第49話、高倉健と広末涼子を見て『シェンムー』の発表会をのぞき『ゲッターラブ!!』のイベント眺め湯川専務降格に憤り『ピュアガール』版元倒産に驚く

【平成10年(1998年)12月の巻】


 高倉健を見ました。そして広末涼子も。東映が、浅田次郎の原作を映画化する『鉄道員(ぽっぽや)』の製作発表会見です。広末涼子は早稲田大学に合格してから初の公の場への出席だったとのこと。そしてスター、高倉健の登場とあってとてつもない報道陣が来ていたようです。


 会見では、当時の東映社長だった高岩淡から「健さんに20年ぶりに東映東京撮影所にかえって来て戴いた。これのみ! 東映全体が燃えている!!」といった叫びにも近い言葉がありました。原作者である浅田次郎は「私は合理的な人間だが、この小説(「鉄道員」)については奇跡としか思えないことがつきまとっている」と言って、アイディアが降りて来たときの話から、全霊を込めた大作で取れなかった直木賞をこの短編集で取ったこと、あまつさえそれが大作として映画化されること等々、今に至るまで起こった数々の奇跡を披露して、小説さながらに場内を泣かせてくれました。


 われらが健さんは、挨拶に立ってしばしば言葉を詰まらせて、「20年ぶりに東映撮影所に行って感慨無量になった」(沈黙)「一生懸命」(再び沈黙)「えー、燃焼したいと思っています」と言って、寡黙というよりはとてもシャイな面をのぞかせてくれました。そして真打ち、生ヒロスエは、緊張していると言いながらも「台本を読んで大泣きした」と原作者には耳に嬉しい言葉を発し、「私も奇跡の1部になれたらいいです」とこれまた絵になり字になる言葉を発して卒のないところを見せてくれました。


 高倉健を旦那と呼ぶほど長く付き合い、心酔している小林稔待は、「僕だけじゃなく撮影所にいる全員が健さんと仕事が出来ることを願っていた。映画にこめられるそんな熱意や思いを全国の人が感じて戴ければ嬉しい」と、撮影所というシステムの中で映画という表現に長く携わってきた人たちにとって、とても意義深い映画だったことを教えてくれました。


 気になったのは、そんな高倉健との蜜月を長く夢み、その実現を心底から喜んでいるのが撮影所に残る職人世代がいて、一方で映画への関心の最大時をヒロスエに置いている若者世代がいて、ばっくりと開いたそれらの世代の共に満足し得る映画が作れるのか、といったところでしたが、完成した映画は、ピュアな広末の演技に泣けて泣けて泣けたことを覚えています。日本映画の旧くて良き思い出をたっぷりと抱いた、最後に近い映画だったのかもしれません。


 こちらは、最先端のエンターテイメントの発表会でした。あの『シェンムー』のイベントがパシフィコ横浜で開かれて、1日3回でおおよそ1万人から最大で1万5000人くらいの人が見に来たそうです。東京国際フォーラムを1万人で埋めた『Dの食卓2』よりも多いのは、鈴木裕さんという有名人による話題の「ドリームキャスト」向けゲームだったからでしょうか。


 そんなゲームはといえば、ムービーみたいな3次元CGをインタラクティブに操作出来るという点で、ゲームを作る人プレイする人の理想をそこに形にして見せた歴史的な作品だと言えました。とはいえ、表情の固さがやっぱり気になるCGキャラなんかを見ると、到達点として讃えるよりも、出発点として歴史的に残る作品だと考えた方が正しい気がしました。


 仕組みとしては、同じ場所でも到着する時間が違えば全く異なる風景を見えるようにしたり、1000以上ある部屋の全てを覗ける現実世界のような自由さを与えたり、格闘ゲームの複雑なコマンド入力を知らなくっても格闘シーンを楽しめるようにしたりと、これでもかといった工夫がてんこ盛りでした。おかげで開発も遅れたのでしょうか。無理が過ぎたのでしょうか。開発が大変でそれでいて売れ行きも厳しくなって完結を見ないまま、平成という元号が終わろうとしています。


 「自由度を重んじすぎて物語りが消滅するのは本末転倒だけど、物語にせっかく与えられた自由度が意味をもたない(あるいは物語と自由度がリンクしてない)のもつまらない。このタイトルを嚆矢として、今後どんどんと完全な意味でのフルインタラクティブなムービーが登場して来ることになるんだろうけど、『ウルティマオンライン』みたくプレイヤーに行動の全てが委ねられた完全に自由の世界ではなく、作者による物語を見せてプレイヤーを引き込む種類の作品である以上、物語を見せかつ自由度も楽しめる、そのバランスのせめぎ会いが繰り返されるんだろう」


