修行生活1日目(3)

ズサッ!


「ほらほら、どんどん出てくるぞ。」


ユウイチが声を上げる。


ロレンは現在、活火山近くのストーンスライム(花崗岩)とストーンゴーレム(花崗岩)を相手に逃げまわりつつ石を投げ攻撃をしていた。


「もっと体格の大きいゴーレムに近づけ!アイツらは威力は大きいがパンチは遅い。見切りやすいから突っ込んで行け。そして制空権を確立しろ。」


結構高度で無謀な修行方である。だが反してロレンはユウイチのアドバイスの通りに突っ込んで行きゴーレムの膝をよじ登り、ストーンスライムの仕掛ける体当たりを感じ取り避けることでストーンゴーレムにそのままぶつけさせる。これもまた氣の運用方の1つ。自然の中に生きる動物としての基礎本能、危機察知の強化だ。


「実践と経験を積むにはやはり現場がいい。」


ユウイチはロレンの動きがどんどん無駄が無くなってきているところを評価した。


「ほら右のゴーレムを見ろ、亀裂が走っているぞ。」


ユウイチの言葉にロレンはゴーレムを視界に入るようにする。


視界に入れつつも他に攻撃する者のタイミング、手持ちの石の数でどこに放てば良いか考えていく。


だがそれが仇となった。


ロレンの後頭部に小ぶりのストーンスライムが直撃する。ロレンはそのまま気絶した。


「ふむここまでだな。」


そういうとユウイチはゴーレムとスライム達を小さな傷に向かって小石を投げ次々に身体を破壊し、ロレンを回収して去って行った。


ゴーレム達は再生していくが追うことはなかった。


「さてファニ達はどうなっているかな。」


ファニ達は活火山の火口近くで修行をしている。


「ふぎゃあーー!」


「ほら、そこから来ますよ。」


ファニは泣き声を出しながらマグマゴーレムから逃げていた。現在チェシルはスライム形態ではなく精霊形態となっている。


チェシルも避けているがファニほど慌てておらず冷静に次の一手を考えながら立ち回っている。むしろファニにアドバイスする余裕すらある。


いくらファニが経験を積んでいるスライムだからと言ってもあくまでそれは人と一緒に行われた経験だ。だから自分と人への注意はできても自然界においての野生に順応するのはチェシルの方が年季がある。


「おーい、こっちは終わったぞ。」


「はい、ではこちらも終わらせますね。」


チェシルは髪の毛を2つに束ねて伸ばし石1つずつを取る。


「食べないでーー!?」


ファニがマグマゴーレムに襲われそうだ。


チェシルは石を持ちてとし触手を器用に使いマグマの粘性の流れを整えていく。マグマゴーレムは瞬く間に形を保てなくなり崩壊する。そして核はが残った。


「[花葬]」


チェシルは詠唱をすると核から植物が生えてきた。瞬く間に花を咲かせ果実をつける。


「これで討伐ということですね。」


「ああ、ギルドに報告しておく。もう習得していたとは驚きだが。」


チェシルはユウイチと念話でスライムの使える魔力の使い方を学んでいた。さらに花の精霊より授かった肉体から読み取った精霊の術式を再現していた。


「今日はこれで終わりだ。」


「終わったー。主人♪」


ファニは終わったとばかりに担がれているロレンの服の中に入ろうとした


ガシッ


がチェシルの手に捕まる。


「ファニ、今日の反省会をするまで主人に甘えるのは無しですよ。」


「そんな、私の方が先輩なのにぃ〜。」


「ファニよ、ロレンの主人の先輩はお前だが人生、スライム生の先輩はチェシルだ。」


ファニはかなり感情豊かに話しているが目も無ければ鼻も口もない表情筋でさえ無いのだ。第三者から見ると頭だけののっぺら坊に話しかけているおっさんがいるという実にシュールな光景である。


そんなシュールな光景と共に1日目の修行が終わった

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