第64話

「先生。色々と、ご指導ありがとうございました!」


 先生て。

 俺この学園の関係者じゃないんだけどな。


「先生のお陰で、いままでにないくらい勉強がはかどりました」


 タフィナスさん、他の講師たちが怖い顔してるからその辺にしてほしいかな。


「できることなら学園に残っていただいて、もっと多くのことを教えていただきたかったです」


 この子、真面目な優等生だけど、わりと空気読まないのね。


「ほらほら、その辺にしなさい。ヒダリ様が困っているわ」


 ホントにね。

 針のむしろですよ。


「そうですね。先生申し訳ありません」


 先生呼びは確定なのね。


「タフィナスさん、別に今生の別れでもないし、領地候補の場所を確認したら、色々と必要になると思うのからまた戻ってくるつもりだぞ」


「そう……ですか。それは嬉しいですね」


 ん?

 いまの話でなんか引っ掛かるところがあったか?


「明日明後日とはいかないが1~3ヶ月くらいで一度戻るからな」


「はい! 楽しみに待っています」


 ?

 今度は元気になったな。

 引っ掛かってるのは期間か?


「ヒダリ様。お母様のこと、よろしくお願いいたします」


「わかった」


 といっても、こちらの方が助けてもらうことが多いけどな。


「それにしても転移陣ですか……こんな大層な魔方具をいただいてもよろしいのですか?」


「いや、むしろこれ置かせてもらってよかったのか?」


 こちらとしては領地経営に必要な、資料とか情報とか人材とか仕入れるためにもここにすぐ移動できるのは助かるからな。

 他国から簡易で移動してくるルートを作られる方が大層なことだと思うがな。


「いえいえ、ヒダリ様の領地と今後も繋がりを持てるのならば、こちらとしても大変ありがたいところですので」


 あんまり嫌がっていないみたいだな。

 レイラさん達にうまく言いくるめられたのかね。


「我が主そろそろ出発しましょう」


「そうだな。それではデルバレバの皆様お世話になりました。そして今後ともよろしくお願いいたします」


 んじゃ、行きますかね。


「これが転移の魔法……先生お気をつけて」


「ヒダリ様お気をつけて」


「おうよ、んじゃちょっといってくるわ〜」




「佐七さん、もうついたんですか?」


「たぶんな。ランガー達が設置した転移陣に飛んだだけだから、確定はできないがな」


 多分どっかの森の中みたいだけど。

 ランガー達はどこにいるんだろうね?


「敵襲! 敵襲!」


 なんか出てきた。


「みんなー、ボクだよ! 巴だよ」


「トモエ殿? これは失礼しました。ということは、おお!御屋形様(ぴゅいぴゅい)」


「トモエー」


「パポール、ただいまー」


 ……。

 いや誰かつっこめよ。

 ポタ族の一部がランガーみたいな話し方になってるし。

 しかも刀下げてるし。


「御屋形様、戻りましたか」


「戻りましたか、じゃねぇよ。なんでポタ族が刀ぶら下げて、俺のこと御屋形って呼んでるんだよ」


「御屋形様が望む者に鍛練を受けさせるのは、かまわないとおっしゃったので」


 確かにそれは言ったような気がする。


「拙者、剣術と抜刀術くらいしかできないので、それを中心に教えていたのですが、なぜか適正のあるものが何人もいましてな」


 なるほど刀の件はわかった。

 剣術と抜刀術を覚えたやつにレーブあたりが作って渡したんだろう。


 だがなんで口調までランガーなんだよ。

 しかも俺のこと御屋形様呼びだし。


「それはわかった。だがなぜあいつらまで俺を御屋形と呼ぶ」


「? 御屋形様は御屋形様ではないですか」


「いや、だからな」


「どうかしましたか御屋形様(ぴゅいぴゅい)」


 くそ、なんで無駄に可愛いんだよポタ族。


「御屋形様(ぴゅいびゅい)」


 あああああ。

 もう、いいや。


「大丈夫だ、なんでもない」


「うおおおおお」


うるさいよ。


「これがポタ族かああああああ。可愛いいあぃ」


 ファンシーな生き物に興奮するゴツイ猫耳のおっさんとか。

 誰得だよこの絵面。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る