第22話 アスクリスの想い
今日はものすごく機嫌が悪いのです。
お母様とお父様がつがいの重要性について、一晩中熱弁をふるわれたのです。
そんな事言われなくても分かっているのです。
私だって一生独り身でいたいわけではありません。
ただ私にだって理想はあるのです。
そう、簡単な理想です。
私は私より強い殿方に守ってもらいたいのです。
それなのにお父様ったら。
お前より強いとか正気か?なんて。
しかも以前に見合い相手をすべて叩き伏せた時のことを、こんこんと叱られてしまいました。
たしかに選抜戦を勝ち抜いた殿方を叩き伏せました。
ですが私より強い方と言っているのですから、私に負けてしまうのはどうかと思うのですよ。
まあ、少々やりすぎた気もしますが、殿方の方から全力で来るよう言われたのですから私に非はないはずです。
たとえ手足が取れてしまっても10年もすれば再生するはずです。
お母様もお母様でそもそもなにから守ってもらうつもりですか?
と厳しい質問。
たしかに私より強い方といえば父様、母様、あとは神々でも最上位の8女神様達くらい。
それでもなにかあったときに、私を守ってくれる頼れる殿方がいいのです。
と言ったら、お母様が深い深いため息。
そして現実を見なさいの一言。
そしてその後も同じような話を延々と聞かされました。
今思い出してもうんざりします。
こういう時は大空を飛び回るのが一番。
はあ。
またストレスになりそうなものが。
前方に3匹の羽虫。
あいつらは、1匹見たら100匹いると思えと言われています。
以前にただの作り話だと思い放置したら、しばらくして大群になって向かってきました。
戦力としては大したことがなかったのですが、とにかく鬱陶しくて苦労しました。
それ以来、見かけたときは全て叩き潰すようにしているのですが。
という事で叩き潰しましょう。
この銀色の羽虫、なかなかすばしっこいですね。
しかも他の2匹には逃げられてしまいました。
また増えられるのも厄介ですがせめてこの銀色のだけでも潰してしまいましょう。
さらに加速しました。
これは少し本気で追わなくてはなりせん。
おっと、追い抜いてしまいました。
後ろを気にしているようですがあなたの前にいますよ。
さてこれ以上の追いかけっこは辞退したいので一気にいきますよ。
こういう細かい相手には散弾ですね。
10発もあれば落とせるでしょう。
なかなか頑張りましたがやっと落ちてくれたようですね。
ん、落ちた羽虫が潰れません。
どうやまだ動けたようです。
本当にしぶといですね。
仕方がありません、若干地形が変わるかもしれませんが跡形もなく消し炭にしてしまいましょう。
?
私の火球が消えてしまいました。
どうやらあそこにいる、羽虫よりもさらに小さな虫が原因のようです。
あのような小さな体で私の火球を消すような力を持っている?
同族の殿方にも不可能だったことをあの小さな虫が……
見定めなくては。
あれは人というものですね、しかも男性!
人であれば人化スキルで対応できます。
「ああ、なんてことでしょう!」
興奮のあまり大きな声をあげてしまいました。
いつの間にか目の前に先ほどの殿方が。
「うるせーよ」
私の全身を、今まで体感したことのない凄まじい衝撃がかけめぐります。
あまりの衝撃で意識を手放してしていました。
いつのまにか地面に横たわっています。
まさかたったの一撃で意識を刈り取られるとは、今だかつて出会ったことのないほどの強さ。
あの殿方こそ私が求めていた方。
はっ!あの方はどこに?
すぐそばに彼の後ろ姿が見えました。
ああ、胸の高鳴りが止まりません!
やはりこれは運命の出会い。
はっ、この姿のままでは。
急いで人化スキルを。
はしたないかと思いますが、この溢れる思いは止められません。
「旦那さまー、あなたこそ私が探し求めていた旦那さまです!」
「ふざけるな!彼こそは私、セフィル・グラセルフの運命の相手。伴侶となる方だぞ」
なんてすか、この紫頭の羽虫は。
まあ、いいでしょう。
運命の出会いを邪魔するものは何人たりとも許しはしません。
さあ、闘いましょうか!
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