第10話 高校生の初ご飯

「カァー、カァーッ!」




カラスが大きな鳴き声をあげる朝、私は目を覚ました。


ベッドからゆるりと起き上がり、窓を開けてみると春の香りがする。




「今日から新しい幕開け……か。」




私は学びに学び続けて、ついに『王立コントラスト高等学校』に入学した。


今日は待ちに待った入学式である。


しかし、実はスノーホワイトはまだ8歳……小学校低学年の年齢だ。


何故高校生になれたのかというと、コントラストは幼稚園~大学まで存在しており、小学校からは飛び級が可能となっているからだ。


数学と理科は美咲と美代の世界よりも遅れているため、私はとくに勉強しなくても大丈夫な教科。


国語は……転生先でも文字は美咲の世界と同じに見えるため、こちらも特に勉強は必要ない。ことわざを覚えるくらいだ。


社会は覚えなければいけず、自作単語カードを数セット使って暗記した。ファンタジーの様な歴史が楽しくて、特に苦にはならなかったけど。


魔法は毎日頑張ってきたから、高校卒業程度の魔法……畑に雨状の水を降らせる位なら出来るまでになった。


小学校入学時から学期が変わる度に、バンバン飛び級したら高校生まできていた。


やはりどの世界でも、優秀ならば待遇も良くなるだろうし、良い生活も出来る……すなわち、幸せに暮らせるという事。




「スノー様、朝食の準備が出来ました。」




イザベラの声が扉の外側から聞こえた。


ここ二年でさらに大人らしくなった10歳の少女は、今年から王立コントラスト高等学校二年生。


つまり、私の先輩って事。




「今行くわ。」




いつもはもっと早く起きるのに、スノーは何かある日に限ってグッスリ寝入ってしまうらしい。


今日もカラスが鳴き始めた7時まで、眠ってしまっていた。


急いでクローゼットの中からドレス(膝丈)を取り出して、素早く着替えて靴も履く。


長くてストレートな髪をブラシでとかし、ぱっつん前髪だけを残してその他の髪をポニーテールにする。


昨日念入りに髪を洗ったからか、いつもよりも銀髪がサラサラと輝いて見えた。


固形石鹸しか存在しないこの世界は、髪を洗うのが大変なのだ。




「ニャーン。」




「はいはい、今行くからね。」




朝食の催促をするミシュリーと、まあまあお腹がすいている私はダイニングルームへと向かった。


相変わらず廊下には肖像画とか、なんかの置物。


見るからに高そうな壺は、年々増えてきている。


それでも置場所に困らないのは、広すぎる屋敷だから。


いまだに庭園で迷いそうになるくらい。




「スノーが来たら、いっせーので!!で、入学おめでとう……だぞ!?」




「分かっていますとも!」




ダイニングルームの扉の前に着くと、中の会話は丸聞こえ状態。


ギューラウスは気づいているはずなのに、止めないのは主に意見を出せないからだろう。


ここは、気づかないフリをするのが親のため。




「おはようございます。」




「あっ。」




父の間の抜けた声がする所、入るタイミングを間違えたらしい。


ここで廊下に一度戻るという選択肢もあるが、それを選べば父母は己の惨めさを感じる事だろう。




「……今日の朝食はなんでしょうか?」




必殺、空気を読まないどころか感じていないフリ作戦。


その後出てきたのは、卵がたっぷり染み込んだフレンチトーストだった。


この世界にフレンチトーストがあると知った日は驚いたが、コントラストではシロップトーストと名称がついていた。


その名の通り、食べるときにメープルシロップをかけるのが主流。


バニラアイスを乗せても美味しいのだろう。


だが……「入学おめでとう!!」と声をかけるつもりであった父母の顔を見ると、せっかくのシロップトーストと大好きなカフェオレを楽しみきれない。




モグモグモグ……




微量の咀嚼音しか聞こえない部屋での食事というのは、なんと居心地の悪いものなのだろうか。

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