第70話 ポピレナシアの想い

 

「わかりました。確認にいきましょう」


 は?

 確認に行くの?

 え?

 私も?


「大丈夫ですよ。何が起ころうと貴女の身の安全だけは私が確保しますから」


 何が起ころうと、かぁ。

 ちょっと嬉しくなりそうな言い方ね。

 こんな危ない話の時でなければだけど。


「それじゃいきましょうか」


 え?

 普通に歩いていくの?


「他の人から見えないようにしているので、あまり離れないで下さいね」


 離れないわよ。

 というか離れたくないわよ。


「そうですね、肩に止まっもらうとちょうどいいかもしれませんね」


 わかったわ。

 肩に座って動かない。


「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」


 今から敵のど真ん中に行くんでしょう?

 緊張するなとか無理に決まってるじゃない。


「では行きますよ」




 あり得ない。

 誰も私達に気付かない。


「ね、大丈夫でしょう」


 この人、さらっと言ってるけど、これってとんでもないことじゃない?

 だってここまで本当に誰も気付いていないのよ。


『これ何て言う魔法なの?』


「んー、申し訳ないですが秘密です」


 な、なんなのよ。

 今まで散々ふてぶてしい顔してたくせに。

 急に困った子どもみたいな、そんな顔しないでよ。


「どうかしましたか?」


『な、なんでもない』


「進みましょうか」


 なんなのよ、コレ……




『いた』


 みんなどうやら無事みたい。

 1.2.3……

 うん、全員いるみたい。


『全員いるみたい』


「わかりました。ではみんなさんで脱出しましょうか」


 は?

 え?


『な、なんで外にいるんだ?』


『どういうこと?』


 みんなが混乱している。

 私だって理解が追い付いていないくらいだから、みんなが理解できるわけがない。


「ヒャタフリフさん、皆さんに説明してあげてください。私ではさらに混乱に拍車をかけてしまいます」


 その前に私に説明してほしいんですけど。


『みんな、落ち着いて!』


『ポピレナシア様?』


『ポピナレナシア様だ』


『ご無事だったのか』


『そうよ、ここにいるヒダリ様のおかげで何とか無事でいられたわ』


『おお』


『そしてヒダリ様のお力添えで、皆を救出することもできた』


『なんと!』


『では、ここは』


『そう、奴らの艦の外よ』


 現状は理解してもらえたみたいだけど……

 結局騒ぎになっているわね。


「仲間の方達は全員揃っていますか?」


『大丈夫。全員いるわ』


 こんなにあっさりで信じられないけどね。


「わかりました。では皆さん後方に下がっていてください」


『ホントにあいつらを潰しに行くの?』


「そうですよ」


 軽い。

 ホントに軽い。


『私も連れていきなさい』


 ここまでしてもらって、何もしないのはさすがにね。


「?」


『私にも手伝わせてって言ってるの』


「えーと」


 なんか迷惑そうな顔してるわね。


『私達が捕まった理由を教えてあげるわ。貴方属性は?』


「えーと」


 なんでそんな困った顔なのよ。

 属性聞くのってそんな困ること?


『どうしたのよ?』


「答えないと不味いですか?」


 なんなのよいったい。

 そこまで答えたくないことなの?

 もういいわ。

 属性が違っても最大限に効力がでないだけでなんとかなるし。


『もういいわ、とりあえず一緒につれていって』


「わかりました」


 なにその顔は。

 私がものすごくめんどくさいやつみたいじゃない。

 見てなさいよ、私の能力を見ればそんな顔できないんだがら。




『それで、あいつらの拠点が見渡せるところまで来たけど、どうするつもり?』


「吹き飛ばします。跡形もなく」


 は?

 この人、もうこいつでいいや。

 こいつは何を言ってるの?

 男が素手でなにをするつもりなの?


「では」


『待ちなさい!』


「何ですか?」


 この面倒そうな顔、腹立つわね。

 もう、このまま首でいいや。

 見てなさい!


「急に首にしがみついてきてどうしたんですか?」


『いいから、あんたがやろうとしたことやってみなさいよ』


 たとえ魔方具だとしてもそれなりに効果はでるはず。

 さあ、やりなさいよ。


「では」


 え?

 は?

 魔力?

 なにコレ?

 こいつ男でしょ?


『ちょ』


 コレなんの属性?

 感じたことない色なんだけど。

 しかもちょっと魔力が大きい、大きすぎ!


『ま』


 溢れる、溢れてる。

 なにコレ、魔力がこっちにまで。

 こいつなに?

 ヤバい、ヤバい、ヤバい。


 やあああいああぁぁぁぁゅ

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