3.転生者が強いというのは甘え(後編)

7月19日闇の日・・・今日は剣術教室がある日だね。


基本的に自由参加なので主に男の子達が集まって女子は少な目な感じ。

アル君が居るからなのかパリスお姉ちゃんは毎回参加している。


最近の二人はマチェットがお気に入りみたいで木剣もマチェット型の物を使っている。確かにカッコいいもんねマチェット。


私は、ブレずにミドルソードを使い続けてるよ。長年使ってるから体の一部のようになっている。


まずは、軽く素振りをしてから武技アーツが使える人達は武技の訓練をする。

二重武技ダブルアーツは、今の所アル君だけが使えて他の子たちはまだ会得できていない。


さっきから気になっているんだけど・・・クロードが建物の陰からこっちを覗きこんでいる。

仲間外れは可哀想かなーって思って手招きをしたら…数年ぶりに飼い主と再会した犬みたいにすっ飛んできた。


「対人向けの剣術じゃないけどやってみる?」

「お願いします!」

もの凄い笑顔で返事した・・・もしシッポがあったら千切れ飛んでるねこれ。


素振りをさせてみるとやっぱり変な癖がある。

我流でやってきた弊害だね。


「んー、私の剣術は使い手に最適な動きを求めるから癖は大歓迎なんだけど『変な癖』は、ダメだよ。」

「その変な癖を直すには、どうしたらいいんだ・・・ですか?」

手取り足取り教えてみたけど胸が当たって邪魔なので上手く指導ができない。


・・・あれ?アル君がリンゴ断ちしてる死神みたいなポーズになってる。新しい技かな?


クロードの体を念動でマリオネットみたいに操って正しい動きを教えてみたけど中々癖は抜けないね。


「じゃあ次は武技アーツだね。闘気は練れる?」

「はい、練れます!」


もあっと溢れる闘気・・・こっちにも変な癖がある。穴の開いた風船みたいに闘気が漏れてるし


「ストップ、私がお手本で体に闘気を流してあげるから集中して感じてね」

「はい!」


私の闘気を流し込み体全体が薄い膜で包まれる。薄くても密度が段違いであることを感じ取ってほしい。


「どう?こんな感じよ」

「す、すごいです!」

「じゃ、しばらく闘気の練習しててね。アルくーん!模擬戦やるよー!」


私とアル君は、互いに双剣を構えて対峙する。


「今日こそティファ姉ちゃんから一本取るよ!」

「ふふ、剣を2本使わせたぐらいで調子に乗ってないかいアル君?一本取るなら私に足を使わせてみなよ」


いつも通りアル君から斬りかかってきて凄まじい連撃を浴びせてくる。

私もいつも通りその場から動かず全ての斬撃を受け流す。


「は、速過ぎる!」

クロードが集中を切らして闘気を霧散させてしまっている。


「こら!クロード君ちゃんと集中しなさい!」

片手間に斬撃を受け流しながら注意する私にアル君が容赦なく武技アーツを放つ


「もらった!二重武技ダブルアーツ・二刀流〈二百刃斬り〉」

「甘いよ!武技アーツ流刃斬りゅうじんざん〉」


アル君の放った2百×2の4百連撃を左手のみで流して無効化する。右手の剣をアル君の首筋に突きつけて1戦目は終了。

実戦なら相手に全ての斬撃をお返しするこだって可能だ。

アル君もそれが分かっているから悔しそうにしている。


10分ほど斬りあって模擬戦は終了した。


「くっ、魔法も剣もアイツには敵わない」

クロードがアル君を見て悔しそうに呟く。いや、もっと若い子達にも負けてるからね?