 そうウエブ日記には書きました。現実はどうでしょうか。自由はあってもやはり与えられたクエストに挑んで存在を確認するようなゲームが多いような気がします。自由は不自由なものだと、時間的自由を手に入れた今、真剣に思います。


 場内では関係者席に「湯川元専務」の名札を見つけました。このしばらく前、セガ・エンタープライゼスでは、ドリームキャストの生産遅れの責任をとらせて、湯川執行役員専務を常務への降格していたのでした。誰かが責任をとらなければならない事態でしたが、湯川執行役員は生産には無関係な流通・ソフト担当でした。それを降格させるのは筋違いも甚だしく、おまけにドリームキャストの宣伝に使うのは人道的に許しがたい振る舞いだと感じて厳しく指摘しました。


 怒ったら秋元康の術中にハマるだけだという指摘も当時、受けました。けれどもそれが真っ当な処置とはいえない事実に、異論を唱えることは必要だとわたしは考えました。世界のどこの一流と呼ばれる企業が、単なるノリで肩書きを上げ下げするのか。商法上の取締役ではないとは言え、執行役員とはそんなに軽い肩書きなのか。信賞必罰が乱れれば組織織も乱れ全体の崩壊につながると、当時から言っていました。セガがその後、いろいろと揺れ動いたのもあるいは、そうしたノリで緩んだ部分があったからなのかもしれません。


 こちらもゲーム関連です。クリスマスの目黒で、7人のサンタクロースがミニスカートからのぞく御足もキュートにクリスマスソングを歌うイベントをのぞいていました。7人の女性がチームを組んだ「パンダ ラブ ユニット」というグループの初イベント。ハドソンというかつて存在したゲームメーカーが、NINTENDO64対応ソフトとして出した『ゲッターラブ!!』に登場する7人の美少女キャラクターをモデルにした女性タレントたちのことでした。


 7人いるメンバーは、森村雫役の吉岡愛美がいて、桜井珠と桜井恭子がいて、皆川真琴役の長田梢、天海きいろ役の井上小麦がいたようです。7人組なのに足らないのは気にとまらなかったからなのか面倒だったからなのか。調べてどんなメンバーが参加していて、今何をしているのかさっぱり分かりませんでした。せめてここにそんなユニットがあったことを改めて記録して、眠る記憶を喚起したい思います。それにしてもどんなゲームだったのでしょう、『ゲッターラブ!!』とは。


 こちらは、今も活躍している新山千春が主演した『なぞの転校生』という映画を見たようです。「新山千春の女子高生姿に「似合っとらんがねー」と心で呟(つぶや)き、継いで登場した謎の転校生こと佐藤康恵ちゃんの女子高生姿に「どえりゃー似合っとらんがねー」と心で叫んでキャスティングの不思議さに首を」捻ったそうですが、どれほどだったのかが今となっては気になります。見ているうちに馴れたそうですから、たいしたことはなかったのかもしれません。


 「今ある世界に不満を持って自分探しに明け暮れている人にはきっと、ここではない別の場所へと自分を連れていってくれる可能性を示唆する映画として映るだろうし、世界が自分を中心に回っているどころか世界は自分の手の上にあるとすら思っているジコチューな人にはもっと、自分の思いが世界を動かしているんだとゆー確信を与える映画として映るかもしれない」


 「けれどもちょっとだけ現実に不満でそれでも現実に希望を持っている大多数の人たちは、夢の叶う場所への期待を持ちつつ恐怖が支配する場所への不安に身を裂かれ、幾つもの分かれ道が続いている『人生』という道の途中で期待か、不安か、希望か、不満のどれを選ぶべきなのかを、いつも考えていることに改めて気付かされて立ちすくむのだ」。そんな真面目な感想を書いていますが、見ていた間は「千春ちゃんの制服からシャツとジーンズのラフな格好から渋谷にお似合いのミニスカ姿へとコロコロ変わるファッションの、どれが1番好みかなんてこっそり心に投票して」そうです。やはりどれほどのものか見直したくなりました。


 ジャパン・ミックスが自己破産を申請して潰れたそうです。特に何を読んでいた訳ではありませんが、美少女ゲームを取りあげる雑誌「ピュアガール」を出していたことで気になっていました。幸いにして「カラフル・ピュアガール」へと移行し編集方針は受け継がれました。内容が良く結果が出ていれば生き残れるのです。中身がなく結果も伴わない人間とは違って、って暗くなりそうなのでこの辺で。


平成10年(1998年)12月のダイジェストでした。

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