旧版 三度目の転生~今度こそ幸せに天寿を全うしたい~

第1話 新しい人生

なんだろう、体が暖かい……この感覚は、初めてじゃない気がする。

近くから、苦痛が交ざった声がするし……なんだっけ?


「ヴゥ……ァアアアアッ!!」


あっ、もしかして!!


「おぎゃあ!おぎゃあ!」


これ、泣いてるの私だ!

嘘でしょ……またなの!?


「奥様、よく頑張りましたね!」


「……私の……赤ちゃん……ああっ、やっと会えたわ!」


なんでなの!?

また、転生してしまった!

これでもう、転生3回目だって……何回赤ん坊を繰り返さなければいけないの……?


「私に顔を見せて……こんにちは、今日から宜しくね。」


今度の母親は、私を抱いて涙を流している。

とても美しい女性だ……こんな人の元に、私みたいな転生者が産まれてしまって、申し訳ない気持ちで一杯になる。


「さあ、体を洗いましょうね。」


いや、ありがたいけれど、恥ずかしいよ。

女性しかいない部屋だけど、ついさっきまでは女子大生だったんだから……。

……って思っても、泣き続けなければいけない私には、拒否権は存在していない。

気桶に張られた丁度良いお湯に、黙って浸かっているしか道はない。


さて、滑りを取られている最中だが、ここがどの様な世界なのかを把握しなければならない。

……部屋を見たところ、造りからいって前世とは全く違う世界だ。

病院ではなく、自宅の一室……という線が有力だろう。

助産師を5~6人程呼んでいるところから、かなりの財力を感じる。


「さあ、次はお体を拭きましょうね。」

「おぎゃあっ、ああぎゃぁっ。」


転生がこれで3回目となり、その仕様が産まれる度に分かってきた。

取り敢えず、死んだら1度幽霊化するかしないか、という違いがある。

私の場合は、2回幽霊化と1回死んだっきり……だ。


転生前は必ず意識がなくなり、気がつけば暖かな感覚が芽生えている。

そう、産まれる直前の感覚だ。

それから女性の苦痛を交える声が聞こえ、今までの人生の記憶を持ったまま産まれる。

その後が不思議で、産まれた瞬間は私の意識関係なく泣いてしまうが、少し時間が経つと泣く意識を持たなければ、泣き止んでしまう。

赤ん坊の頃から、怪しまれない程度に泣き真似をするのは、かなりキツい……が、こんな子供を産んだ母のために我慢するしかない。


「綺麗な肌は、奥様譲りですね……。」


「そうね……でも、私よりも何もかもが美しい子だわ。」


母は疲れを感じさせる声だが、とても嬉しそうでもある。

そんな母の横では、助産師が私の体を拭いている。

拭く際のタオルは、真っ白でふかふか。

着せられたベビー服も、肌触りと着心地がとても良い。

この生地、絶対高いよ。


バンッ


「生まれたのか!」


お、部屋の外から男性が入ってきた。

着替えた後で良かった……。


「ええ……可愛い女の子ですよ……!」


そうか。

今回の人生も、容姿に恵まれているらしい。

今まで1度たりとも、幸せに人生を過ごしきる事は出来なかった。

その代わりかは分からないが、毎度容姿だけは悪くない。


「よく頑張ったなぁ……。」


この言い方から、男性は父だと分かった。

うん……今回の親は貴族らしい。

助産師が言った、


「公爵の初めてのお子様は、とても元気に泣く女の子ですよ。」


……というセリフのお陰で推測出来たのだ。

公爵と呼ばれるだけあって、父の服は凄く立派。

装飾品からも嫌ではない気品が出ていて、さすが『公・侯・伯・子・男』の最上位である『公爵』だ。

貴族の親は初めてだけど、産まれた瞬間から愛情を受けている事から、恵まれた環境に転生出来たらしい。

今回の人生は、幸せに天寿を全うできるといいけれど。

だってそれだけが、今の私の願いだから。


「ど、どうしましょう!この子、全然泣かなくなったわ!」


ベビー服を着た私を抱いている母が、泣かなくなった事に焦り始めた。

うっかり泣くのを忘れていたよ。

ゲフンゲフン……え~っと、


「おぎゃあ!おぎゃあ!」


……これでいいはず。


「おおっ、また元気に泣き始めた!」


「ああ、安心したわ……。」


二人とも安心してくれた。

ふ~、危ない危ない。

あくまでも、一般的な赤ん坊として泣いて過ごさなくては。


「この子の名前を決めたぞ!」


父が拳を天(天井)に掲げて、いきなり宣言する。

さてと、今度の名前はなんだろうか?


「雪の降る日に生まれ、雪のように白い肌の娘だから『スノーホワイト』だ!」


「まあ、なんていい名前!」


うわっ……本気かよ。

前世だったら、どっかのお姫様の名前と被ってるわ。


だけど、父が言った『雪の降る日に生まれ』という言葉で、今が冬だと分かった。

部屋にはシャンデリア(ろうそく式)が下がっていて、窓はカーテンが閉まっている。

私は冬の夜に産まれたのだ。

暖炉が赤々と燃えている……母の腕から父の腕の中へと移る。

ああ、暖かな家庭だ。

……名前は別として、幸せに過ごせる気がする。

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