第4話

陽介くんへ

今日は雪が降りました。

かじかむ手でギターを弾く時はどうしたらうまく弾けますか?

あの一番星に思いを込めたら、君までとどけてもらえるかな?



今日のライブはレコード会社人が見にきてたらしい。と打ち上げで聞かされた。


「西で売れてるバンドがあるらしくて、うちと天秤にかけてるって話。」

テッペイがライブハウスのオーナーから聞いてきた話しをしてきた、

「なんてバンド?」

ショウがスマホ片手にネット検索しようとしてる。

「いちをライバルさんの情報は確認しておかないとね。」

「ブログとかあるかも。」

私も煽り立てた。

「確かねブラックヒステリー。略してブラヒス!」

「あったあったSNS。おっ!4人みんな男子だけど!なんか外見が強烈だから、音楽はそうでもないんじゃねーの。コッテコテのロックって感じ。」

「音源あっぷされてないの?」

「あーないねー。」

スマートフォンをら慣れた手つきで滑らせるが、曲までは聞けなかった。

「負けてられないね!」

私は、このバンドの解散がかかっているから、絶対に成功させる必要があると、意気込んでいた。

もう後戻りはできないから。



陽介くんが「前に進むしかない」っ言った時のことを思い出していた。

いつも余裕で、怖いものなんてないって顔してたけど、その裏に強い覚悟があって、立ち止まっていられないっていう意思があったのをはじめて知った。

中学2年生。みんな学校という狭い世界が生きる全てで、その狭い世界で必死にもがいているのに。

彼はとっくにそんな小さな世界なんかに興味はなくて、音楽とともに別世界に生きていた。だから学校には怖いものなんてなかった。

よく個性とか耳にするけど、個性を打ち出すってこの頃の私たちには、個性ということすら気づかない変人か、強い勇気と信念があるものしか持つことが出来ない気がしていた。

出来るだけ、個性を出さずに、必死に「普通」を装ってる。周りの目を気にしてる証拠。

悪ぶって見せたり、流行を意識してる人は山ほどいたけど、個性ってそれらとはちょっと違うんだ。

本当の自分を評価される事が怖い。

いさに最先端でいられるか。いかに、学校という社会に忠実でいられるか。計られているようだった。

だから、今日が無事終わりますようにって逃げきるように生きていたように思う。


だから、「前へ進むしかない」って言った陽介くんが私たちと同じ必死にもがいて生きる人間なんだって知った。


私も前に進むよ。 あともう少しで、陽介くんに声を届けられるから。

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願いの弦(ゆみ) 夢心地 @otr714

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