第171話 エチゴラの決意

「手紙?」


「そう、ヒダリさまとレイラさまから」


 二通ですか。

 あまり厚みがないのがヒダリ様で、もう一通の分厚い方がレイラ様からのお手紙でしょうか。

 先程の話からすると、商いの話でまちがいないでしょう。


「ここで中身を確認しても?」


「うん、結構量があるから、じっくり読んで」


 そのようですね。

 どうやら腰を据えて、読ませていただかないといけないようですね。


「わかりました、読ませていただきましょう」


「私は少し外を歩いてくるよ」


 姪とはいえ一国を凌駕する村の要人ですからね。

 護衛は必須。

 護衛の皆様、目立たないようにお願いしますよ。


 さて、手紙です。

 まずは……ん?

 厚い方の便箋に何か書いてありますね。

 もう一つの手紙を先に見るように、ですか。


 これは忠告にしたがった方がよさそうですね。

 なかなか癖のある文字ですね。

 書いたのはヒダリ様ですか。

 ヒダリ様、もう少し字の練習をされた方がよろしいですよ。


 少々読みにくいですが……。

 買い取り販売を一括でお願いしたいので、商会ごとガンドラル村に迎え入れたい、無理なら対応できそうな商会を紹介してほしいですか……。


 後は流通用の通路について?

 なんのことでしょうか?


 ふむ、なるほど。

 取引先に売りにいくのではなく、取引先に買いに来てもらうということですか。

 ガンドラルに商用の大きな施設を建設中と。

 買いに来るだけでなく、場所も貸し出して商売も認めると。


 施設も通路もある程度は完成しているので、つなぐ先を紹介してほしいと。


 何ですかこれは。

 これがその辺の国王やら領主やらが言い出したのなら、まさに理想論で切り捨てるところなのですが。

 ヒダリ様が言い出したというならば……。


 あとはレイラ様のお手紙ですか。

 ふむ、ヒダリ様のお話の詳細のようですね。


 ……。

 …………。

 ………………。


「あははははははははは」


「会頭、何事ですか?」


「いえ、気にしないでください。大丈夫です」


 こんな話、引き受けるしかないではないですか。

 こんなに巨大で魅力的な商売、断れるわけがないでしょう。

 ヒダリ様、あなたは世界を変えるおつもりですか?



「会頭、失礼します」


「どうしました?」


「ナセルリナ様が貴族のご子息と連れの暴漢に襲われました」


「ナセルリナは無事ですか?」


「は、はい、無事ではあります」


「?」


「その暴漢なのですが……貴族のご子息共々ナセルリナ様が撃退されました」


「ナセルリナがですが?」


「はい、しかも6人を全て一撃で」


 六人を撃退ですか。

 ナセルリナ……。

 順調にあちらの方々に近づいていっている、ということでしょうかね。


 ならば私も姪に習ってヒダリ様の元に馳せ参じるとしましょうか。

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