し訳ありませんが、村の方々は殲滅戦と防衛戦に特化した方々ばかりですし」


 あいつら、もの探しとか向いてなさそうだしな。

 いらない仕事が増える未来しか見えない。


「だよなあ、わかった」


 適当に飛び回って、探索用魔法を設置しまくるしかないか。


「教授、探索魔法からの情報処理は108号に任せる」


「わかりました」


「レシアさん、教授と一緒にここに残って確認作業をお願いします」


「嫌だ!」


 は?


「人様に任せて自分が座って待ってるなんて、アタイの性にあわないよ」


 いや、性にあわないって。


「ヒダリのダンナじゃなかった、ヒダリ様、アタイも連れていってくれよ」


 そんなこと言われてもな。

 教授。

 は、既に我関せずか。

 さてどう説得したもんか。


「レシアさんといいましたか、これをどうぞ」


 ?

 メガネ?


「これは?」


「108号が処理した画像情報を受信して、画像を確認できる道具です」


 教授ー!


「すまない、言っていることが難しすぎてさっぱりだ」


 ……。


「それをつけていただければ、ここにいなくても確認作業ができる道具です」


「じゃあアタイも一緒に行けるってことだね」


「そういうことです」


「ありがとうよ! えーと」


「私のことはキョウジュと」


「ありがとうよ! キョウジュ」


「いえいえ、喜んでいただけて何よりです」


 ……。

 何してくれてんだよ、教授。

 はあ、もうしょうがないか。


 えーと、両腕にパーカーをかけてっと。


「レシアさん、失礼します」


「は? ヒダリのダンナじゃなくてヒダリしゃま、ちょ、こ、この格好なのかい?」


「流石に女性を小脇に抱えてともいきませんので。それと無理に言い直さなくも大丈夫ですよ」


 生首なんかもっと駄目だろうし、しょうがないだろ。

 お姫様抱っこだが、このパーカーなら時空を遮断してるからな。

 未遂だ、未遂。


 セーフだろう。


 セーフだよな?


「では」


「な、ちょ、は? 空? と、飛んでるのかい?」


「衝撃も風圧もないかと思いますが、なれるまでの辛抱です。行きます」


 自分で行くって言ったんだ。

 少しは我慢してもらわないとな。


「行く? え? へあぁぁぁぁあああ」


 とにかく数が勝負だ。

 ガンガンばらまいていきますか。

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