ガンドラル〜異世界に飲み込まれた世界で最狂(のハーレム)と最凶(の村)を作った最強(無自覚)の男のお話〜

第72話

　とりあえず心配事は片付いた。

　ただ、厄介ごとが増えた。

『ねえねえ、サシチ』

　やっぱり一人で行けばよかった。

　小さなピンクが目の前を飛び回る。

『ねえねえ。サシチってば』

「なんだよ」

『なんで男なのに、魔法がつかえるの？』

「企業秘密だよ。もう聞かないんじゃなかったのかよ」

『聞かない、なんて言ってないわよ。一旦保留してあげるって言っただけよ』

　……

「消すか」

『ちょっと、なに物騒なこと言ってるの』

「もう面倒くさいから、消そうかなと」

『あんたが言うと洒落にならないのよ』

「んー」

『ちょっと、なんで考えこむのよ』

「消すか」

『ちょっと、落ち着きなさいよ。ほら、もうるさくしないから』

　ポピー、いいやつだな。

「冗談だよ。別にうるさくもないし、そのまま騒いでていいぞ」

『な』

　お、静かになった。

「どうした？　にやにやして」

『なんでもないわよ』

　ふわふわと肩に降りてくる。

　ご機嫌になってくれたようだ。

「おい、ルド。これはどういうことだ？」

「どうとは？」

「クリス、セフィ、ナディ、レイラさんが気絶してるじゃねーか」

　よくみるとランガーとリシャルも転がっている。

「そんなことより、佐七さん」

　杏華さん？

　これがそんなことなのかな？

　ドラゴンとかが気絶してるんだよ。

　巴とルルがあっちで震えてるんだよ。

「お腹すいてませんか？」

　巴とルルが凄い勢いで首ふってるよ。

　これは確実に不味いやつだよな。

「いや、そんな減って」

『なになに？　なにか美味しいものであるの？　ちょうどお腹減ってたんだよね』

　ポピー、余計なこと言うなよ。

　あ、ポピーの言葉はキョウにはわからんか。

「ヒャタフリフさん、ちょうど食事を用意したところですよ」

　なに？

「キョウ、機械言語がわかるのか？」

「まだまだ全ての言葉はわかりませんが。ある程度ならルドさんに教えてもらいました」

「杏華さんはとても優秀です。私としても教えがいがありますよ」

　なにやってくれてんだよ。

　そしてキョウ、優秀すぎるよ。

『へえ、私の言葉が通じるのね』

「佐七さん達ほど完璧ではないですが」

　よしポピー、そのまま話の流れを変えるんだ。

「色々教えてくださいね、ヒャタフリフさん」

『そんなにかしこまらなくてもいいわよ。ポピーって呼んでよ』

「では私も杏華と呼んでください」

　お、いいねいいね。

　多分行くとこないけど、そのままどっか遊びにいくんだポピー！

『わかった、よろしくね杏華』

「よろしくねポピー」

　そうか俺が移動すればいいのか。

『サシチどこ行くの？　杏華のご飯食べないの？』

　ポピー、なにしてくれんだよ。

　折角仲良くなったんだから俺に構わず仲良くしてろよ。

「佐七さんのために腕をふるったんですよ」

『ほらほら、杏華が折角準備してくれたんだから』

　なにそのコンビネーション。

　今さっき仲良くなったばかりだろ？

「あ、ああ」

　なにか、なにかないか？

　そうだ、まだ無事なやつが。

「ルド、お前はいいのか？」

「私は先程いただきましたから」

　あれ？

　ルドは平気なのか。

　これは行けるか？

　いや、巴とルルが激しく首をふってる。

「佐七さん、こちらへ来て下さい」

　カシュタンテ。

　あいつも無事なのか。

　もしや個人差があるのか？

「カシュタンテさん、起きてください。そこで寝てると風邪ひきますよ」

　カシュタンテぇぇぇぇ。

　全くもって無事じゃない。

　顔が他人に見せちゃいけない顔になってるよ。

「そこで座って待っていてください」

『なにが出てくるのかな？　楽しみね』

　全くもって楽しみじゃないよ。

　命懸けの食事とか誰が求めてるんだよ。

「お待たせしました」

　普通になにかの肉を焼いたものとスープがでてきた。

　俺の判別スキルも特に反応がない。

　これは大丈夫なのか？

　肉を一口。

　うん、普通に旨い。

『これ美味しいよ、杏華』

　次はスープか。

　うん、これもいけ、い……

　おあああぁぁぁ。

　はっ！？

『大丈夫』

　全然大丈夫じゃないよ。

　完成に意識をもってかれたよ。

「佐七さん？」

　くそ、キョウの期待の眼差しが辛すぎる。

『ほらほら、折角美味しいんだから』

　ポピー、大丈夫なのか？

　どうやら問題無いみたいだな。

　とりあえず、スープはヤバい。

　こっちの肉だけ先にしよう。

　よし、大丈ぶぁわわをををを。

　これは無理です、申し訳ありません。

　ああ、意識が………