第16話 大学生の朝part3

「それではお父様、お母様、行って参ります。」




「行ってらっしゃい、スノー。」




「私達も式には行きますからね。」




「はいっ!」




父母が手を振る中、空飛ぶペガサス車で専属メイドと登校……これ程までに恵まれた生活をしていると、ふと罪悪感を覚える時がある。


だけど、今までの苦労があったからこそ、今……幸せに見える生活を送れているのかもしれない。


……クソ……神とやらがいるのなら、私なんかを幸せにするなよ。




「スノー様、楽しみですね!」




澄みきった瞳で笑いかけられると、私はスノーホワイトに戻る。




「ええ、楽しみだわ!」




「そうだ、大学のバラ園ってとても素敵なんですよ! 数十種類のバラが何万本と咲いていて……。」




実は、こうやってしゃべり続けてくれるイザベラのおかげで、私はペガサス車に慣れた。


最初は車酔いもしたけれど、常に楽しませてくれるから今ではへっちゃらだ。


それに、自分から喋らなくても済む。


イザベラが近くにいるだけで、気分は軽くなる……そう、完全に私の為。




「バラ園、今度一緒に行きましょうね。」




「はい!」




純粋すぎる笑顔が羨ましい。


私にもこんな時があったのだろうか?


自分よりも年・下・の人を見て、考え込んでしまうのはこれで何度目だろうか?




「あっ、スノー様、もうすぐ着きますよ!」




今日はやけにテンションが高いイザベラは、コーチについている窓から地上を見下ろす。


私もイザベラの横から見てみると、入学試験日とはまた違った感じで大学校舎と広大な敷地が間近にあった。


校舎はとても広く、ペガサス車が降下する度に大きくなっていく。


敷地には噴水やバラ園、生徒が自由に使える芝生広場等……改めて、設備が整いすぎていると思う。




「着きましたよ。」




ペガサス車が大学専用の馬車置き場に到着すると、ブリアックが扉を開けて手を差しのべる。


その手を取って私は降り、イザベラも続く。


天気が良くて春の香りが漂う、入学式にはとても合う日。


桜が咲いていればなお良しだが、コントラストには桜の木は存在せず、代わりに所々で菜の花が咲き誇るのだ。


私の知っている物や花、レイの時も美代の時もあったから、スノーでも見つけられて本当に良かった。


それだけで、救われた気分になるから。




「では、行きましょうか。」




「ええ、遅れる訳にはいきませんからね。」






……入学式当日の出だしは順調に見えた。




しかし、なぜだろう。




首席のスピーチを噛まずに終わらせたのに。




入学式だから、早く学校が終わって、帰り支度もすませたのに。




校庭を歩いていたはずなのに。




なぜだろう。




私はなぜ、青い空をながめているのだろうか?

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