朝ごはん

今朝 

ロレンとレナの家では香ばしい小麦とベーコンの香りが充満していた。


「ふう、二次発酵までやる時間がなかったから手間がかかったが久々にやってみるもんだな。」


「そうだねえ主人。けどよくやるよー。パンを一次発酵だけで完璧に成型するなんてさもう人間じゃないんじゃない?」


「ファニ、いくらなんでもそれは酷すぎだぞ。俺は歴とした人間じゃないか。」


「主人が人間だったらユウゾウは鬼か悪魔?」


「いやいや父さんも人間だぞ。」


ファニの言っていることは違うことなのだがロレンには元の意味でしか伝わらなかったらしい。


「ロレン、ファニが言っているのはそういう意味ではないと思うよ。」


どうやらレナが起きてきたらしい。どこかその表情は赤いままで少し目が泳ぎ気味だった。


「おはよう、レナ。」


「おはよう、ロレンにファニも。」


「オッハヨー!」


朝のあいさつをするときだけは目を合わせたが一瞬でロレンの目をそらしてしまった。


「レナ、ちょっとこっち来て。」


「?」


ムギュ


(*´ε`*)チュッ


突然と抱きしめられてキスされたレナはさらに顔を赤くして脳に多大なる負荷がかかり


ボンッ


という大きな音と共に視界がブラックアウトした。


「あららら、ねえ主人朝から惚気るのは良いけどこれから仕事なんでしょう。レナのこと気絶させて大丈夫なの?」


ファニはレナをツンツンしながら肉体が完全に脱力していることを確認していた。


「まあ大丈夫だろう。」


「なんで?」


「だってほら。」


(*´ε`*)チュッ


ロレンはもう一度レナにキスをした。レナの身体はスパークし筋肉の伝達信号を取り戻していく。


「ほら、目が覚めた。」


「ロ~レ~ン~もぅい~ちどぉ~♡」


「それだけでいいのかな?」


「もう♪言わせないの♡」


「はあ、ねえマッコリ。主人達は何かするみたいだし先にご飯食べてようか。」


マッコリはフルフルと身体を振り触手を伸ばした。


「あん、もうマッコリなにするの!」


ブンと自分の主人を羽交い絞めにすると玄関を指さした。


「お客さんならしょうがないか。」


カンカンカンカン!!


ロレンがドアを開けた時、試合終了のようなゴングの音が聞こえた気がした。開けた先の前の人物を見ると顔がこれでもかというくらい腫れあがり見るも無残にゲソッとしてるようなユウゾウと般若心経が通じなさそうな羅刹にまで進化させた背後霊を携えた母アンネが来ていた。


「ロレン、久しぶりずいぶん大きくなったわね。」


「そりゃあ当然だよ母さん。」


「うん、身体だけじゃなくて心も大きくなったのは良いことだわ。でもね。」


ぞわ


悪寒が止まらない。まるで常に死神がこちらを狙っているような感覚。


「まーだ、新婚は早いんじゃないかな。レナだって17だしロレンも最近16になったばかりでしょう。だから、あんまり肉体関係を持つのもお母さんはどうかと思うのだけど。」


「ま、まあアンネそのくらいおおお゛あ゛べ。」


泡を吹きながらユウゾウは倒れていく。羅刹が笑っている気がする。というか物凄い不気味な声が聞こえてくる。


『ふひゃひゃひゃひゃ、よくもまあ愛する息子の童貞奪ってくれやがったなクソガキ、バブルの武勇伝語る時代は終わったんだよ。丁寧に30歳まで守らせるのが筋ってもんだろ。お命頂戴仕る。ふひゃひゃひゃひゃ!』


なんだろう、後ろからも不気味な声がロレンの耳をくすぐってきた気がする。


『カタカタ、革命じゃあああ!!!いつまでも個性を潰させて溜まるもんか。つうか魔法使いにしてナニさせるつもりじゃあバブル終わったんなら愛するのが早くたっていいだろうが、カタカタ。』


大ぶりの鎌を背負った死神にまで進化させた守護霊がアンネの羅刹にメンチ切っていた。羅刹の凶爪がレナを襲い死神が鎌でそれを受け止める。


ファニとマッコリはその間に倒れた返事がない屍の蘇生作業に入っていた。


「まあまあ、二人とも争う前に朝食を食べようじゃないか。仕事ももうすぐだしちゃんと食べないとというか離れても大丈夫だったの母さん。」


おおうこの場に踏み込みし英雄ロレン。嫁姑問題を乗り越えるは旦那の務め頑張れロレンこの嵐を止めにかかれ!


「「ロレンが言うなら……」」


二人は何とか矛を収めてくれた。


「さ、二人とも焼き立てのパンとベーコンにサラダがあるから一緒に食べよう。」


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