魔法の方が幾分マシかなってレベルだから剣士には向いて無さそうだね


「仕方ないよ~アル君は3歳から訓練してるからね」

「それは、毎日ですか?」

「いや、たまーにだよ」

あれ?余計に凹んじゃった・・・




◆◇◆◇




「クラリッサ殿、あの娘で間違いないのか?」

「はい、でもやめておいた方がいいと思いますけど・・・」


ん?自警団のカッコいいお姉さんと20代前半ぐらいのイケメン剣士がこっちを見てる

あ・・・イケメン剣士がこっちに来た。


「行き成り済まない、君が師匠を倒した剣士か?」


「えっと?何の事かよく分からないですけど私は剣士じゃないですよ?剣は苦手なので」

最近使ってないけど弓使いだもん。


「6年前に君と戦っている筈だが?そこのクラリッサ殿が見たと言っている。」

「んー?6年前・・・全然覚えてないですね。」

何の事やらさっぱりだよ


「剣聖ブラント様だが本当に覚えていないのか?」


「あ!確かに剣聖様なら6年くらい前に街にきたって聞きましたよ。見てないですけど」

あの時は、変態お爺ちゃんが出没して大変だった


「クラリッサ殿、やはり人違いでは?」

「いえ、失礼ながら申し上げますと聞き方が悪いんです。・・・失礼、私は自警団のクラリッサと申しますが、6年前ここにキモい老剣士が居たのを覚えていますか?」


「あ!はい、覚えてますよ。私の技をくらって喜ぶとんでもないドMの変態でした。イカ臭くてキモかったです。」

「それが、先代の剣聖ブラント様ですよ。」


「え゛?剣聖様は変態ジジイだったんですか・・・ショックです。」

「クラリッサ殿!アレは誤解だったと分かった筈だ、師匠に失礼だぞ!」


「ですが、彼女にとっては先ほどの内容が真実ですので。」

「くっ・・・」


「あの・・・ご用件は何でしょうか?そろそろ孤児院に戻ってお昼ご飯を作らないといけないので帰りたいんですけど?」

運動したし早く帰ってご飯食べたいな~


「自己紹介が遅くなったが…俺の名はスコール、剣聖だ。俺と手合わせをしてくれ」

「私は、エルフのスティファニーです。1回だけでしたらお受け致します。」

「承知した。」


剣聖ね・・・。

断ると面倒くさいパターンみたいだったし、さっさと倒しちゃおうかな~


早速、お互いが位置につく

私は、木剣を左手に持ってだらりと下げる

剣聖スコールは、白銀に輝く真剣を両手で構える。もしかしてあれが聖剣なのかな?


スコールが一歩踏み出した所で私から・・・動いて頭をポコーンと叩いて終わらせた。


「な・・・何だと!」

「はい、終わりです。じゃ、皆帰ろうか~」


「待て!俺はまだ戦える!〈九十九龍突き〉ナインティナインドラゴンラッシュ

そう言って約束・・を破って武技を放ってきた。

これって・・・地球の30年ぐらい前のアニメで流行った技だね。

この前鑑賞したんだけど構えとかモーションが寸分たがわず一緒だし・・・年齢を考えると、この人も転生者っぽい。


それはともかく迎撃せざるを得ない、でも怪我はさせられないね・・・


二重武技ダブルアーツ〈千刃・肩叩き〉!」


タタタンタンタンタンタン・・・


「くっ・・・アッ、アッ、あふぅ~ん!・・・ウッ!」

私の技を食らったスコールが呻いたら・・・ズボンから液体が染み出してきた

微かに漂うアンモニア臭と栗の花のような臭い


「「「うわぁああ、剣聖が漏らしたあああ!!!」」」

子供達がドン引き・・・幸いなのは女子が少なかったことぐらい。


「皆、見ちゃいけません!変態は見られると喜ぶからね!ほら、さっさと帰るよ~!」

変態の弟子はやっぱり変態だったんだ!

二度と近づかないで欲しいよ!




◆◇◆◇




いやー、大変な変態だった。これからお昼ご飯だっていうのに最悪の気分だよ。

使った木剣は、ばっちいから焼却処分しよっと。


あ、慌ててたからクロードまで連れてきちゃった。…まあいいか。


「クロード君、何か食べたいものある?大概の物は作れると思うよ」

「じゃ、じゃあピザとコーラなんてできたりしないですか?」


「作れるよ~、じゃあ今日はピザにしようか♪」


トマトと牛乳と小麦粉を調理台に置いて魔力を放射すると・・・あら不思議、ピザ生地の完成!後は焼くだけだね。

サラダやスープも似たり寄ったりな作り方をする。


「す、すごい!俺にも覚えられますか?」

「んー、自分でもどうやってるのか分からないから無理かな~」


ああ、ガッカリしちゃった。


ピザならレストランに行けば普通に食べられるし。

グラタンとか唐揚げにラーメンも・・・あれ?と言うことは・・・あそこのコックさんも転生者かその子孫っぽい?


「さあ、ピザが焼けたから冷めないうちに食べてね~。この料理はアツアツが美味しいんだよ♪」

皆がハフハフしながらピザを食べていく。


炭酸飲料コーラは慣れてないと刺激が強いのでクロードだけに出してあげた。

これは地球で買った物だよ…さすがにコーラを作るのは無理


「うおおおお!・・・(ごくごく)、ぼはぁああ!!ゲホッ、ゲホッ!」

アル君がクロードのコーラを引っ手繰って飲んで咽た。


あーあ何やってんだか・・・


「アル君、これは慣れてないと美味しく感じない飲み物だし人の物は取っちゃダメだよ?」

「ご、ごほっごべんなざい、ゲホッ」

かまってあげなかったから、やきもち焼いちゃったんだね。


クロードに替えのコーラを出してあげた。


皆でワイワイと楽しく食事をして片づけをしたらクロードが質問をしてきた。


「毎日こんな感じで訓練をしているんですか?」

「偶々2日続いただけだよ。魔法教室も剣術教室も月に2回づつぐらいで後は、気が向いたら自主練するぐらいだね。」


「そう・・・ですか・・・」

「こういうのは、あまり言いたくないんだけどクロード君には剣の才能は無いよ。魔法一本に絞ったほうが良いと思う」

「はい・・・」

まあ、剣よりはマシって程度なんだけどね。



「無茶して自分より強い魔物と戦ったりすると必ず痛い目を見るからね。」

クロードは神妙に頷いてくれた。


最初の頃に比べたら考えられないぐらい成長したね。

ラノベの主人公みたいに無双はできないってことを薄々分かってくれたと思う。


「これからは、ソロは控えてパーティを組んで活動した方がいいと思うよ。無理強いはしないけど」

「そうしてみます、ありがとうお姉さん!」


そう言ってクロードは去って行った。

多分、ランクに見合った依頼でも受けに行ったんだろう。



さて、午後はどうしようかな~

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